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久田樹生




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久田樹生

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刀剣奇譚 久田樹生 竹書房文庫
「無銘の刀」
東郷家では、戦後、大小揃いの無銘の刀を所蔵することになった。
その刀に、東郷家の主の祖父は惚れ込んでいたのである。
いつでも目にできるよう、刀は床の間に飾られていた。
ある日、この刀が無くなった。
新興宗教に傾倒した祖母が処分したためだった。
さっそく、売った店に問い合わせをし、方々探したが、刀の行方はわからない。
そんな中、突然、刀が宅配便で送られてきた。
お礼をと思ったが、送り主の電話番号、住所に連絡は付かなかった。
次は、泥棒に刀を盗まれた。
そして、今度も刀は戻ってきた。
深夜に玄関が叩かれ、誰もいない玄関の外に置かれた箱に入っていたのだ。
その後も、祖父は刀を大事にしていた。
そんな祖父が急死した。
葬儀を終えると刀の事を思い出した。
床の間の刀を確かめると、太刀の鞘が割れ、刀身の輝きが無くなっていた。
脇差もまた、同じ状態であった。
大小が修理から戻ると、家族全員の夢に祖父が出て
『あの刀を手放してほしい。あれはもう死んでいるから』
現在、あの刀は東郷家にはない。
今も家族はこんな話をする・・・・
『祖父が刀を連れて行ったのか。それとも刀が祖父を連れて行ったのか』

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凶涯渡世 怪談 真暗草子 久田樹生 竹書房文庫
「凶涯渡世、の凶涯は、凶と境涯を融合させたものだ。それぞれの意味は彼のことを間接的に言い表して
いるかもしれない。と同時に渡世もまた、同じ役割を担わせた。
そして、この『凶涯渡世』には隠された副題がある。懺悔録、である。
どうして彼が私にここまで語ってくれたのかを考えるとそう思えて仕方がない」 (本文より)

本書は、所謂人生の裏街道を歩んだ、とある男の一代怪異録である。
悪事と恐怖の記録と言ってもいい。血と業、人の欲望と悪意が彼岸から引き寄せてしまった恐るべき怪事の
すべてをここに記す・・・・・

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无明行路 怪談 真暗草子 久田樹生 竹書房文庫
某氏は夜中に車を走らせていた。
すると、道路の真ん中に裸の子供のような姿がヘッドライトに映し出された。
それは、あっという間にガードレールを飛び越え、川へ飛び込んだ。
急ブレーキをかけ、あわてて外に飛び出し、ガードレールから身を乗り出して
川面をのぞきこむが、わずかな波紋が残るばかりだった。
子供の腕は異常に長かったという。

某氏とは別の男性が、夜中の国道を車で走っていた。
大きな河川にかかった橋を渡っている時、橋の手すりに座る裸の子供を発見した。
何をしているのかと思った瞬間、子供は下の川めがけて飛び降りてしまった。
唖然としながら橋の横を通り過ぎる・・・
子供の腕は異常に長かったという。

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「超」怖い話 ひとり 久田樹生 竹書房文庫
「護り袋」
小国さんはひとつの護り袋を持っていた。
母方の祖母からもらったものだ。祖母が亡くなってからも、ずっと持っていた。
その祖母の死の数年後、小国さんが成人する少し前にこんなことがあった。
外出していると急に護り袋が気になり、手に取ると中身が砕けているような感触があった。
同じ護り袋を母も持っていたことから、帰宅して訊いてみることにした。
家に帰ると、同居していた父方の祖母が倒れたという話だった。
そして、担ぎ込まれた病院で亡くなった。
驚きはあったものの、ほっとした。
父方の祖母は、母親と自分を嫌ったおり、何かと酷い扱いを受けてきたからだ。
そして、四十九日が過ぎた頃、母方の祖母の夢を見た。
『護り袋は役目を終えたから、神社へ納めてやってくれ・・・』
母親も同じ夢を見たというので、護り袋を神社へ納めた。
その夜、母方の祖母が再び夢枕に立ったが、傍らに土下座をする父方の祖母がいた。
『ごめんよ、ごめんよ、ごめんよ』
土下座する父方の祖母は、こう言いながら手を擦り合わせている。
母方の祖母が、父方の祖母の襟首を掴み上げると背後に広がる暗闇に向けて投げ込んだ。
この夢は母も父も見ていた。
『なんか、お袋、地獄に落ちた気がする』 翌朝、そう父親がつぶやいた。

