3.黒い影
これは小学校の修学旅行でのこと。
私たちの泊まったホテルは、日光中善寺湖の湖畔にあって
お世辞にも綺麗とは言えないところでした。
なおかつ、私のグループの部屋は、すす切れた畳敷き、磨りガラスの窓と
およそホテルという名にふさわしくないものでした。
修学旅行と言えば、枕投げとおばけの話・・・。
女子の部屋へ男子みんなで行って、バカ騒ぎをしていました。
深夜に自室へ戻り、「さて寝るか」とみんなが寝静まると・・・・・・
「ガタガタガタガタ」 と建付けの悪い窓の戸が鳴り出したのです。
うるせーなー、と皆が起き出すと鳴りやむ。
また、静かになるとガタガタと鳴る。その繰り返しでした。
風など全く吹いていないというのに。
私、ものは試しと思い、ガタガタ鳴り出すと同時に窓を開けて顔を出しました。
すると、建物の陰へ黒く丸いものが隠れたように見えたのです。
その時は、気のせいだろうと思っていたのですが・・・・
その後、トイレに一人で行って、行き帰りとも誰にも会わずに帰ってきました。
次の朝、隣のクラスの男子に呼び止められました。
「きのうの夜中に一人でトイレに行っただろう」
「うん、行ったよ」
「おまえの後を黒い陰が追いかけて行ったけど、大丈夫だったか?」
「・・・・」
黒い陰を見たのは気のせいではなかったよう・・・・
 
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