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伊計翼




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伊計翼

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現代怪談 地獄めぐり 無間 伊計翼 深津さくら いたこ28号 響洋平 ありがとう・ぁみ 竹書房文庫
「骨壺2」 伊計翼
タクシーに乗った時のこと。
『運転手さん、どんなお客が迷惑ですか?』
『う~ん、酔っ払いは迷惑だけど、こっちも慣れてるからねえ。一番迷惑なのは、壺を置いて
いく人ですね』
遠い親戚や身寄りのない者の骨を預かることになった人が、面倒くさくなったのか、捨てるつまりか
わざと骨壺を忘れていくことがあるという。
実に罰当たりなことだと思うが、そのタクシーの運転手は続けた。
『信号待ちのとき、振り返って調べたら運転席の真後ろに骨壺があるんだもの』
『酷いことをする人がいますね。びっくりしたでしょ?』
『いや、私は ”やっぱりか” と思いましたよ』
実は、真後ろの後部座席から、ずっと男のすすり泣く声が聞こえていたという。
『見つけた途端に、 これか! って思いましたよ。世の中恐ろしいもので、私どもの営業所の
忘れ物置き場にはけっこう骨壺があるんですよ』

その忘れ物置き場でも、ときおり泣き声が聞こえることがあり、事務員が怖がっているそうだ。

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怪談社書記録 闇語り 伊計翼 竹書房怪談文庫
「無視できない」
Hさんがバイトをしていたカラオケボックスは京都にあった。
市外にあったせいか、週末でも滅多に満室になることはない店だった。
レジの下には、お客に見えないように貼られた、注意書きのような紙があった。

『いらっしゃいませ』 『ありがとうございました』 は愛想よくすること。
お釣りはしっかり数えるところをお見せして、間違いないようにすること。
部屋は明るくしてから、きっちりと掃除すること。
四つん這いの赤ん坊を見ても (特にお客さまがいるとき) 無視すること。

新しいバイトがすぐに辞めてしまう店だったという。

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怪談師の証 呪印 伊計翼 竹書房文庫
「自殺目撃談」
ある昼に、会社で弁当を食べながら隣のビルにふと目をやった。
屋上で男性と女性が向かい合って話をしている。
柵を越えて立っており(あんなところで危ないな。落ちたらどうするんだ)などと思っていたら
本当に落ちた。
正確には落ちたというより、ふたりで息を合わせ手をつないで飛び降りたという感じだ。
他にも見ていた者がいたらしく 『自殺だ!』 とオフィスは大騒ぎになった。

ふたりが飛び降りる瞬間を、数人の社員が目撃していた。
しかし、死体は男性のものだけだった。
いちばん目の良い社員が言う。
『あの白い着物の女はどこに行ったんんだ?』

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恐國百物語 伊計翼 竹書房文庫
「第十九話」
昭和六十年の夏、Sさんは高速で渋滞に巻き込まれていた。
『なんでこんなに混んでるんだよ』
助手席では、Sさんの妻がため息をつきながら彼の文句を聞いていた。
しばらくすると大破した車が二台見えてきた。
事故による、わき見渋滞だったのだ。
『なんだよ、事故かよ。すげえ迷惑、ホント腹立つわ』
そう言った瞬間に、流れていたラジオの曲がぶつッと消えた。
『あなたが、代わりに、死ねば、良かったのに、死ねば、死ねば』
おんなの声が大音量で響いてきた。
声は事故車の横を通り過ぎるまで、車内に響き渡った。

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あやかし百物語 伊計翼 竹書房文庫
「第三十九話」
平成二年の四月、小学生になったばかりの甥をK子さんは寝かしつけていた。
『学校楽しい?』 『うん、楽しいよ』
『新しい友達できた?』 『うん、できた』
『どんな子』 『あんな子』
甥が指差す窓には、逆さになって貼りつく子どもが笑っている。

