鳥飼誠 |
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恐怖箱 呪毒 鳥飼誠 竹書房文庫 「刀の話」 中田さんがまだ幼かった頃の体験で、当時、彼の実家はかなりの名家であった。 しかし、家長である父親が急死してからは、家は傾き始める。 それに追い打ちをかけたのが、父親の弟、酒と賭博が大好きな銀蔵の存在だった。 銀蔵が村のあぶれ者とつるんで愚連隊のようなものを結成したとき、兄から縁を 切られた。 その銀蔵が、兄が亡くなった途端、荒くれ者を多数引き連れて家に乗り込んできたのだ。 『土蔵の中身をちょいと頂いていくぜ』 『刀だ、刀を探せ。親父と兄貴がアホみたいに大切にしていたものだ。きっと名刀に 違いない』 土蔵に入るや否や、次々と中の物を持ち出していった。 『銀蔵の兄貴、刀なんか見つかりませんぜ』 ほぼ空になった土蔵を、更に探し回ったが刀の鞘すら見つからない。 すると、突然、荒くれ者の一人が叫んだと思ったら、彼の右肘の下が切断された。 その場にいた荒くれ者たちの腕が、足が、次々と床に転がっていく。 銀蔵は、土蔵から逃げ出た途端に両手、両足を切断され、仰向けに倒れると・・・ 『おおおおお、親父~、すまねえ~、許してえええ~』 皆、叫び声が笑い声に変わったという。 その後、荒くれ者たちの命は助かったものの、精神は壊れたままで今も病院で 笑い続けているという。 |
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恐怖箱 禍族 鳥飼誠 雨宮淳司 神沼三平太他 竹書房文庫 「あと五分」 鳥飼誠 国枝さんの家にある全ての時計は、一時期おかしな動きをいていたという。 その現象は国枝さんのお母さんが亡くなった次の日から起こるようになった。 午前十一時二十五分になると家中の時計が一斉に五分だけ巻き戻るのだ。 そして暫く経つと、全ての時計が一斉に正しい時刻に戻る。 歳を取って衰弱したお母さんを自宅に招いて面倒を見ていたのだが 国枝さんが買い物へ行った少しの時間の間に心不全で亡くなってしまった。 午前十一時二十五分はお母さんが亡くなった時刻。 『あと五分早く帰ってきてくれたら・・・・母がそう訴えていたんだと思います』 母親を救えなかったと国枝さんは悔しそうに言った。 四十九日を過ぎた頃、五分巻き戻る現象は起きなくなったという。 |
鳥飼誠 深澤夜 戸神重明 |
鳥飼誠 深澤夜 戸神重明 |
恐怖箱 魂迎 鳥飼誠 戸神重明 深澤夜 竹書房文庫 「ラブホの風呂」 鳥飼誠 久しぶりにラブホテルに泊まった。 彼より先に風呂に入ったが、仕事の疲れもあってか、うっかり湯船の中で寝てしまった。 唐突に足を掴まれたので、吃驚して目を覚ました。 広い湯船だったので、彼が潜っていたずらしたんだろうと思って掴み返した。 そのとき、彼が素っ裸で入って来た。 『え?』 掴み上げたのは、派手なネイルをした女の足だった。 足はすぐに消えたが、手には派手なネイル一枚が残った。 |
鳥飼誠 怪聞亭 つきしろ眠 |
鳥飼誠 怪聞亭 つきしろ眠 |
恐怖箱 赤蜻蛉 鳥飼誠 怪聞亭 つきしろ眠 竹書房文庫 「おぶつだん」 鳥飼誠 保育園に勤務する木村さんは、他の保育士といっしょに池のある大きな公園に 園児たちを連れて行った。 そこで、池と水鳥をスケッチさせるためだ。 木村さんは、スケッチブックを開いた園児ひとりひとりを見て回っていた。 ある男の子の絵を見て足が止まった。 池の中央に建物らしきものが描かれている。 『これ、なあに?』 と園児に尋ねると 『おぶつだん!』 と元気の良い声が返ってきた。 その後、他の園児の見回りに行くと、数人の園児の絵に『おぶつだん』が描かれていた。 |
鳥飼誠 |
