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小林玄

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小林玄

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FKB
口寄怪談

小林玄


竹書房文庫

「ミウ」 小林玄
『遺体はまだ置いてあるから、早く帰ってきなさい』
久しぶりの母からの電話は、大切に飼っていた猫、ミウが亡くなった知らせだった。
仕事が終わって、そのまま実家へ飛んで帰った。
小さな箱に納められたミウは年寄りだったけど、いっそう小さくなっていて、涙があふれた。
『一人にしてくれる?』
僕が可愛がっていたことを家族はわかっているから、部屋にミウを残して出て行ってくれた。
線香を焚いた。
『おいで』 と膝を叩く合図で乗ってきたことを思い出し、また泣いた。
『もう一度、膝に乗ってきて欲しかったな』
試しに、膝をポンポンと叩いてみた。
すると、締め切った部屋で、まっすぐに上げっていた線香の煙が直角に曲がり、僕の方へ
漂ってきた。
やがて煙は、僕の膝の上に集まるとミウの寝る形になった。
それを見て、どっと涙が溢れた。
『もう行っていいよ』
そう声を掛けると、煙はゆっくりと宙に消えた。

小林玄

小林玄
小林玄の
感染怪談
予言霊

小林玄

竹書房文庫
「怪談は感染する、その話をした人のところにやってくる、または試した人の身に降りかかる」
それが感染怪談だ。
かつて芸人としてデビューした小林玄は、現在『道化師』として国内外での活躍の場を広げている。
そんな彼のフィールドワークのひとつが怪談蒐集だ。
多彩な経験とネットワークから蒐集した多くの怪談から選りすぐりをお届けする。
霊を呼び出そうとしたグループが見たもの『ハイビーム』
すべては預言されている・・・・という言葉で始まるマジックが引き起こした怪異『予言霊』
怪異を体験したくてTVを購入した男の顛末『砂嵐の儀式』
など・・・。
読むことでリアル体験も可能かもしれない。

小林玄

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小林玄の
感染怪談
遊ぶ目玉

小林玄

竹書房文庫
「ムシノシラセ」
昔の相方Hは、よく『ムシノシラセ』が来る奴だった。
彼が18歳の時に1ヶ月ほどアメリカへホームステイに行っていた時のこと。
一週間くらいで、なぜかホームシックにかかり、同時に『お祖父ちゃんに電話しなきゃ』と
いう思いに駆られて電話をしたら、Hの家にいるはずの母親が出た。
母親になぜ、お祖父ちゃんの家にいるのか尋ねると、お祖父ちゃんが亡くなったから
来ているんだけど、おまえのホームステイ先の電話番号がわからなくて困っていたとのこと。
タイミングよく息子から電話が来たので安心した様子だったと。
彼は、その場でホームステイ先の家族に事情を話し、予定を繰り上げて帰国することを
母親に告げて電話を切った。
その時になって、彼はお祖父ちゃんの家に電話をかけたことがないことを思い出した。
そのどころか、かけたことのないお祖父ちゃんの家の電話番号など記憶すらしていない
ことに気が付いた。
その後、いくら考えても自分がダイヤルしたお祖父ちゃんの家の電話番号は思い出せ
なかったという。


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