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「超」怖い話 死人 久田樹生 竹書房文庫
「いちびり」
内藤さんはひとり車を、遠く離れた祖母が入院する病院へ向けて走らせていた。
途中、祖母が好きな和菓子店の菓子を買い求める。
天候は急な大雨、細心の注意を払って運転する。
やがて山道に入り、あるカーブを超えた時だった・・・・
右側から人の頭くらいある、黒い丸い物体が止まることなく車に向かってくる。
驚きながら急ブレーキを踏んだ。幸い、その落下物の直前で止まることができた。
道に落ちた岩は邪魔だと思い、ハザードを点け、傘を持って外へ出る。
そこに落ちていたのは碁石程度の大きさの石だった。
目の錯覚だったのだろうと小石を蹴り、車内へ戻る。
時計を見ると、かなりの時間を経過していた。
通い慣れた道だから、各地点の所要時間は把握しているのに、今日はやけに時間がかかる。
そう思ったら、助手席に置いていた菓子が落ちた。
化粧箱が紙の手提げ袋から飛び出す。菓子が転がり出てしまう。
対向車、後続車を確認して、再び車を止めた。
飛び出た菓子を集めるが、ひとつ足りない。車内をくまなく探したが見つからない。
おかしいと思いながらも、気を取り直して車を発進させる。
山道から平地へ出た途端、携帯電話が鳴り響く。
着信は母からで、祖母の急死を知らせる電話だった。

通夜の席、母親と寝ずの番をしていると
『お祖母ちゃんね、あんたにだけは死ぬとこ、絶対見せたくないわ、って言ってたよ』
なぜ、内藤さんだけなのか、理由はわからない。
内藤さんはふと、あのときのことを母親に聞かせた。
急な大雨、おかしな落下物、無くなった菓子・・・・
『死ぬとこ見せたくないから、俺の到着を遅らせたのかな?』
母親は泣き笑いしながら、何度も頷いて言った。
『祖母ちゃん、ちょい、いちびり(ふざけてはしゃぐ人)やったもんなー』

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「超」怖い話 仏滅 久田樹生 竹書房文庫
由緒正しきお寺のご住職から聞き集めた正真正銘の実話怪談、『「超」怖い話 怪仏』。
圧倒的な恐怖とリアリティでもって読者を震撼させたこの『寺怪談』の続編がついに届けられた。
仏も滅亡するような最悪の日=『仏滅』と冠した本書には、前作を凌ぐ摩訶不思議な話
身の毛もよだつ心霊譚がびっしりと収められている。
怨み、妬み、執着・・・・生者死者問わず人間が引き起こす怪事件のおぞましさはまさに阿鼻叫喚もの。
もちろん中には不思議な良い話もある。
それらすべてをひっくるめて人間の業と言えるかもしれない。
今回は「拝む」をテーマに占い師の方からも奇怪な話を伺った。
厳しい修行を積まれた僧侶の方、そして数々の悩みに立ち会ってきた占者だからこそ見えたもの・・・・
拝む人が目撃した戦慄の実話怪談をとっくりと味わっていただきたい。

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「超」怖い話 怪怨 久田樹生 竹書房文庫
「山下」
須藤さんは学生時代ラグビー部で活躍したが、卒業後は普通の会社員をしていた。
そんな彼にラグビー部の先輩から、土日に子供のラグビーを教えているので
コーチ兼補佐をしてほしいとの依頼があった。
学生時代にお世話になった先輩でもあるので二つ返事で了承した。
しかし、体調不良が原因で一年足らずで辞めることになった。
ただし、体調不良はコーチ兼補佐を辞めるとすぐに治った。
体調不良の源・・・・それはラグビーチームに所属する一人の少年とその両親だった。
その山下一家に近づくだけで体が引き寄せられる感覚と、エネルギーを吸い取られる
感覚になって、非常に不快となる。
そして、ついには山下家と接触した日には目眩が数日ほど止まらなくなった。
そればかりか、怪我をしたり、車に轢かれそうになったりと酷いことが増えて行った。
そんなある練習時、山下少年から質問を受けていた時に、ふいに彼からボールを
渡された。
目眩に耐えつつ反射的にボールを受け取った瞬間、脳裏に『死んでしまう』という
言葉が浮かんだ。この山下家と関われば、酷い死に方をする・・・・
それからすぐに、コーチ兼補佐を辞めた。