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恐怖箱 籠目 鳥飼誠 竹書房文庫 「つねる」 ある女性が20代前半の頃、仕事や人間関係で悩みに悩んでいた。 折角、熾烈な就職活動で入社した会社だったので 一生懸命頑張った・・・・が、もう限界だった。 『死のう』と思った。 病院で処方されている抗うつ剤を飲んで実行すれば、恐怖が 和らぐだろうと思い、一気に薬を口に入れて水で流し込もうとした。 ”グイッ” 左頬を思い切り抓られた痛みで、薬も水も一気に吐き出した。 あっけにとられていたが、頬をつねられる感触から記憶が蘇った。 それは、幼かった頃に悪いことをすると頬を抓られた 大好きだった祖母のことだった。 もう、随分前に亡くなったはずなのだが・・・・ 『おばあちゃん・・・』 吐いた薬と残った薬、全てを捨てた彼女は会社を辞めた。 今は、派遣社員として資格取得を目指しているんだとか。 |
鳥飼誠 矢内倫吾 渡部正和 |
鳥飼誠 矢内倫吾 渡部正和 |
恐怖箱 老鴉瓜 鳥飼誠 矢内倫吾 渡部正和 竹書房文庫 「出張マッサージ」 鳥飼誠 ある日、お得意様から出張マッサージの依頼が時田さん、指名で入った。 それは一人暮らしのお婆さんで、時田さんをご贔屓にしてくれる。 家に着き、インターホンを鳴らすと、開錠する音とともにドアが開いた。 一人暮らしのはずが、そのには全裸の男性が立っていた。 すると、奥からお婆さんがやってきて 『ああ、マサヤス』 と言うなり、奥から位牌を持って来て・・・ 『この、馬鹿息子が』 と男の頭を位牌で叩いた。 男は、その場に倒れこんだまま・・・・ マッサージを終え、料金とチップを受け取ると玄関へ急いだ。 男は、まだ倒れたままだった。 『今日はしつこいのね』 と言うと、お婆さんは位牌で何度も叩き始めた。 すると、男が忽然と消えた・・・・ 『生前から手間の掛かる子でしたが、亡くなった今も親へ迷惑を掛けるんです』 |
鳥飼誠 寺川智人 高田公太 |
鳥飼誠 寺川智人 高田公太 |
恐怖箱 精霊舟 鳥飼誠 寺川智人 高田公太 竹書房文庫 「賽銭泥棒」 鳥飼誠 年金暮らしの体験者が腰を痛めてしまった時のこと。 歩いて病院へ行けないためにタクシーを使った。 腰が完治するころには少ない蓄えも底を尽き、正月の餅を買う金もなかった。 たまたま通りかかった神社を見て、賽銭泥棒を思いついた。 家に帰ると、賽銭泥棒の準備をして夜を待った。 神社に着いて、人がいないことを確認してから、賽銭箱を懐中電灯で照らした。 数枚の硬貨に混じって、1万円札が見えた。 針金に粘りを出したガムを付けて、狙い通り1万円札へ落とした。 あとは引っ張り上げればいいだけだが、力を入れても1万円札が上がって来ない。 ついには、ガムは針金を外れて1万円札に付いたまま、針金だけが上がってきた。 『くそ~』 悔しい思いで顔を上げると、そこには美味しそうな柿の実が1個だけあった。 柿の実を懐へ入れると、嬉しい気持ちになって自宅アパートへ帰って行った。 そこで大家さんと鉢合わせになり 『あんた、何持ってんの』と言われ、よく見ると柿の実がスズメバチの巣に変わっていた。 『一体、あんた何をやったの?』の問い詰めに観念し、大家さんへ賽銭泥棒を白状した。 すると、家賃は数ヶ月待ってくれることになり、また少ないながらもお金を借りることが できた。次の日、日本酒の小瓶を買って神社へ謝罪に行った。 『もう二度とあんなばかなことはいたしません』 何度も頭を下げてアパートへ帰ったところ、部屋の前にスズメバチの巣が落ちていた。 捨てようと思って拾い上げると、巣の割れ目にはガムの付いた1万円札が・・・・ 体験者は神社の方向へ、泣きながら何度も何度もお辞儀をしたという。 |