いま鉄 OVERSEAS 3
中国軽便鉄路三景 2003
30数年前に、どこかで見たような、懐かしい風景。
中学生の自分が、日本のどこかで、カメラ片手に見たものもあれば、
羨望の眼差しで眺めた、雑誌の写真の中にあった風景もある。
あるいは、その、どちらでもあるような、心地よい空気感……。
2003年、中国への旅は、本線の咆哮を離れ、
ナローゲージの細道へ分け入ることになった。
2月、廃止直前の葦河。11月、芭石、そして樺南。
急激な変化が続く、21世紀の中国で、奇跡のような風景のなか、
小さなC2の煙がたなびき、懸命なブラストが響いていた。
2.11 葦河
11.2 芭溝
11.23 立新
葦河
2003.2.10〜11
芭石
2003.11.2〜3
樺南
2003.11.22〜23
2.10 平林
瀋陽から夜行列車で葦河に着く。
中国最後の、蒸気森林鉄道には
既に客車列車の運行はなかったが、
山からの運材列車が活発に動いていた
夕暮れの峠へ向かう運材の、
C2の煙とスチームが、
日没直前の夕陽に光る。
2.10 東風−双峰
東風を出た頃、まだ稜線の上にあった太陽は、サミットが近づくと、すっかり暮れなずむ。ナローとは思えない力闘が続く。
2.10 東風−双峰
翌朝、雪晴れの峠に挑む運材列車。後補機が付くことも多かったという。
2.11 双峰−平林
峠の麓の駅、平林で小休止し、レールバスと交換する、空車牽引のC2。給水を終えたC2が、のんびりと発車していく。
2.10 平林
保線作業終了。ちょっと安堵感の漂う昼下がり。
2.10 平林
夜の機務段。暗い庫内で、懸命の修理が行われる。
2.10 葦河
ヤードの照明に、庫内のわずかな光に、C2のシルエットが浮かび上がる。客車列車廃止、さらに、翌朝の運材を牽くカマがすでに出区したのか、賑わいはない……。
2.10 葦河
まだ空けやらぬ頃、山から下りてきた運材列車が葦河へ向かう。
2.11 五里地
小さな街の家並みを縫うように走る。客車だったら、もっといい雰囲気?!
2.11 珍珠
このわずか1か月後に、
葦河森林鉄道は廃止された。
最初で最後の訪問……。
わかっていても、客車運行に
間に合わなかったのが悔しい。
2.10 平林
2.11 珍珠
11.2 焦倶
四川省成都から車で2時間、
昨年の暮れあたりから話題の、
現代の奇跡のような軽便鉄道。
5月の訪中時に行く予定だったが、
非典流行で断念。夏が過ぎれば、
今度は廃止の噂がかまびすしい。
オレだけは雰囲気に騙されないぞ!
と思って、いよいよ向かった11月。
ハイ、騙されました。
桃源郷、原風景、嗚呼!
11.3 蜜蜂岩
芭石の一日は、朝5時の石渓(終点駅)から始まる。すでに商店は店を開け、乗客を迎える。 11.2
石渓
1時間少しで、混合列車は、炭鉱のある黄村(始発駅)に到着する。正向きで到着したC2が、逆機となって編成後部に連結される。物を運び、物を売る人々の生活がここにある。道路のないここでは、鉄道か自分しか、輸送手段はないのだ。
11.2 黄村
始発駅の炭鉱にある、この世のものと思えない人車軌道。ここだけでなく、他にもあるという話も?! 11.2
何にもたとえられない、この客車。あんまりだ!
11.2 焦倶
この人たちは? 暇な地元民?混合の到着を待つ乗客?
11.3 蜜蜂岩
晴れることがほとんどない、というのが、この桃源郷のつらいところ。あと、煙が出ないのも…。
11.2 仙人卿−焦倶
この日の焦倶駅では、定期の混合と、別ツアーのチャーター列車の交換を見ることが出来た。南の地方らしい建物をバックに大きくカーブした、いい雰囲気。
11.2 焦倶
途中の蜜蜂岩で、列車はスイッチバックし、C2の向きも変わる。駅と、取り巻く商店は地元の人々の集会所で、子供たちが賑やかに走り回っている。
11.3 蜜蜂岩
11.3 蜜蜂岩
とりあえず年内は、いや春まで、
と、噂は相変わらず不確定だ。
いずれにせよ、鉄道しか輸送の
手段がないという状態は、
そう長く続くとは思えない。
もう一度。
今度は騙されないぞ!?
11.22 樺南
こちらも客車列車は消え、
なかなか現況の知らせも少ない
樺南で、チャーターを含むツアーが
あると聞き、思わず参加することに。
本来は森林鉄道だが、
現在は運材はめったになく、
炭鉱からの貨物輸送が目的だとか。
11月下旬の黒竜江は、すっかり冬。
「熱水仕様」に着がえて降り立つ。
11.23 樺南
貨物列車の最後尾にレールバスを連結したチャーター列車を、タクシーに分乗してフォトラン。樺南から、途中の下樺までは、平原が続く。
11.23 樺南−下樺
下樺駅で給水するC2。芭石とは、打って変わった雪晴れ。C2の表情もまったく違う。
11.23 下樺
サミットを越えた立新には、峠越えの補機が待機している。煉瓦作りの施設の醸し出す雰囲気も、まるで昔の北海道のどこかのようだ。
11.22 立新
彼方には、苫小牧のコンビナート、とは友人の言。
11.23 樺南−下樺
立新で、後補機を連結し、峠へ向けてダッシュする。
11.22 立新−上樺
森の中の小さな築堤に、スポットが当たる。峠の逆方向からは、プッシュプルが力強く登ってくる。常紋、狩勝、上興部……。さまざまな昔の名所にたとえ、語り合うのも楽しい。
11.23 下樺−立新
後補機は、峠のサミットで走行解放されて、立新に戻ってくる。こんな光景も、デジャ・ヴな感じ。
11.22 下樺−立新
立新に進入する、炭鉱からの貨物。ふぞろいの貨車編成も、なかなか愛嬌がある。
11.23 立新
11.23 樺南
11.23 樺南−下樺
前進にすっかり背を向けた、
というわけではないが、
2003年、C2以外に撮った中国蒸機は、
葦河のついでの鉄法のみ……。
いつかどこかで見た風景を探すのに、
ナローほど楽しいものはない!