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朱雀門出

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朱雀門出

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第五脳釘怪談 朱雀門出 竹書房怪談文庫
「鶏妖」
今から五十年くらい前の話。
鳥取県の安来市に住む、ある男性が自宅裏の用水路で鶏をさばいていた。
彼は楽しそうに、また、鬱憤を晴らすかのように、鶏に鉈を叩きつける。
と、鶏の首が切断したときの勢いで、用水路脇の壁に張り付いた。
鶏の首は目を見開いていた。
鶏と男性の目が合った。
男性に怒りが湧いてきた。それは怖れの裏返しだったかもしれない。
『何見とんじゃ! 祟れるもんなら祟ってみィ!』

それからしばらくして、その男性の娘に子供が生まれた。
生まれたその孫は、尾てい骨に鶏の尻尾のような羽が生えていた。
あのときの言葉を男は思い出していた。
『祟れるものなら祟って・・・・』
男性は孫の尾に生えたその羽を抜いた。しかし、抜いても抜いても生えてきたという。

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第二脳釘怪談 呪殺 朱雀門出 竹書房文庫
「怪談をしていると・・・・」
友人Yさんの話。
彼女が高校生の時、臨海学校があった。
夜、一つの部屋に集まり、車座になって怪談をしたそうだ。
幾つか怪談話が語られていくうちに、Yさんは隣に気配を感じるようになった。
その気配というのが、なんとなく湿っぽい。それ加え、とてもゆっくり呼吸しているのが伝わってくる。
もちろん、クラスメートのものではないし、窓は閉まっているので湿気が流れてくることもない。
薄気味悪さから、何度も気配の方を見ていると、隣にいた女の子が小声で訊いてきた。
『もしかして、Yちゃん、何か感じる?』
Yさんも小声で、先ほどからの気配の話と、感じたままを言葉にした。
『濡れた・・・・人だよね』
『溺れて死んだ人じゃない?』
声が聞こえたようで、周りの子達がざわめき始めた。
『怪談をすると 寄って来る って言うよな』
と、誰かが言ったのを皮切りに怪談の会はお開きになった。
ただ、寄って来たなら、寄って来た『何か』も写るんじゃないかと、最後に全員で記念撮影が行われた。
その期待通り、Yさんと隣の子の間には、誰のものでもない足が写っていたそうだ。
その足は、水死体を思わせるように、青白くふやけていた。

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脳釘怪談  朱雀門出 竹書房文庫
「穴水もまた魔所なること」
この話をしてくださった方は女性なのだが、剃髪はしていないが僧侶であるという。
彼女が友人たちと連れ立って石川県の穴水に行ったときのこと。
友人たちの中には、彼女と同じように僧籍にある人が四名いた。
到着したのは夜で、海岸に出た。
夜の海は、全くロマンチックではなかった。
海面から無数の白い手が飛び出し、何かを掴もうとうごめいていたのだ。
波打ち際に近付こうとする友人を、彼女は引き止めた。
『え? なんで?』
と不思議がる者と、無数の手が見える者にはっきりと分かれた。
無数の手が見えているのは、僧籍の四人で、あとの友人はきょとんとしていた。

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FKB 怪談五色 忌式 朱雀門出 黒木あるじ 黒史郎 伊計翼 つくね乱蔵 竹書房文庫
「震える三人」
Mさんという女性が子供の頃、体験した話。
ふと、夜中に目が覚めた。
すると、気配がする。
突き当たりの廊下を小さい何かが歩いている。
よく見ると小人だ。それも三人いる。髪が長いので女性だと思った。襦袢のような薄着だった。
首を震わせながら歩いていた。
と、突如三人が一斉に振り返った。
その三人の顔に見覚えがあったが、その時は思い出せなかった。
翌年の二月下旬のこと、母親と雛人形を出していると三人官女だけがなくなっていた。
不思議なことに着物はそのままで、中身だけがなかった。

Mさんがあの夜に見た三人の顔が、無くなった三人官女と全く同じであるかどかは
今となってはわからない。
ただ、手元に残っている他のお雛様の顔は、あの小人とそっくりであった。


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