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「超」怖い話 怪仏 久田樹生 竹書房文庫
「彼の地で」
牧原さんは、仲間たちとボランティアに参加した。
東日本大震災の後だ。
彼等に海沿いの家を片付けて欲しいと依頼があった。
まずは、中の仏壇を外に出してほしいとのこと。
傷を付けないよう、ゆっくり丁寧に運ぼうと仏壇に手を掛けて、力を入れようとした時
その先に小学校くらいの女の子がいた。
『え?』 と思った一瞬の間に仏壇の陰に姿を消す・・・・
この場所には大人しかいないはず。
仏壇から手を離して、女の子の居た場所を確かめた。
隙間がなく、誰も入ることのできない場所だった。

その家の住人で亡くなった方に小学生の女の子が居たと後から聞いた。
今も女の子の遺体は見つかっていない。

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「超」怖い話 憑黄泉 久田樹生 竹書房文庫
「死因」
飼っていた馬に蹴られて死ぬ。
荷馬車に轢かれて死ぬ。
農耕馬を洗いに川へ入って、急に倒れてそのまま死ぬ。
水野さんが教えてくれた『水野家親類縁者の男性たちの死因』の一部である。
大正から昭和にかけての出来事だ。
最近も一人、競馬で負けが込んでの借金苦による自死があった。
本当かどうかわからないが、水野家の男は馬に祟られている、らしい。
確かなのは 『馬絡みで命を落とす』男が多いということだ。
馬を運んでいる車に轢かれる・・・・干支の午年の人に害を加えられえる・・・・
想像すればするほど、世の中には馬に関するものが多く、どれも怪しく感じてしまう。
今、一番気にしているのは干支であるらしい。
すでに前回の午年が越えている。

次の午年が、とても怖い・・・・

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「超」怖い話 怪儡 久田樹生 竹書房文庫
「約束」
中学校からの親友 笹野が死んだ。
彼は長い間病気を患っていた。
『先に死んだ方が化けて出る』
『後から死ぬ方は、先に死んだ奴に会いに行く』
これが二人の約束だった。
彼が亡くなって二週間目。
目の前に見たこともない光の球が浮いている。
笹野の名を呼ぶ、あの世はあるのか?と問いかけると頷くように上下に揺れた。
球は、その後細かい粒になり、四方八方へ飛び散ると消えた。
その球を見て以来、何かと死にかけている。
道路を渡る時にこちらに向かってくる車を見落とす、駅構内で線路の方向へ勝手に
足が進んでいたり・・・・同僚に止められなかったら線路に落ちていただろう。
また、いろいろな人からこんなことを言われた。
死にたい、死にたいとため息混じりに独り言を漏らす・・・・
自分には全く覚えがない。
『まさか、笹野が・・・・』 と考える度にその想像を打ち消す。
親友である、だから、まだ、信じたい・・・・。

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「超」怖い話 怪團 久田樹生 竹書房文庫
「煙の向こうから」
冬の早朝、社用車で日帰り出張に出かけたときのこと。
高速道路に乗り、走行車線を走る。
開けた景色の中に、赤と白の縞模様に塗られた煙突が見えた。
煙突からは白い煙が垂直に立ち上がっている。
風もないなら、ハンドルを取られる心配はないだとうとアクセルを踏みかけた。
視界の端、煙突の煙がぐにゃりと歪んだ。
目だけをそちらに向ける。
上下に伸びる途中から、ぱっと断ち切れていることがはっきりと解る。
まるで、そこだけを掻き消したようだ。
ややあって、運転席側の窓が音を立てた。
それは一秒も経たない内に轟音に変わった。
車体を横から押された状態になり、ハンドルを取られる。
壁のある路肩へ吸い寄せられるように近づく。
減速とハンドリングで何とか制御し、走行車線に戻りかけると
後方から突き刺してくるようなクラクションの音が鳴り響き、右車線から
スポーツセダンが追い越して行った。
手の震えが止まらず、全身に汗をかいていたので、近くのパーキングエリアに入り
駐車スペースに車を停めて、外に出た。
車を見ると、運転席側のドアミラーは外側に倒れている。
加えてドアに放射状の汚れが付いていた。白い車体にうっすらと黒い色が広がっている。
殆ど全体を覆うほどの広範囲であり、よく見るとガラスにまで広がっていた。
その正体も衝撃の原因も不明だった。

