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怖すぎる実話怪談 瘴気の章 結城伸夫 文庫ぎんが堂 「第一発見者」 加藤君が高校一年生の時のこと。 彼が所属していた社会歴史クラブで山城跡の見学に行くことになった。 嫌々ながら付いてきた彼は、だらだらと歩く部員、引率の教師を追い抜いて歩いて行く。 (早く見て、とっとと帰ろうっと) つまらなさ全開で先を急いでいると、山道の前方から若い男が青ざめた顔で下りてくる。 『人が死んでる、人が死んでる』 そんな尋常でないことを呟きながら、こちらも見ずに山道を下って行った。 加藤君は、小走りに山頂付近まで駆け上がると、その辺りをドキドキいしながら見渡す。 すると、二十メートルほど奥の林の中に、こちらに背を向けて人がぶら下がっているのが見えた。 『うわ~、首吊りだ~!』 彼は一目散に駆け降りると、下から先輩や教師がのんびりと上がって来るのが見えた。 『人が死んでる、人が死んでる』 そういうと彼はその場にへたり込んでしまった。 加藤君のひきつった顔を見た全員は、山道を走って上がっていった。 教師が警察へ連絡し、加藤君が第一発見者として事情を聞かれた。 『いえ、僕と違いますよ。僕より先に、若い男が死体があると言いながら下りて来ました。 後から上って来た連中も見たはずですけど』 しかし、ここで食い違いが生じる。教師も部員も、そんな男は見ていないと、きっぱり言った。 警官はどんな男だったか訊いてきた。 『若い男で、紺色の背広姿で、確か茶色と黒の大きなショルダーバッグを抱えていました』 『君、遺体を見たの?』 『いえ、怖くて遠くから見ただけで、すぐ逃げました』 『そうか。若いかどうかはまだわからないけど、服装や遺留品も含め、遺体の男性に似ているんだよ』 警官はニヤニヤしながら、怖ろしいことを言った。 『キミ、幽霊でも見たんじゃないの!』 |
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怖すぎる実話怪談 鬼哭の章 結城伸夫 文庫ぎんが堂 「異国のお坊さん」 タイ在住の私が、ミャンマーにピザを取るために出かけたときのこと。 手持ち無沙汰だった私は、近くの寺へ行ってみることにした。 寺に着くと、一人の坊さんが片言の日本語を使って親しげに寄ってきた。 坊さんの話では、この地がビルマと呼ばれていた時に日本兵から日本語を習ったという。 そして、坊さん自身も戦争を体験しているという・・・・ だが、その坊さんの年齢はどう見ても四十五歳くらい。 もし、戦争体験者なら百歳ほどになっているはずだ。 聞きかじった戦争の話をしているのかと思ったが、それにしては微に入り細に入った 自身が体験したかのような口調。 翌日も寺に行くと、その坊さんが寺の中を案内してくれた。 次の日は移動日だったので、お礼とお別れの挨拶をしようと寺を訪れた。 寺は葬式の真っ最中であったが、遺影の写真を見て驚いた。 そうなのだ。昨日まで話していた坊さんに瓜二つなのだ。 というか、写真の肖像はそのまま歳を重ねた感じだった。 あまりにも不思議に思い、寺の別の坊さんに聞いてみると・・・・ 亡くなったのは寺の最長老の坊さんで、百歳だったとのこと。 しばらく入院した後の他界だったらしい。 |
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怖すぎる実話怪談 怨嗟の章 結城伸夫 文庫ぎんが堂 「峠の宿場町」 場所は長野県の伊那谷と木曽谷をつなぐ峠にある宿場町の跡。 高校の陸上部に所属していた友人が夏休みに合宿へ参加したときのこと。 練習後、別の宿に高校生の女子と思われる集団を見つけ、見に行った。 すると、女子に混じって五十歳くらいの女性が見え隠れしていたが、いつしか自分を 睨んでいることに気付いた。 引率者かもしれないと思い、怪しまれないよう頭を下げながら挨拶の言葉を発した。 と、その瞬間、有り得ないことが起こった。 女がこちらを向いたまま、横滑りをしながら彼の方に向かってきた。 近づくに従い、女の姿の異様さに驚いた。 ぼさぼさの崩れた日本髪に、血色は土気色、着ているものは黒く煤けた白無垢・・・。 その異様な姿の女が、逃げる彼を追うように平行移動してくる。 彼は恐ろしさで、前だけを見て走り続けた。 宿舎にたどり着くと、女のお化けを見たと言ったが誰も信じてくれなかった。 本当に出たと言い張ると、確かめに行こうと男ばかりで出かけて行ったが何もなかった。 夕食の時、玄関に誰かが来て先生が対応していたが、戻ってきた表情が恐い。 『この先の宿を集団で覗いている男子学生がいたと苦情が来たぞ。いったい誰だ?』 みんな一斉に彼を見る。 『お化けが出たので見に行きました』 『見え透いた嘘をつくな!このバカ者が!』 怒りの鉄拳をくらったが、事実は事実である。 |
