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竹内義和

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竹内義和

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都市怪奇伝説

竹内義和

メタモル出版
「何を着ていこうかしら?」
ある母親思いの男性がいまして、三十歳の時のこと。
母は病弱で入退院を繰り返しながらも、現在は実家で療養中だった。
ある日の深夜、酔ってマンションに帰って来た。
そのまま寝てしまったのですが、朝方4時に目が覚めた。
そしたら、いきなり母親が部屋のドアから入って来た。
『あれ?家にいたんじゃないの?具合はいいの?』
母親は息子の質問には答えず・・・・
『何を着ていこうかしら』 手に持ったいくつかの着物を選んでいるようだ。
『どれでもいいんじゃないの。どこに行くの?本当に調子いいの?』
具合を聞こうと、再度、母親へ視線を向けた時にはいなくなっていた。
胸騒ぎを覚え、そのままマンションから飛び出した。
すると、マンションの前にタクシーが止まっていてドラーが開いた。
彼を乗せたタクシーは、行き先を告げぬまま、ある病院の前に停車。
運転手に料金を払うと、病院の中へ急いだ。
病院の中には医者がいて
『今、連絡を取ろうと思っていたところです。お母様はご臨終です。』
病室のベッドには顔に白い布を掛けた母親の横たわる姿があった。
その男性曰く
『今でも不思議だと思うのは、あのタクシーの運転手が行き先も言わないまま
どうして病院へ連れて行ってくれたかということなんです。』


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