ハーフサイズで遠出編 3
総天然色の奈良――1969.11
大阪に住む同年代の友人が、奈良と竜華の古い写真をUPしたと、知らせてくれた。
早速、彼のサイトを覗かせてもらうと、奈良に行った秋の日、竜華に行った春の日の、
あの空気、あの匂いが甦ってきて、中学生の頃へ、小旅行をしているような気分になった。

撮影年月を見ると、1969年……あ、なんや、両方ともおんなじ年やんか!
竜華はすでに自分のサイトでもUPしていたが、
奈良は、すべてネガカラーで撮影していたので、ちょっと構成に迷って、
だいぶ前にスキャンしたが、パソコンの中に埋もれたままになっていた。

1969年11月7日。
たしか、鉄道友の会の見学会に、参加させてもらったと記憶する。
扇形庫に秋の日差しが優しかったのが、つい昨日のように思い出される。

まだ関西本線に「柳生号」や「伊賀号」などのイベント列車が走る前、
あれはあれで懐かしいけれど、D51のデフにいろんな装飾が付く前の頃だ。
カマたちがみんな、あるがままの、いい顔をしているのを実感する。

秋の日は短いけれど、カマや線路に差す色は、やはり一年で最も美しい。
昔年のフジカラーN100に、またまた感謝せずにはいられない。

京都から奈良線のDCで奈良に着くと、キハユニ16(?)の出迎えを受けた。まるで古いピクトリアルの写真のようだ(笑)
運転所へ向かう通路から、心はやりながらの一枚。カマから、建物から、どこからも、煙が立ち上っていた。
コンクリート造りの扇形庫は、堂々とした雰囲気。梅小路よりは、番線がいくつか少ないか…。
この時代は、大きな機関区には、必ず検査中のカマを見かけた。
この日は、C58、D51の2輌が分解検査中。
あの頃はいつも、車両配置表を眺めながら、
そうか、このクラの構内入換には、C11がいるのか、
C12がいるけど、何線に使ってるんだろう、
このハチロクはどこの駅の入換用……と、
行ったことのない機関区の風景に
思いを馳せていたものだ。

実際、そのクラへ行くことが叶うと、
ああ、こいつが例の入換機か、と納得できて
そのクラの代表機種を撮るのとは別の、
独特の嬉しさがあったよなあ。
ここ奈良にも、構内入換用のC12や、
木津駅入換のハチロク、片町線用のC11がいた。
言うまでもなく、この時代の奈良運転所は、関西本線のD51、奈良、桜井線にも入るC58の多数配置される天鉄局の要衝。上写真のD51211は、たしか鷹取製D51のトップ機で、この後、形式ナンバーに付け換えられててミステリー列車を牽引、現在も神戸に保存されている。
国鉄末期からJR初期、
知らず知らずのうちに、
蒸機時代の古いクラは
次々と取り壊されていった。

いま、いくつの扇形庫が
日本に残っているのだろう。
梅小路、会津若松、豊後森…。
いずれにせよ保存か廃墟か。

想い出のクラはみんな更地に
なってしまったけれど、
35年前の同じ時期に、
同じ足どりで奈良や竜華を
訪ねたであろう畏友と、
いまは、大陸に煙をめざす。
嗚呼、この趣味の
素晴らしき奥深さと、業の深さよ!
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