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怖すぎる実話怪談 異形の章 結城伸夫 文庫ぎんが堂 「野良猫」 テンテン(男性・兵庫県) 職場の同僚はアパートの三階で一人暮らしをしている。 夏の寝苦しい夜、窓を少し開けて寝ていたところ、すぐ近くで声がした。 『ここ、いい感じじゃない? ここにしましょう』 夢うつつだった彼は、自分は夢を見ているのだと思った。 しばらくすると、また声がした。 『ちょっと通ります』 寝ている彼の頭の上を何かがスタスタと横切っていく気配がする。 どうにも気になった彼は、のそのそと起き上って部屋の中を調べた。 すると、風呂場の脱衣かごに中で猫が子猫を産んでいた。 彼は、不思議とも思わずに母猫へ話しかける。 『そうか、お前は話せるのか? ここはペット禁止だから、少しならいいけど早く出て行ってくれよな』 彼は、しばらく餌を与えていたが、数日すると猫たちはいなくなっていたという。 |
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怖すぎる実話怪談 結城伸夫 文庫ぎんが堂 沖縄修学旅行の際に九人で撮った写真 |
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逢魔が時物語 結城伸夫 小学館 「遺影」 投稿者 ミッキー(男性・埼玉県) ある日の深夜1時ころ、若手の救急隊員が一人で受け付け勤務をしていたところ 気付かないうちに対応窓口内に一人の老婆が立っていたという。 『こんな夜遅くに何の用でしょうか?』 『**町*丁目のAという家で死人が出る・・・・』 内容が内容だけに、救急隊員は本部へ問い合わせの連絡を入れたが、今のところは どこからも通報は入っていないということだった。 老婆へ厳重注意をしようとしたが、窓口内に老婆の姿はなかった。 すぐに外に飛び出して老婆を探したが、その姿は気配とともにぷっつりと消えていたという。 それから三日後のこと、119番通報があり出動命令がかかった。 『**町*丁目のA宅において、急病人発生』 けたたましいサイレン音とともに救急車が現場に駆けつけた。 三日前に奇妙な体験をした若い救急隊員も同乗していた。 到着してみると、その家のお爺さんが浴槽で溺死していたという。 事件性を考慮して、警察へ連絡の上、警察官の到着を待つことにした。 家の中を何気なく眺めていると、飾られたある遺影を見た瞬間に3日前の記憶が鮮明に 蘇ってきた。それはまさしく、3日前に『死人が出る』と言いに来た老婆だったのだ。 |
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恐怖投稿 逢魔が時物語 呪禁の檻 結城伸夫 新風舎 「神棚」 小学3年生の時のこと。 父が商売を始めるために、神棚を買って来て、一番日当たりの良い 場所に設置した。 その頃、夜中の2時に目が覚めてしまい『眠れない』日が続いた。 そして、昼間は「何ものか」が家を徘徊して、家に居たくない気持ち。 いつから、そういうことになったかを考えると神棚が来てからだった。 日に日にやつれ、目の下にクマを作った娘の訴えを母が父にぶつけた。 『あの神棚、どこかでもらってきたのでしょ?』 『ちがうちがう、ホームセンターで買って来た』 父はホームセンターへ問い合わせに出かけた。 すると、うちにあった神棚は見本で、交換させられたとのこと。 なんでも、神棚を抱えて金を置いて持って来てしまったよう・・・・。 神棚を交換してからは、夜もぐっすり眠れ、徘徊する『何か』も消えた。 |
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恐怖投稿 逢魔が時物語 結城伸夫 新風舎 「任務完了」 この事件は宮城県警の捜査が入ったが、迷宮入りになった事件。 ある夏、高校生3人が夜間の学校のプールで泳ごうとやってきた。 着替えを済ませ泳ぎはじめたが、いやな感じがしたので早めに切り上げ ようと仲間を捜した・・・ が、一人いない。 そこへ、水面にバシャバシャと音をたてて仲間の一人が浮いてきた。 『溺れたか』と、残り二人がプールへ飛び込もうとするが、金縛りに遭い 身体が動かない。 すると、日本兵と思しき大勢がプールを取り囲んできた。 その中の一人が前に進んで・・・ 『任務、遂行いたします』と言うと、溺れた仲間がす~っと水面に沈んだ。 『任務完了いたします』と再度、兵が言うと、 大勢の日本兵と仲間の一人は跡形もなく消えてしまった・・・ |
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恐怖投稿 逢魔が時物語 月蝕の宴 結城伸夫 新風舎 「かごめかごめ」 幼稚園の時に、皆で『か~ごめ、かごめ~』をやって居た時のこと。 『うしろの正面だ~~れ』と歌い、鬼になった女の子が当てようとするが 何回やっても当たらない。 鬼である女の子も、周りの子も飽きてしまい、誰ともなく 『もう、止めようか?』と声がしたので、鬼の女の子は嬉しくなって 目を開けて、周りを見た・・・・ すると、周りには誰もいないのに耳元で 『もう、やめちゃうの?』 という少女の声がした。 |