13.ナースコール
「りょうくんちゃんの体験談です」

こういう経験は、医療者ならよくあるとは思いますが。
私が担当であったT患者様。
この方は、精神疾患で自殺をしようとして、失敗。
脳死状態で搬送され、人工呼吸器をつけている患者様でした。
この方は、目を開いたり閉じたりすることはできましたが
こちらの意思が通じているのかは
まったく確認することはできない状態でした。
人工呼吸器を装着していても、死期はやってきてしまいました。
私は身体をきれいにして、この方の人生はどうだったのか考えていました。
そして遺体は一人、部屋で霊柩車を待っている・・・・
その時、ナースコールがなりました。
私は忙しさのあまり、部屋番号を確認せず『どうされましたか?』と
マイクで問いかけましたが、返事がありません。
部屋番号を確認すると、それはT様の部屋。
念のため、部屋を確認しに行きましたが、やっぱり亡骸しかありませんでした。
それは、それまで1度も彼が押せなかった無念のナースコールだったのでしょうか。

亡くなってから、体が自由に動かせるようになったのでしょうね
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