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ねこや堂

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ねこや堂

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恐怖箱 閉鎖怪談 ねこや堂 他 竹書房文庫
「期間限定」 ねこや堂
八月、お盆の頃の話である。
九州のある地方では、川や海へ流さない代わりにお焚きあげ専用の精霊舟を作って海岸に積み上げる。
お供えを山のように載せた舟は、水に浮かせるという役割がないために大きなものもあるという。
この海岸は海水浴場にもなっていて、シャワーやトイレも常設されている。
ふと尿意を覚えトイレに行くと、幾つかならんでいる個室のどれもが『使用禁止』になっていた。
管理者らしき人物に故障しているのかと尋ねれば、故障ではないが使えないので数百メートル先の
コンビニまで行くようにとのこと。
そこまで行くのは面倒なので、粘りに粘って交渉をしてみたが、ダメなものはダメと突っぱねられた。
『この時期は女の霊が出るんだ。中から呻き声がしたりもする』
『ここにあるトイレ全部?』
『ああ、全部だ』
この時期だけ限定で、それ以外は出ない。
だから、今日は使えないと・・・・・・管理者は苦虫を嚙み潰したような顔で言った。

高田公太
神沼三平太
ねこや堂

高田公太
神沼三平太
ねこや堂
恐怖箱 百舌 高田公太 神沼三平太 ねこや堂 竹書房文庫
「手ブラ」 ねこや堂
小西君は幼馴染の雄大君から、できたばかりだという彼女を紹介された。
照れ臭そうに雄大君の後ろから現れた彼女は、小柄で可愛らしい。
胸に付いたリアルな模様が、パステルカラーのTシャツの色とそぐわないのが
気になった。
何度か見直して、その正体に気付く。
両脇から伸びた大きな手が、彼女の乳房をしっかり掴んでいた。
以来、彼女に会う度、小西君はどうしても胸に目が行く。
手は今日もそこに張り付いている。

高田公太
神沼三平太
ねこや堂

高田公太
神沼三平太
ねこや堂
恐怖箱 百聞 高田公太 神沼三平太 ねこや堂 竹書房文庫
「風の子供」 ねこや堂
畦道を歩いていた。
風は強くもなく、程よく涼しい。
にも拘わらず、ザァーっと音を立てながら稲穂が激しくなびいていた。
見れば、稲穂の上を子供が走っている。
青い着物を着た坊主頭の小さな男の子が、稲穂を蹴って跳ぶように。
蜻蛉の群れに追い立てられ、勢いよく飛んで行った。


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