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「超」怖い話 怪望 久田樹生 竹書房文庫
「その時」
サツキさんの家近くに驚くほど美味しい和菓子を売っている店がある。
そこの豆大福に家族全員で舌堤を打っているときだった。
お祖母さんがぽつりともらした。
『---ああ、ここの和菓子ね。そのうち不味くなるよ』
理由を訊くと
『だって、店主がそのうち死ぬもの』
皆が怪訝な顔をしていると更に続けた。
『今は良い味だが、ある時にもの凄く菓子の味が落ちる。それから僅かな間を置いて
店の主人が死んでしまうからね』
昔から不思議なことばかりいう人だが、今回は特に理解不能。

しかし、確かにその通りになった。
ある日、その店から買ってきた練り切りが生臭く、吐き気を催すような味になった。
直後、店主が亡くなった。
ひとつ言えば、練り切りが不味いと感じたのは、お祖母さんとサツキさんだけだった。

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「超」怖い話 怪牢 久田樹生 竹書房文庫
「可哀相」
彼女の娘は生まれた時から持病を持っていた。
長くは生きられないと、宣告すらされていた。
それでも諦めず、病院のベッドで寝たきりの娘に愛情を注いだ。
その横で義母は泣いた。
『可哀相 可哀相。代われるものなら、お祖母ちゃんが代わってあげる』
数ヶ月、義母は亡くなった。
朝起きてこないとと思ったら、心臓が止まっていた。
娘の症状はほんの少し改善された。
ただ、時々真夜中に娘が泣く。
『いたい くるしい いたい くるしい』
そしてこちらを睨みつけ、叫ぶ。
『かわるなんて、いわなければよかった。おまえが しねば よかったんだ』
そして、いつもこの言葉で終わる。
『かわいそう かわいそう わたしは かわいそうだ』
娘が七歳という短い生涯を閉じた後、彼女は夫と別れた。
旧姓に戻り、もう結婚することも、子供を産むこともしないと決めている。

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「超」怖い話 怪賊 久田樹生 竹書房文庫
「東北より」
タクシー運転手に従事している運転手が言う。
『夜は海岸付近でお客様を乗せません』
乗せたらいつの間にか消えている、という話ではない。
客を乗せ、目的の場所まで行けば帰りはひとりになる。
そういう時に限って、海岸線の近くを通ることになってしまうことが多い。
そんなとき、空のはずの後部座席に沢山の人影が見えるのだ。
『だから、夜、海岸近くではお客様を乗せないんです』
何故、影たちがタクシーに乗るのかは分からない。

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「超」怖い話 怪罰 久田樹生 竹書房文庫
「2・9」
『ワーン・・・・トゥー・・・・』
カウントが聞こえる・・・全身を押さえつけられた感覚・・・・
思い切り跳ね起き、ファティングポーズを取る・・・
『あ・・・』  ああ~、夢か・・・
リアルな夢だった・・・肩口には痛みまであった。
元プロレス研究会所属ならではの夢・・・そう苦笑していると携帯がなった。
康成君の親友で、彼の永遠のライバルの死を知らせる電話だった。

葬儀の時、ご家族がこんな話をしていた。
『あの子、息を引き取る前にこんなことを言ったんです。』
・・・・康成ィー カウント 2・9だったなぁ~・・・・
その死に顔は笑っていたという。

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「超」怖い話 怪罪 久田樹生 竹書房文庫
「幼き頃」
小学3年生の時。
その日、小さい頃から虚弱体質だった彼女は、朝から喉が痛かった。
『喉が腫れ始めているのね。病院へ行きましょう』
母が行きつけの病院へ連れて行ってくれた。
なかなか、名前を呼ばれないまま待っていると、熱が上がったのか
周りの景色がぐらんぐらんと揺れだした。
そして、子供が走り回って騒ぐ声・・・・
さっきまで待ち合い室内を見ていたが、子供なんていなかったはずと不思議に思う。
名前が呼ばれ、診察室に入ろうと歩きだすと、後ろから子供のはしゃぐ声が響いた。
『病院なのに、子供が煩いわね』
母が非難の声を上げたが、声は白い壁の中から聞こえていた。

