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矢内倫吾




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鳥飼誠
矢内倫吾
渡部正和

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恐怖箱 老鴉瓜

鳥飼誠
矢内倫吾

渡部正和

竹書房文庫
「宝船」 矢内倫吾
予知夢を時々見る妻が、宝船に乗って郷里の氏神様の階段を上がっていく
夢を見た。宝船だけでは何の意味か不明だが、彼女の母が肝臓を患い入院し
容態が思わしくないことから、そのことに関する何かとは想像できた。
数日後、妻と買い物に行った際、めずらしく別行動を取った。
たまたま、歩いていた方向に神社があった。
『医薬の神・病気平癒の神』との看板を見ると、妻の母親を思い出して祈祷祈願を
お願いすることにした。
祈祷は明日になり、祈祷札は祈願主へ郵送してくれるとのこと。

次の日、妻はまた夢を見た。彼女の実家に、父母の古い友人がワンボックス車で
迎えに来た。彼女の母をしきりに誘うが、断った。次に父が誘われるが断った。
夢から覚めた妻は、父母を誘いに来た友人たちが全て亡くなっていることに気づく。
実家に、夢の話をするために電話をすると、今祈祷札が届いたという。
そして、祈祷札には宝船が描かれていたそうだ。まもなく妻の母は持ち直した・・・。

原田空
矢内倫吾
高田公太

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高田公太
恐怖箱
 蟻地獄

原田空
矢内倫吾
高田公太

竹書房文庫
「帰還」 矢内倫吾
真理子さんの会社の社員旅行はグァム島だった。
だが、離婚したばかりで3歳の喘息持ちの息子がいる彼女が同行できるはずもなかった。
『お土産を待っているわ』の彼女の言葉に『では、日本兵を』という冗談が返った。
数日後、皆、無事に帰国。多くのお土産と多くの土産話に耳を傾けた。
その夜、息子を寝かしつけた彼女も床に就いたが、大勢の気配に目を覚ました。
ぼろぼろの軍服にゲートルを巻いた、青白く光る多くの日本兵が見える。
その中の1人がきびきびした動作で前へ進み出た。
『佐藤中隊総勢二十四名、只今無事帰還いたしました。ご親切、心より感謝いたします。
我等祖国の礎となれたことを誇りとし、今よりそれぞれの己が故郷へと戻ります』
敬礼を行う若い将校。その背後で佐藤中隊二十四名が一斉に敬礼をする。
震える真理子さんの前で、彼らはそのまま消えた。
翌日、形ばかりの供養と考えて、水と酒と、あり合わせの材料で作った親子丼を供えた。
その夜、また日本兵が現れ、感謝の言葉と、親子丼は高級すぎて食べられないと言う。
真理子さんの脳裏に戦場で苦しむ彼らの悲惨な光景が飛び込んでくる。
あり合わせの材料で作った料理でさえ、彼らには贅沢品であったのだ。
『この人たちが戦ってくれたから、今の日本があり、豊かなことにも気づかないで
生活できる、豊かな現代がある・・・・・怖がってごめんなさい』
翌日から、彼女は彼岸やお盆で使う経卓に、水、酒、ご飯、おかず、和菓子を供えた。
日本兵は、その都度、真理子さんの夢枕に立って頭を下げた。
5日目の晩、日本兵の母親、伴侶と思われる女性達が現れて、それぞれ再会した。
あの佐藤隊長も、品の良い婦人の前に立ち 『母上、只今戦地より帰還しました』
皆、それぞれのお迎えとともに姿を消していく・・・真理子さんに深々と頭を下げながら。
翌日から、これ迄は当たり前の生活と思っていた一時に重みを感じるようになった。
これは、大勢の命が支えてくれた貴重な時間なのだ、頑張って生きなければ!


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