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寺井広樹
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岩手の怖い話

寺井広樹
岩手の怖い話 寺井広樹・正木信太郎 TOブックス
「トイレの個室」
岩手県内のF大学二年生のSさんが聞かせてくれた話だ。
自宅、学校、バイト先と行き来する生活が続いていた、ある日のこと。
バイト先から自宅へ帰る途中、歩いていたSさんを突然の腹痛が襲った。
トイレに行きたいが、自宅まではまだ距離がある。
慌てるSさんの目に公民館が映った。
『助かった!』
そう思うと、自然に歩く速度も上がる。
受付でトイレを借りたい旨を伝えると、二階のトイレを使うように言われた。
お礼を言って、階段を上がり三つあった個室の中央へ駈け込んだ。
誰も居なかったが、なんとなく真ん中に入った。
用を足し終え、衣服を整えて、鞄を手に持つ。
個室のドアを開け、一歩、外に出た。
その瞬間、真後ろで 『カチャッ・・・・』 と鍵を閉める音がした。
Sさんは受付係に挨拶することもなく、その場から走って逃げたという。
茨城の怖い話

寺井広樹
茨城の怖い話 寺井広樹・一銀海生  TOブックス
「観覧者」 つくばサーキット
レーサーの木田さんがサーキットを走行していると、コースの中に小学校低学年くらいの
男の子が立っていた。
それは、あるレーサーの息子で一年前に病気で亡くなったとのこと。
父親には子供の姿が視えないというので、木田さんがこう言った。
『コーナーに立っているから、カーブに気を付けろって言っているんだと思いますよ』
一年後、久しぶりにつくばサーキットに来ると、子供の姿が見えないので
『今日はライダーの〇〇さんは来ていないんだね』とレース関係者に聞いた。
『あの人、事故で大けがしたんだよ。カーブ曲がりそこねてさ』
『今は回復されているの?』
『まだ病院のベッドだよ。意識不明のまま・・・可哀そうに』
あの子・・・・応援に来ていたんじゃなくて、連れに来てたんだ・・・・

寺井広樹
しのはら史絵
お化け屋敷で本当にあった怖い話 寺井広樹 しのはら史絵 TOブックス
「お化け屋敷スタッフの恐怖体験 心霊動画」
心霊動画を使ったイベントがあった。
動画を見ていただき、動画に映っているヨシ君という男の子の霊を供養してくださいというもの。
お客様はお化け屋敷に入る前に、ヨシ君が映っている動画を観なくてはならない。
イベント中のある日、その動画を見ていたお客様が 『ヨシ君以外の子も映ってましたね』 
とスタッフに言ってきた。
そのスタッフは、お客様と一緒に動画を早戻しして、その場面を教えてもらった。
『ああ、ここです。ほら、その窓に女の子が!』
小学生くらいに見える女の子が、長い髪を真ん中で分けていて身体をゆらゆらと揺らしながら
教室の中を覗いている。

後で動画を隅々まで確認したところ、女の子は最初から窓に映っていた。
この話を聞かせてくれたAさんは、撮影から編集まで立ち会っていたが、その女の子には全く
気が付かなかったとのこと。
更に驚くことに、撮影時にAさんがいた場所が、ちょうど女の子の霊が立っていた所だ。
Aさんはその場にしゃがみ込み、動画に映らないよう隠れていたという。


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