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「超」怖い話 怪福 久田樹生 竹書房文庫
「幸運のシャープペンシル」
このシャープペンシルで試験を受けると必ず合格する・・・・・
学生時代によくあるジンクス。
何の変哲も無い200円ほどで市販されているシャープペンシルが体験者の女性の
ラッキーアイテムだった。
しかし、社会人になってからはラッキーアイテムの存在自体を忘れていた。
ある日、必要に迫られ自分の部屋の片づけをすることになった。
部屋が片付くと押入れの中のカンの箱が目に入った。
彼女の宝物を仕舞った箱だと思い出し、1番のお気に入りだったシャープペンシルを
手に持った。
すると、勝手に手が動き・・・・
『みつもり AR101 すうじ だめ』
『AR101』は彼女が勤務する会社で扱う製品の製品番号だった。
まさかと思ったが、月曜日の出勤時間を30分早くして見直した。
見積書の個数が違った・・・・このまま出していたら大損をするところだった。
それからは度々、シャープペンシルに助けられた。
『じゅちゅうしょ みなおし』 『でんしゃ いっぽん まえ ずらせ』
でも、結婚が決まった日、シャープペンシルが姿を消した・・・・

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「超」怖い話 怪災 久田樹生 竹書房文庫
「第九スタジオ」
ベッドで眠るシーンを撮影しようとしている。
演じるのは少女、彼女が撮影直前に起き上がった。
天井の通路(キャットウォーク)に人が歩いていたとのこと。
撮影を中断し、全員が上を向くが誰も居ない・・・・

アクションシーンを引き受ける体育会系の人たちがスタジオ脇で深夜の酒盛り。
ふと見ると、仮眠室入り口まえに見知らぬ女性が立っている。
『誰だ、お前は』 『いっしょに飲むか?』と声を掛けたが、仮眠室の方向へ行ってしまった。
誰かが見に行ってみると、そこには誰も居なかったとのこと。
仮眠室は入り口も出口も1ヵ所しかないので、居ないはずはないのだが・・・
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「超」怖い話 怪逅 久田樹生 竹書房文庫
著者が偶然に知り合った、お爺さんの旅先での体験。
ある路線バスに乗っている時のこと。
隣の席に、母と息子と思われる親子連れが座っていた。
「おばあちゃん、喜んでくれるかな~」
これから祖母の家に行くのかな、と思いながら見ていると
子供が降車ブザーを押した。
二人は次の停留所で降りていった・・・・
すると、バスの運転手が「お降りの方は誰もいませんか?」とアナウンスしている。
『今、親子が降りて行ったろうに』と思い隣の席を見てみると、降りて行ったはずの
親子が座っている・・・・
そして、お爺さんがバスを降りるまで、それは繰り返された・・・・

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「超」怖い話 怪暦 久田樹生 竹書房文庫
「ぶぅらぶら」
キャンプ場を目指して車を走らせていたが、なかなか目的地に
たどり着けない。
それどころか、だんだんと道幅が狭くなって来た。
イライラしながら、前方のカーブミラーを見ると托鉢僧が
ミラーの下に立っている。
道幅が狭いので十分にスピードを落としてからすれ違う。
ふと見ると、托鉢僧の腰の辺りに大きいヘチマがぶら下がって見えた。
再度バックミラーで確認すると、ヘチマと見えたのは尻尾で
今、まさに尻尾が『ぐい~ん』と上を向いたところだった。

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「超」怖い話ベストセレクション 怪恨 久田樹生 竹書房文庫
「宿題」
弘紀君は夏休みの宿題を全くやっていなかった。
夏休み最後の日、慌てて始めたはいいが、終わるはずがない。
両親は、手伝わない と冷たく言い放つ。
夜中の十二時まで頑張ったものの、いつの間にか眠ってしまっていた。
『朝よー、起きなさい』
母親の声で目覚める・・・・目の前には宿題達・・・・
『終わらなかった・・・・あれれぇえ?』
全ての欄が埋まっている・・・夏休みの友も漢字の書き取りも全てだ。
確認すると、全部自分の字で書いてある。
『寝ている間に、自分で全部やっちゃったのかな?』
何はともあれ宿題は提出できた。
翌日、先生に呼ばれた。
『これ見て』
書き取りノートの一部に、二ページに渡り自分の字でないカタカナが書かれていた。
先生に、声に出して読むように言われる・・・
『センセイ ナンカ チョロイ チョロイ・・・』
『やるに事欠いて、これ? 罰としてやり直しと追加書き取りね』

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「超」怖い話ベストセレクション 怪業 久田樹生 竹書房文庫
「帰ります」
田淵さんはひとり暮らし。
それでも自宅に【帰るコール】をしてから帰る。
そうしてから帰宅しないと≪また出るから≫だ。
彼はまだまだ引っ越せない。
だから、今もため息混じりに【帰るコール】を続けている。


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