いま鉄 OVERSEAS 5
中国河南、火車有情
榮陽 2004.1.12
厳寒の冬と戦う蒸機を求めて、内モンゴルや東北部を旅することが多いが、
訪中回数も二桁となると、違うシチュエーションを求めたくなってきた。
とはいえ、中国全土で無煙化のスピードアップは著しいものがあり、
効率よく撮影できるところは、もはや限られている。
その貴重なエリアのひとつが、河南省の鄭州や洛陽の周辺だ。
前進、建設、上遊がいまだに揃い踏みしており、
ごく最近に新発見されたナローのC2も元気だという。
いつものJL781、NH905で北京に到着、今度は夜行列車で南に進路をとった。
平頂山 2005.4.29
英豪 2005.4.30
石寺 2005.5.1
鄭州の西郊、榮陽にある
河南省建材廠の約8kmの専用線は、
最近では「レンガ工場」などと呼ばれ、
C2の活躍する場所の一つとして
知られるようになった。
レンガの材料となる土を運ぶC2が
美しいアーチ橋を渡るシーンが秀逸だ。
現役のC2は、他よりは綺麗に整備された印象。機務段には、
廃車のC2が2輌、放置されていた。
鄭州の食堂で朝食を。イスラムの影響を受けたターメリックのスープがユニーク。
採土場へ向かう空車編成は、逆向牽引となる。
冬の澄み切った青空、アーチ橋を渡るシルエットに遊子哀しむ。。。
今度は鄭州から南へ130km、平頂山鉱務局専用線へ。
イマドキの中国で、前進、建設、上遊の3形式が健在という、
貴重なところ。沿線は、よくある炭鉱街の風景が続くが、
人々の活気があらゆるところに感じられ、その中を走る
蒸機たちも、生き生きとした表情をふりまいている。
少し前まで、中国のどこにでも、この活気があったのだろう。
そして、30年前の筑豊にも、夕張にも……。
上遊の牽く客車列車が発着する平頂山中心駅。賑やかな露店が並ぶ。
大きなヤードを持つ田庄駅。建設が入換に励み、デフなしの前進も見かけた。
河南は麺類が充実。この刀削麺は脂がキツかったが(笑)
古都洛陽から車で3時間、
昨年、日本のファンに新発見された
ここ英豪煤鉱鉄路は、6kmの本線に
二つの支線を持つC2天国の炭鉱線。
ボックス状の二つ目がいかめしいが、
ときには重連となって、炭鉱から
ピストン運転で分岐駅の向陽へ向かう
C2の飾らない姿は、すっかり河南の
風景に溶け込んでいて、魅力的だ。
訪れたのは、春なのに真夏のような日。
煙のいい季節に、ぜひ再訪したい。
炭鉱から向陽へピストン輸送するC2。
いきなり重連の登場にビックリ。
ちょっと丘に登ると、そこはもう模型のジオラマ。
トラックもけっこう通る…ン、C2の将来は…。
機務段兼工場には、多くの廃車体が放置されていた。部品取りに使ったのか。撮影中はいつも、すぐ子供たちが駆け寄ってきた。
どういうわけか、石炭をふるいにかけながらテンダに積み込む。
珍しいシーンに、シャッターを乱れ切りしてしまった。
デルタ線を使って、本線は往復とも正向き。空車が軽やかに駆け下りてゆく。
翌日は同じ洛陽の郊外、
義馬鉱務局の露天掘りを撮影に
向かったところ、運休……。
聞くと、同じ鉱務局の管轄の
石寺専用線に前進が稼動とか。
まったく事前知識なく訪れたが、
ここには何と、4軸テンダの
若番の前進が健在!
プッシュプルの長大編成もあり、
意外な収穫に小躍りした。
ローカルに人知れず生息する
蒸機の息吹が、陽炎に揺れる。
ここも、煙のある季節なら
迫力あるシーンが…と思うが、
こういうところは、消えるときも
きっと人知れず、いつのまにか、
なんだろうな。
宿泊した縄池のホテルではメーデーの国旗掲揚が。
機務段には前進2878、2858の2輌が錆び付いていた。右写真は有火の4軸テンダ、前進3318。なんだか長めに感じる。
前進3318、7204の2輌が重単で出区し、
長い貨車編成を牽いて戻ってきた。
編成全体を捉えるポイントがなく残念!
2004-2005
中国・河南省――そこには、峠に挑む勇ましい咆哮もなく、
突き刺すような冷気も、爽やかな高原の風もない。
むしろ、土と埃と、靄と陽炎が、残された蒸機たちを、
この地方特有のフィルターで包んでいるようだった。
しかし、彼らの姿は、煙がなくとも、ごくさりげなく
風景に溶け込んでいて、中国の奥深さを知った思いがする。
中国に蒸機を追って、旅を続ける楽しさも。
残された日々、また違う方向に、進路をとってみよう。