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魔刻百物語 伊計翼 竹書房文庫
「第十九話」
平成二十四年の夏、ある少女が亡くなった。
彼女は常日頃から 『私には霊感がある』 とうそぶいていた。
まわりの友人の話によると 『絶対にウソ』 だということだ。
どうしてそう断言できるのかと聞くと
『どうみたって目立ちたいだけですもん』
友人たちは全員、そう口をそろえて答えた。
皆さんは幽霊を信じていないのですか?と尋ねると、意外にも全員が信じているとのこと。
『だって、その子が死んだのって、多分幽霊のせいだと思います』
その少女は心霊スポットへ肝試しに行って、皆の前で自己流の『お祓い』を披露した。
その夜に彼女は亡くなったのだ。
彼女の死因は、就寝中に布団の中で、首を骨折したことによる窒息死だそうである。

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FKB瞬殺怪談 刃 伊計翼 平山夢明 黒木あるじ 我妻俊樹 小田イ輔 つくね乱蔵
黒史郎 橘百花 吉澤有貴 幽戸玄太 神薫 冨士玉女 牧野修 竹書房文庫
13名の短編怪談集 157話。

過去に出版された話が47話、新たに書き下ろされた作品が110話 掲載

「侵入」 伊計翼 書き下ろし作品
ある雨の日にU美が読書をしていると窓が叩かれた。
部屋はマンションの一階だったが、そんな訪ね方をする友人はいない。
変な人かもしれないと思っていると、カチャリッと窓の施錠が解かれる音がした。
『え・・・・・』
驚くU美さんをよそに、彼女の目の前で窓はひとりでに開いた。
外には誰もいないが、すぐに窓を閉める。
怖くなって部屋を出ようと振り返ると、真後ろでびしょ濡れの女が笑っていた。

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FKB瞬殺怪談 伊計翼 平山夢明 黒木あるじ 我妻俊樹 松村進吉 神薫 黒史郎 竹書房文庫
7名の短編怪談集 156話。

過去に出版された話がほとんどだが、新たに書き下ろされた作品を39話 掲載

「いってらっしゃい」 伊計翼 書き下ろし作品
休日、T郎さんが玄関を出るとき、妻の声が聞こえて来た。
『いってらっしゃい』 
ではなく
『はかまいり』
と言われた。
彼は慌てて予定をキャンセルすると、霊園に向かった。

その日が妻の命日だったことを思い出したのだ。

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怪談社 黄之章 伊計翼 竹書房文庫
「趣味」
ある女性がお見合いパーティに参加したときのこと。
『ご趣味はなんですか?』の問いに、ある男性がこう答えた。
『珍しいと言われるのですが、私の趣味は霊を集めることです』
『幽霊が視えるのでしょうか?』
『はい、視えます。幽霊はいろいろなことを教えてくれます。例えば寿命とか』
『あなたの寿命は、あとどれくらいなんですか?』
『私の寿命はまだまだですけど、あそこに居る男性は間もなく寿命が尽きます』

(今日はいい人いなかったな、次に期待しようっと)
女性は会場をあとにすると、横のカフェに入って文庫本を読みだした。
すると救急車がやってきて、先ほどお見合いパティーで話した男性を運んで行った。
『あら、あの人って・・・』
『だから言ったでしょ。あの人は、もう寿命だったのです』
ふいに後ろから声を掛けてきたのは『霊を集める』と言った男性だ。
『あなたも長くありませんから、こんな所で本を読んでる場合じゃないですよ』

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怪談社 終の章 伊計翼 竹書房文庫
「おっぱい最高」
男ばかりでキャビンに泊まりにいった。
たくさんある部屋の一室でひとりで眠っていると、いい香りが漂ってきた。
洗いたての服についた柔軟剤のような香りだ。
目をあけると暗闇のなか、おんなの服が浮いている。
ちょうど自分と重なりあうように、目の前にあるのは胸のふくらみだ。
妙な衝動に駆られて、思わず抱きしめてしまう。
胸の感触がちゃんと伝わってきた。
『おっぱい最高!』
おんなの顔が気になって、そのままの体勢で見上げる・・・・

首から上がなかった。

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怪談社 壬の章 伊計翼 竹書房文庫
「真夜中の人力車」
R代さんが京都に住んでいたころの話である。
ある夜のこと、友人宅に向かって歩いていると人力車を引いた車夫とすれ違った。
時計を見ると午後十時を過ぎている・・・
『こんな時間に仕事をしているわけないよね・・・』
人力車を移動させているか、走りの練習をしているかだろうと思った。

