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宇田川敬介
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宇田川敬介
​​ 三陸の怪談 震災後の不思議な話 宇田川敬介 飛鳥新社
「私たちは生きているのでしょうか」
タクシー運転手の方に聞いた話。
その日も夜勤の習慣で、いつものように復興商店街の近くで車を停めていると、若者のグループが
やってきました。
『運転手さん、いいですか? みんなで乗れますか?』
人数を数えれば4人、狭いけれど乗れる旨を説明すると、声をかけてきた若者が助手席に乗りました。
目的地は少し遠いところでしたので、海沿いの道を走っていました。
すると、何もない場所で、タクシーを停められ、4人は降りて道路端にならんでいるんです。
『運転手さんに聞きたいことがあるんです』
『なんでしょう?』
『実は、自分たちは死んでしまったのかどうか、わからないんです。さっきも居酒屋でいろんな人たちと
飲んだり話したりしましたが、どうも様子が変なんです』
『何を言い出すんですか、お客さん』
『そんな私たちでも、家に送ってもらえるんでしょうか』
エッ、と思ってもう一度よく見ようと、一瞬目をしばたいた次の瞬間、彼らは跡形もなく消えてしまって
いたのです。何かのいたずらではないかと思って、車を降りて周囲を見渡すと、ちょうど道端から
彼らが見ていた方向に津波で廃車になった車の置き場があったのです。
ああ、この中のどれかの車に乗っていて亡くなった方だなと思いました。


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