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三雲央
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三雲央
心霊目撃談 現 三雲央 竹書房文庫
「契機」
土生さんがオカルトに興味を持つきっかけとなった事件。
それは年が明けて間もない夜十一時ころのこと、寝る前に門扉の確認をしよと褞袍を羽織って
外にでた。すると、いつもは闇に沈んでいる雑木林が、わずかに明るんでいることに気付いた。
その理由が気にかかり、雑木林へと向かった。
歩いていると物が焼け焦げる臭いがしてきた。
これは火事だ、と思った土生さんは雑木林を一気に駆け抜けた。
燃えていたのは、木造二階建て、山田さんという方が暮らしている家だった。
既に炎は家全体を覆っており、、とても手を付けられる状態ではなかった。
すると、燃えている家の玄関の引き戸が音を立てて開き、そこから幼児が一人、炎に包まれた
状態で飛び出してきた。
よたよたとした足取りで、七歩、八歩、こちらに向かいかけたところで力尽き、膝を突いて
前のめりに地面に倒れこんだ。
これは大変だと、土生さんは羽織っていた褞袍を脱ぎながら、その幼児の元へ駆け寄った。
そして未だ勢いよく燃えている炎を消す為に、褞袍で幼児の半身を覆った。
褞袍を通して、幼児の身体の感触が土生さんの手に伝わってくる。
だがその感触は、ほんの一瞬で消え去った。妙に感じて褞袍を開き、中を見ると、子どもの姿はなく
あるのは真っ黒に焼け焦げた長さ六十センチの足らずの細い木材だった。

三雲央
恐怖箱 怪画 加藤 一編 三雲央 ほか 竹書房文庫
「青いバラ」 三雲央
数年前、優紀さんが高校生の頃の話。
『ねえアニキ、気付いている?』
妹の唐突な質問に戸惑っていると、がらりと窓を開けた。
窓から半身を乗り出して 『ほら、あれ』 と指を差す。
優紀さんの部屋と妹の部屋の間の白い外壁に、直径二十センチほどの青いバラの絵が
描かれていた。
『なんだこれ?』
『分かんないけど、今帰って来た時に気付いて。いつからこんなのあったのかなぁと思って』
『誰かのイタズラ、かな?』
『・・・何かこれ、キモくない? ねぇ、キレイに落としてよ』
『ちっ、メンドイなぁ。明日学校休みだから明日な。今クタクタだから』

翌日の午前中、優紀さんはブラシ片手に自部屋の窓から身を乗り出して、外壁の青いバラの
絵を消し落とそうとしていた。しかし、一向に落ちる気配がない。
ならばもっと力を込めて・・・・と思った瞬間、優紀さんの体は窓の外へ落下した。

手当を終え、父親の運転する車で病院から戻った優紀さんに、玄関先で待っていた妹が
半泣きになって抱き着いてきた。
そんな妹を宥めながら、何気なく家の外壁を見上げると、あの青いバラの絵が綺麗に消えていた。
『あのバラ、誰かが消したのか?』
『え?アニキが消したんじゃないの? だってアニキが落ちて、のたうち回っているのを見つけた
とき、壁はもうキレイだったし』
・・・・外壁の青いバラの絵が誰の手により描かれ、そして誰がどのように消したのかはわからない
ままだという。

三雲央
恐怖箱 酔怪 加藤 一編 三雲央 ほか 竹書房文庫
「千鳥足」 三雲央
倉坂君にはともや君という霊感持ちの友人がいる。
その夜、二人は倉坂君のアパートへと向かって歩いていた。
すると、倉坂君がよく目にする、ふらついた人影があった。
『ああ、またあの爺さんかぁ。あれ、いつも酔って千鳥足なんだ』
時々、奇声を上げたりする旨、ともや君へ耳打ちする。
その爺さんを通り過ぎると・・・
『さっきの爺さんだけどさぁ、酒に酔っていたんじゃないよ』
ともや君がそんなことを言い始める。
『霊の仕業だね。ヤバいのが二体憑いていたよ。あいつら日本人と違うな』
そして
『あの爺さん、多分そう長くないと思う。奴らの両腕が肘くらいまで爺さんの頭部に突き刺さって
同化しかかっていたし。もう記憶の混濁とか超えて、意識を保つことさえ難しいと思うよ』
助けられないかと問うと、誰にも無理だと返答があった。
『ほんと、深夜に墓地や心霊スポットへ肝試しに行くなんて止めるべき。ましてやそこであれこれ
霊の関心を惹く行動を取ったり、神経を逆撫でする行為なんてのは愚の骨頂ってこと』
『ところでさぁ、その憑いているのが日本人じゃないってどういうこと?』
『見た感じ、目付きや雰囲気がモンゴル系か中国系。服装も今のものじゃないから・・・・・
なんだろうな?昔の戦争で殺した相手が憑いたとか?』


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