友人宅に到着後
『そういえば、さっき人力車を見たよ』
その瞬間、友人と家族が真っ青な顔をした。
『ここらへん、観光地と違うでしょ。アレは人間やないよ』
友人の母親が真剣な顔で言った。

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怪談社 辛の章 伊計翼 竹書房文庫
「水風船」

休日の昼間、Tさんは大学時代の先輩と再会。
その先輩が、手伝って欲しいことがあるのでウチに来てくれと言う。
その足で先輩のマンションへと向かうと、十四階建ての最上階の2DK。
で、自分は何を手伝えばいいのか?と尋ねると、もうすぐ来るからとのこと。
『来た!』とのことで、先輩は窓を指さす。
鳥が一羽、窓に向かってまっすぐに飛んでくる。
(鳩・・・? いやあれは白いボールのような塊)
『なんか、飛んで来ますよ』
『お前、見えるんか?ホンマに見えるんか?』
『見えてまよ! あ!あぶない。ぶつかる!』
塊は窓の外側に、べっちゃッと貼り付いて、真っ白な顔になった。
『うわぁ~、なんですか、この顔は!』
『お前、ホンマに見えるねんな。やっぱりこれ、そうなんや。供養へ行った方がいいよな』
Tさんは、耐えきれずにその場から逃げ出した。
窓に貼り付いたのは、おんなの顔だった。

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怪談社 戊の章 伊計翼 竹書房文庫
「追心」

Iさんが彼女とラブホテルに行った時の話。
どのホテルが良いか、彼女に選んでもらって入った。
入ったホテルの受付では、二人でパネルを見ながら入る部屋を決めた。
エレベーターに乗り、二人で選んだ部屋の階で降りて、ランプが点灯する
方向へ向かう。
彼女がドアを開けた。
『あ、ごめんなさい』 と言ってドアを閉める。
『どうしたの?』と尋ねると
『部屋を間違えちゃったみたい』と答えた。
しかし、部屋のランプはちかちかと点灯している。
ここで間違いないと、再度ドアを彼女が開けるが人がいると言う。
Iさんが中を見ると、ベッドの上にIさんの浮気相手が座っていてドアの方向を
向いている・・・
にたり・・・と笑って、うすくなって消えた・・・

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怪談社 己の章 伊計翼 竹書房文庫
「刀がおかれる」

刀がおかれた患者は死ぬという光景を見てきた看護師のM保さんの病院のもとへ
友人I美さんの娘であるYちゃんが運び込まれてきた。
公園から飛び出したところを車に跳ねられ、意識はない。
五時間にも及ぶ手術の末、集中治療室へ移された。
I美さんのもとへ行くと、医師から説明を受けているところだった。
『今夜持てば助かるって。でもそれって今夜で駄目かもしれないってことでしょう?』
集中治療室が見える待合室でI美さんが泣き続けている。
今夜持てば助かる・・・・しかしM保さんにはもう1つ不安なことがあった。
刀である。ほとんどの刀は、この集中治療室でみている。
なんとか、あれを止める方法はないのか。
一晩中見張っていれば刀をおかれることはないのか、M保さんにはそうは思えない。
(どうせ刀が置かれるなら、もういっそのこと・・・・)
『I美・・・聞いて』 伏せていた顔をあげたI美さんにナイフを突き付けた。

ひと月後、Yちゃんは無事に退院した。
あの夜、M保さんはナイフをYちゃんの胸元に置くと、I美さんに
『おまじないだから、このままにしておいて。そして、眠らずに入口を見張って』
I美さんの話によると、深夜三時ころの疲れがピークに達したころ、人の形をした影が
ユラユラ揺れているのが見えた。
影はしばらく入口に立って様子をうかがうような動きをしていたが消えた。
『見張っていたのが良かったのか、胸にナイフを置いたのが良かったのかは
 わかりませんが・・・・』

