匠平 |
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幻夜の訪問者 匠平 だいわ文庫 「冗談」 お客様のYさんには、親戚一同から『愛すべきジジイ』と呼ばれているおじいさんがいた。 『つねに笑顔で、怒っているところは誰も見たことがない。というよりも、いつもふざけているから 真面目なところを見たことがない』とYさん談。 そんな愛すべきおじいさんは五年前に亡くなった。 そんなおじいさんの三回忌の法要終了後に、ひょっこり親戚の間からおじいさんが現れた。 『え?じいさんなんでいるの?』 『俺の家に俺がいるのは当たり前だろ!』 『ちょっと待って。じいさん死んでいるよね?』 『あちゃー、そうだったな。忘れてた』 おじいさんが笑い出すと、その場にいた全員も笑ってしまった。 『んじゃ、死んだことを思い出したことだし、そろそろ俺はあの世に帰るかな』 そう言うと、Yさんの弟の右腕をグッと掴む。 『一人は寂しいからコイツを連れて帰るわ・・・』 その言葉に全員が言葉を失った。 『じいさん、それはダメだ』 『寂しいのはわかるけど、連れて行くな!』 弟は掴まれた腕を振りほどくことができないようだ。 『なんてな・・・冗談だ!』 おじいさんは、また笑い出した。みんなが笑ったのを確認すると・・・ 『あー、笑った。んじゃ、お前たち死ぬまで生きろよ』 そう言うと、ふっと消えてしまったそうだ。 『匠平さん、死んで幽霊になってもじいさんは<愛すべきジジイ>でしたよ』 Yさんは嬉しそうに、この話を締めくくった。 |
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| 闇夜の訪問者 匠平 だいわ文庫 「軋む部屋」 『ガタン!』 何かが倒れるような音がする部屋で撮影した写真には、首を吊った男の顔が 写っていた。 |