響洋平 |
Amazon | 楽天市場 | |
響洋平 |
| 地下怪談 忌影 響洋平 竹書房怪談文庫 「隅にいる女」 そのクラブで私はDJを終えると、バーカウンターの端でビールを飲んでいた。 隣にいた女性DJのIさんと話をしていると、彼女がこんな話をし始めた。 『響さん、怪談好きでしたよね? 実はこのクラブ、女の幽霊がいるんですよ。ほら、あそこのフロアの隅。 でも、きっと悪い幽霊ではないと思うんですよね。DJが良いプレイをすると嬉しそうに体を動かして 踊っているんですよ。音楽が好きなんでしょうね。 でも、DJがいまいちだと、つまらなそうにフロアの隅に立っているんです』 『見えるの?』 私が尋ねると、彼女は小さく頷いた。 音楽のある場所や、飲食店には、少しくらい幽霊がいた方が繁盛するという話を聞いたことがある。 私はどうしても気になったことを彼女に訊ねた。 『僕がDJしてた時、その女の幽霊はどうしてた?』 Iさんはニコリと微笑んで言った。 『響さんんを見ながら、DJブースの傍らで楽しそうに踊っていましたよ』 私は、ホッとして胸を撫で下ろした。 |