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怪談社 書記録 伊計翼 竹書房文庫
「墓ガードナー」

高校生の時のNさんの体験。
夏休みに親戚から、お寺のアルバイトをしないかと言われた。
部活に入っていなかったNさんはやってみることにした。
アルバイトの仕事は、お墓の掃除だった。
初日こそ、苦労したものの、その後は慣れ、墓参の方との挨拶、お墓の掃除の前後に
手を合わすことも自然と行えるようになった。
不思議なことがいくつか、あった。
草を取って墓の掃除を終えると誰もいないのに「ありがとう」と聞こえてきたり
幼い女の子に話掛けらた直後に姿を消されたりしたが、怖いという気持はなかった。
台風が接近していた、ある夜、自分の布団で寝ていると、枕元に男と女が立った。
『墓を守ってるのは、お前か?』 『・・・』 『墓を守っているのは、お前かと聞いておる』
『ぼ・ぼく、アルバイトなんです・・・』 恐怖に怯えるNさんがやっと答えた。
『届けてやってくれぬか」 男はそれを繰り返す・・・・
目覚めると、母親に呼ばれ、玄関に卒塔婆が6本あるので纏めておいたと言う。
男が届けろと言ったのは卒塔婆のことだったのかと納得して、お寺へと運んだ。
夜の出来事を住職に話すと、とても喜んで
『出家する気になったら、いつでもいらっしゃい。あなたならきっと、良い僧になれますよ』

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怪談社 丁の章 伊計翼 竹書房文庫

本の中で説明のある紙舞氏が待ち受け画像にしている心霊写真
右はわかると思いますが、左は天井付近に顔が写っています。

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怪談社 乙の章 伊計翼 竹書房文庫
「うわき」

『あんた、浮気したでしょ!』
Dさんは突然、家にやってきた彼女に怒鳴られた。
『浮気なんてしてへんわ』
彼女曰く、昨日、生駒で友達のUちゃんがDさんと知らない女性が一緒にいるところを
目撃しているとのこと。
『Uちゃんは、ちゃんと見たと言ってたで・・・・あんたが霊園の中から・・・・』
そこまで言って、事の異常さに彼女自身が気づいた。

『・・・・霊園の中から知らない髪の長い女をおんぶして出て来たって・・・・』

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怪談社 丙の章 伊計翼 竹書房文庫
「ゆうれい」

田舎の古い風習の残る、そんな村で育ったSさんの子供の頃の体験。
ある夜、布団に入ると、生まれて初めての金縛り。
金縛りに遭うと霊を見ると聞いていたので、怖くて怖くて堪らなかった。
突然、襖がガタガタと揺れ出した。
しかも、揺れているのは1つの襖ではなく、いくつもの襖が振動している。
これから何が起こるのか、怖いと思っていると・・・・
閉まったままの襖を通り抜けて、女が現れた。
白装束に腕を前にたらし、頭には白い三角巾まで付けた、まさに幽霊。
女はSさんの上を通り抜けると、別の襖へと消えていった。
『あ~良かった』 と思ったのもつかの間。
次から次へと同じ格好の女の幽霊が現れては、Sさんの上空を通過する。
6~7の女の幽霊が通過した後、金縛りが解けた。
すると、父親が大丈夫かと部屋に入ってきた。
何でも、Sさんの部屋へ幽霊が向かう姿を目撃して飛び込んで来たんだとか。
次の日、隣の家の住人が亡くなったと父親が聞いてきた。
それからも何回か、同じものを見たとのこと。

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怪談社 伊計翼 竹書房文庫
「ザンコクゲキ」

あるクリスチャンの方の体験。
娘さんが幼稚園に通っていた時のこと。
午後、娘を迎えに幼稚園へ行った。
『ママ~』の声とともに娘が園庭を飛び出してきた。
道路工事のためのトラックの横を通り過ぎようとした時、荷台の何本もの柱が
娘めがけて崩れてきた。
見ている前で、その1本が娘の顔に直撃し、娘がすっ飛んだ。
娘に意識はなく、大急ぎで救急車が呼ばれ、病院へと運ばれた。

午後9時を過ぎた頃、帰宅。
『あ~、お腹すいた~』と何事もなかったように言う娘。
病院へ運ばれて精密検査等を受けたが、どこにも異常は見つからなかった。
あれだけの事故にもかかわらず、娘は気を失っていただけだった。
いつものように祈りをささげようと祭壇の前に座った。
見ると、陶器でできたマリア像の顔の部分が粉々に砕けていた。
今も感謝の祈りは続けている。


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