葛西俊和 |
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| 鬼哭怪談 葛西俊和 竹書房文庫 「怪談カップ麺」 部屋で夜更かしをしていた島野宇さんは腹が減っていたのでカップ麺を食べることにした。 カップ麺に湯を入れ、上蓋を押さえるのに適当なものはないかと周りを見ると、ベッド脇に 読みかけの怪談本があった。 島野宇さんは怪談本をカップ麺の上に置くと三分待った。 すると、カップ麺から『シューシュー』と米を炊くような音が聞こえてきた。 気になってカップ麺を見ると、上に乗せた怪談本から赤い湯気のようなものが上がっている。 怪談本をどかして、カップ麺の上蓋を取ると湯気も立っていないし麺もほぐれていない。 指を入れてスープに触れると冷たい・・・・確かに熱湯を入れたはずなのに・・・・。 怪談本に『こめんなさい』と呟いて本棚に仕舞った。 翌朝、本棚から怪談本を取り出すと、雨にでも濡れたかのように本全体がしわしわになっていた。 若干膨らんでいる本を開くと白かった紙が黄ばんでおり、幾つかの話のページが綺麗に折られて いた。 島野宇さんは今でも怪談本を買って読むが、ぞんざいな扱いはしないようになったそうだ。 |
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| 降霊怪談 葛西俊和 竹書房文庫 「受け取り拒否」 『霊感なんてないと思っていたんだけど、不思議なことって本当にあるもんだね』 戸塚さんは東北地方の小さな運送会社で宅配ドライバーをしている。 ただ、担当している地区が寺町と呼ばれる場所で仏閣の密集地だということ。 仏像や祭壇に置く皿、お供え物を配達しているが、中には恐ろしい物も混ざっていると言うのだ。 配達の最中、『ガリ、ガリ、ガリ』と梱包の段ボールに爪を立てるような音がすると、毎回決まって 締め付けるような頭痛がしてくる。 しかし、お寺に到着して荷物を渡すと頭痛も治まってくる。 そんな中、一度だけ荷物の受け取りを拒否されたことがあった。 梱包されていない桐箱で、直に貼った伝票の内容物の欄には『雑貨』と書かれていた。 『寺の住職が受け取りを断る荷物だからね、嫌な予感がしたよ』 気味の悪い桐箱は貨物室の奥へ隠すように置いた。 それから3件の配達を終えて配送車へ戻ってみると、運転席に桐箱が置かれている。 もちろん、戸塚さんに移動した憶えはない。 再び貨物室へ戻そうと、桐箱を持ち上げると・・・・ 『連れて行って・・・・』 女の涙声だった・・・・ 急いで桐箱を貨物室へ移動させると、配送車を発車させたが、同時にひどい頭痛がしてきた。 『連れて行け!!』 今度は女の怒気を含んだ声だった。 頭痛がひどくなるのと、目眩、動悸がするのがいっしょだった。 運転するどころではなくなり、路肩へ車を停めると、荷物の受け取りを拒否した住職に相談した。 話を聞いた住職はすぐに駆けつけ、貨物室でお経を唱えた。 『住職がお経を読むと、身体の不調も和らいで。なんとか配送センターまで帰れました』 |