12.新人の頃
「看護師のりょうくんちゃんの体験談です」

あれは、まだ私が新人看護婦だった頃。
当時は外科病棟に勤めていました。
その日の夜勤で、末期癌の患者様が0時過ぎに息を引き取りました。
私はもちろん、その時に最後のケアをさせていただきました。
そして、その方が霊柩車で家に帰られたのは午前2時過ぎ。
空いた部屋は、あっという間に片付けられ
次に入ってこられる患者様のために、またベットが作られます。
もちろんベットは先ほどまで亡骸が休んでおられたベット。
病院という施設は回転が早く、午前3時過ぎには
新しい患者様が救急車で搬送され、そのベッドに寝かされました。
私はなんとなく、亡骸になられた方の気配を感じながら
新しくこられた患者様の対応に追われていました。
まだまだ、夜も明けず、懐中電灯一つで夜の巡視に行こうと
部屋の入り口の鏡を見ると、先ほど亡くなられた方の顔がはっきりと映っていました。
怖いというよりは、穏やかな表情で。
私は、なにか忘れ物でもしたのかなって考えていました。
2度振り返ってみたけど、2度とも見えてしまいました。
どうか、新しく入院した患者様が、この気配に気づきませんように。
それでも、やっぱり私はドキドキして
夜中にこんなことが起こったと口に出すと、みんな怖がるので
夜が明けるまで黙っていました。
夜が明けて先輩に話してみると、こういうことは良くあることだと聞かされました。
「患者様が亡くなられた部屋では、鏡を見ないように歩くものよ」
と教わりました。
それからというもの、部屋の入り口に設置されている鏡を見ないように
夜勤するようになりました。

やはり、鏡で見た方が霊を見やすい時があるのですね
次へ
戻る
TOP