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吉澤有貴

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吉澤有貴
獄・百物語 吉澤有貴 ほか 竹書房文庫
「お盆のコール」 吉澤有貴
介護施設で働く女性、野田さんの話。
『入所者さんの愉しみって結局食事なんですよね』
お盆と正月のメニューは、入所者が一番愉しみにしているという。
行事食は、食堂での会話も弾んで和やかな空気がながれる。
『でもね、そんな時ナースコールが鳴るんです』
コールのあった部屋番号は、職員が首から下げている医療用PHS端末にも表示される。
その部屋番号は、食堂で美味しそうにお盆のお膳を食べている入所者のもの。
『念のため、部屋にはいきますが、もちろん誰もいません』
食堂に戻って、他の職員に目配せする。他の職員も訳知り顔でうなずいた。
『お盆にね、こうやってコールが鳴った部屋の入所者さんは、その年うちに亡くなるんですよ。
私たちはこのことを”呼ばれた”と言ってます』
今年のお盆もコールが鳴った。今年は二人”呼ばれた”そうである。

吉澤有貴
怪談実話二人衆 嫐(うわなり) 吉澤有貴 川奈まり子 竹書房文庫
「呼ぶ部屋」 吉澤有貴
地方病院で看護師をしている間宮さんの話。
ナースコールが怖いという。
誰かが押すのがナースコールだが、誰もいない部屋からのナースコールが怖い・・・・
間宮さんの病院では、一類感染症に対応できる入院病棟がある。
西アフリカで猛威をふるった出血性の感染症に対応するためだ。
幸いにも、今まで患者はいない。
感染症病棟は、幾つもの扉に遮られている。
その感染症病棟からナースコールがあった・・・確かめてみたが、もちろん患者はいない。
ナースステーションに戻るとナースコールが鳴るので、警備員に人の有無を調べてもらった。
そして、最後は業者を呼んで、電気系統を調べてもらったが、異常は見つからなかった。
『部屋って、ずっと使わないままだと別のものが入っちゃうのかな?』
今でも時折、感染症病棟よりナースコールが鳴る。
それが夜勤の時に起きた場合は申し送りの書類へ
『電気系統の異常によりナースコールあり』
と記入することになっているとのこと。

吉澤有貴
呪胎怪談 吉澤有貴 竹書房文庫
「死神の合図」
主婦の吉田さんの話。
『オカルトに興味がないタイプの父だと思っていたので、初めて聞いた時は驚きました』
吉田さんのお父さんは、会社を定年退職後、悠々自適の生活をしていたがガンが見つかり
余命宣告をされた。
取り乱すこともなく、自分の寿命と受け入れ、自宅療養をしていた。
しかし、痛みが激しくなるとモルヒネの投与のために入院した。
当時、吉田さんは北陸に住んでいたので、東京に見舞いに来られるのは月に一度程度だった。
その日も、夫に子供を預けて見舞いに来ていた。
つきっきりで看病する母に息抜きをするように言い、吉田さんは病室で洗濯物を畳んでいた。
そんな時、お父さんが昼寝から目覚めて吉田さんを見つめた。
『お前にだけ話すんだ。誰にも言うんじゃないぞ』
そう言うと死神の話を始めた。窓の外に死神がいるが、まだ顔が見えない。見えた時は最後の
死ぬ時なのだろう・・・。
それから何度かお見舞いに行った時のこと、お父さんが吉田さんを枕元に呼んだ。
『死神が・・・・お前に合図してくれるそうだ・・・・』

ある夜、子供を寝かしつけた後、旦那さんの帰りを待っているとモーターの回る音が聞こえて来た。
それは子供のミニカーのパーキングタワーで、ミニカーが上へ上へと上って行く・・・・
『すぐに、これが合図だと思ったんです』
行く準備が完了すると旦那さんが帰宅、そのまま車で東京へ向うと危篤の連絡が来た。
合図のお陰で、お父さんの最後に間に合ったそうだ。


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