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恐怖怪談 コレクション 矢島誠 永岡書店 |
「こけし」 『ガラスケースの中のこけしは火に入れて燃やしてね』 母は、そう言い残して息を引き取った。早すぎる死だった。 母から、こけしは燃やせと言われていたが、母が大切にしていた物を 燃やしてしまうのは寂しくて、こけしをガラスケースから出しておいた。 そのこけしは大きさが40センチほどの大きさで、なぜこのこけしだけが ガラスケースに入っていたのか?と思いながら、他のこけしと同じ 場所へ並べた。 数日たった日、小さいこけしが無くなっているのに気づいた。 たしかに置いてあったこけしがない。 おかしいと思いながら数日が経った。また、小さいこけしがなくなった。 ふと見ると、大きいこけしの背丈が大きくなっているようだ・・・・ 『もしかして、このこけしが他のこけしを食べたとか?!』 そんな想像をした日から数日経って、友人の子供を1晩預かることになった。 晩ご飯を食べさせて、就寝まで順調に運んで、子供は眠りについた。 突然、火のつくように泣き出した子供の元に行くと、あの大きなこけしが 子供の胸の上に乗り、大きな口で頭を食べようとしてる時だった。 思わず手でこけしをたたき落とした。 その後、ゴミのポリ容器の中へ突っ込んだ。 次の日、起きてみると、昨日ポリ容器の中へ捨てたはずのこけしが元の 場所に立っていた。 母の言葉を思い出し、神社でこけしを燃やした。 |
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新・怪奇体験1 矢島 誠編著 勁文社 |
「ひとり、多い」 高校時代のテニス部の合宿でのこと。 怖いので、同学年の5人で夜中にトイレに行った。 3つのトイレに『緊急事態』の3人が入った。 まだ待てる人がトイレの前に並んで、しばらくすると トイレに入っていた人と交代した。 みんな出す物を出すと、一様に落ち着き、あることに気づく。 トイレに入ったのが3人、外で待っていたのが3人・・・・ どう考えても一人多い。 そして、トイレから出た全員を数えても6人。 みんな悲鳴を上げながら、自分の部屋に帰って布団を被って 震えていた。 そして、よく思い出してみると、6人目の知った顔は自分だと気づく。 |
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新・怪奇体験2 矢島 誠編著 勁文社 |
「おいしい水」 そのころ、山東拓也さんと坂本恵美子さんは同じアパートに住んでいた。 部屋は、玄関を入ってすぐの六畳の台所と、それにドア一つで繋がった六畳の寝室。 そして、鉄筋三階建の最上階。 電話も風呂もなく、トイレだけが直接台所にくっついていた。 ただ、どういうわけだか頑丈で、両側の部屋から漏れ聞こえてくるような音は 一切なかった。 なので、夜ともなれば、物音一つしない静かな環境となる。 隣の音がしないということは、こちらの音も隣に聞こえないわけで、精力盛んな 学生が同棲するには、うってつけの部屋だった。 その日もシングルベッドと畳を往復して、最後に山東さんが果てた。 指に着いた物を洗い流そうと、山東さんは台所に向かった。 蛇口を開いて指を洗い、蛇口を閉じた・・・・ 『ああ~、あいしかった・・・・』 山東さんも坂本さんも、そんな言葉を発していないことがわかると、急に怖くなった。 玄関、ベランダと人の気配を探したが、はたして誰もいなかった。 |
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新・怪奇体験3 矢島 誠編著 勁文社 |
「ビデオテープの予言」 幼い子供を残して妻が逝ってしまった。 数年経ったある日、日常的に見ていた生前の妻の ビデオテープに意味不明な言葉が入っていた。 『あなた、そのトラックから離れて。危ないから離れて』 巻き戻して聞いても同じ・・・ 数日後、仕事で高速道路を運転中、前を過積載と 思われるトラックが走行していた。 その時、妻のビデオでの言葉が思い出されてきた。 『そのトラックから離れて。危ないから離れて』・・・ あわてて、そのトラックを追い越した。 その直後、トラックは荷崩れを起こして建設資材を道路にぶちまけた・・・ |
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新・怪奇体験4 矢島 誠編著 勁文社 |
「おんなじ」 ある温泉好きな方が東北地方の温泉へ友人数人と行ったときのこと。 深夜まで宴会で飲んだ後、温泉に入ってから寝ようと思った。 一人で温泉に向かい、岩で囲まれた湯船に入った・・・ 一人かと思ったが、湯気でかすんだ先に十歳くらいの女の子の姿がある。 何も考えないで湯に浸かっていたが、リラックスしてくるに従い 『なぜ、こんな夜中に一人で子供が温泉にいるんだ? 親は心配じゃないのか?』と疑問に思えてきた。 すると、女の子から『どこから来たの?』と声をかけられた。 『東京の練馬というところだよ』と答えた。 『私もおんなじ』という答えなので『練馬のどこ?』と聞くと 『おんなじ、おんなじ』と答えて笑っているだけだった。 へんな子だなと思い、女の子から視線を少し外した。 視線を女の子に戻した時には、女の子の姿は消えていた。 自分の前を通り過ぎなければ湯船から出られないのに・・・。 しばらくして・・・ 会社から帰って、風呂に入ろうとしたら誰かが入っているような・・・。 奥さんと二人暮らしなので、てっきり奥さんが入っているのかと思い 風呂場に行ったが曇りガラスを通して写る姿がやけに小さい。 おまけに、子供のクスクス笑う声が聞こえる・・・ 『おんなじ、おんなじ』 連れて来てしまったと気づき、引越しをしたとのこと。 皆さんも、お気をつけて。 |