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中沢健
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中沢健
怪談・呪い屋敷 中沢健 山口敏太郎 牛抱せん夏 TO文庫
「雑居ビルの笑い声」 中沢健
友人のKが、ある雑居ビルで警備員の仕事をしていた時の話。
その日、Kは深夜2時の見回りをしていました。雑居ビルには喫茶店や学習塾などのテナントが
入っていますが、昼間の賑わいが嘘のように静まり返っていました。
彼は霊やオカルト現象をまったく信じないタイプの人間でした。
『あはははは』 
突然、男の笑い声が聞こえました。
『そんな馬鹿な、こんな時間に誰か残っているのか?』
声は学習塾から聞こえます。確認しようと近づくと
『あはははは』 
また笑い声が聞こえます。Kは学習塾のドアを開けました。しかし誰もいません。

翌日、Kがまだ明るいうちに雑居ビルに出勤すると、あの学習塾の前で、泣いている女子中学生を
男性講師がなだめている光景に出くわしました。
『何かあったんですか?』
『嫌な話です。うちに通っていた男子生徒が交通事故で亡くなったんです。これから通夜に向かいます』
『も、もしかして、亡くなった子というのは大きな声で笑う・・・・』
『ええ。あの子はとても陽気で、しかも真面目でした。いつも深夜まで勉強していましたから。
昨晩、夜食を買いにコンビニへ行く途中で事故に遭ったんです』
『昨晩の何時頃ですか?』
『新聞には2時頃と書いてありました。それでは葬儀に向かいますので失礼します』


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