いま鉄 OVERSEAS 1
甘河への旅
2002.5.1〜5
99年冬の包神鉄路以来、5度目の訪中で、いよいよナローゲージ、それも未開放地区という、きわめて奥深い世界に足を踏み入れることとなった。本線の大型機と同様、いまや風前の灯火といわれる、中国の森林鉄道。内モンゴル自治区でも、黒龍江省寄りの森林地帯に属する甘河(ガンホー)も、6月には廃線の計画とか。つい最近まで撮影すること自体が困難をきわめたと聞く。まさに、最初で最後の撮影と思うと、何でもない情景のひとつひとつがいとおしい。辺境の森林鉄道の最後の日々に、出会えた幸運に、感謝。

2002.5.3 甘河
おなじみの(?)中国北方航空で新潟からハルピンへ。甘河への玄関となる加格達奇(ジャガタチ)まで、夜行列車で11時間だ
5.1 ハルピン
6時59分、加格達奇に到着。東京駅や上野駅で見られなくなった夜行列車の朝の風景が中国にはある。
5.2 加格達奇
車で2時間ほどで、甘河に着く。専用線の始発駅のそばにある、甘河林業公司の事務所の門構え。
5.2 甘河
始発駅の甘河は意外と新しい駅舎がラブリー(笑)。カブースと呼ばれる控車も、見てるだけでも愛らしい。これは、他の専用線では見られないタイプのものらしく、ツアーをご一緒した中国鉄の先輩も、早くも興奮の面持ち。
5.2 甘河
初日は、旅客列車は残念ながらウヤ。支線の分岐駅となる奇力浜へ向かい、山から下りてくる運材列車を捉えることができた。機次には奇種のモーターカー?と思いきや、ただの(!?)中古トラック。にしても、ユニークな編成で笑ってしまう。カマのサイドビューにも木材が積まれている。途中駅の庫爾浜は、いかにも森林鉄道という雰囲気。気温が上がって、煙を吐かないのが残念!

5.2 庫爾浜
奇力浜から庫爾浜の先までは、道路が並行する。どこへ行っても、追いつ追われつ……(笑)どこでも、まあまあ普通に撮れるが、あまり変化がない感じ。だが、先輩方の話では、森林鉄道で、ここまで引きが撮れるのはなかなか珍しいとか。
5.2 奇力浜−庫爾浜
翌朝は、まず機務段へ。朝の光が射し込む中、旅客列車の牽引に向かうC2の仕業点検が続く。こんな小さな機務段も、初めての経験で、ついつい予定枚数を大幅オーバー。煉瓦造りのクラ、木造の古びた建物、30年前の日本もそうでしたなあ。。。
5.3 甘河
幸運なことに、翌日は旅客列車の運転があるという。例のカブース(控車)の付いた、写欲をそそられる編成だ。朝の機務段から始まって、奇力浜までの区間で走行撮影し、その先は乗車できれば……という計画だったが、残念ながら乗車は許可されず。我々の行程には、すべて林業局公安が付き添っており、まだまだ思い通りにならない部分も。ここは未開放地区であることを実感する。朝の機務段に次ぐ、貴重な晴れ間に捉えたC2のサイドビュー。

5.3 奇力浜−庫爾浜
甘河のホテルでの朝食バイキング。よくある粥&饅頭の組み合わせ。朝食が終わる頃、現地旅遊局の愛称(我々の付けた)「ケバねえちゃん」がやってくる。
5.3
甘河専用線最大のハイライトが、このアーチ橋。5月というのに、川面はまだ凍っている。もう少し陽が当たってくれると最高だったのだが……。
5.3 甘河−伊斯渾
ここまで来て、撮りも撮ったり、シチサン写真。白樺林をバックに、まさに森のおとぎ話の鉄道、というイメージだが、まぎれもない現役!
5.3 伊斯渾−庫爾浜
カブースは甘河の人々の展望車状態?! 山から下りてきた列車では、ちゃんと編成最後部に付け替えられていた。
5.3 庫爾浜
列車がやって来る頃、出迎えにしてはやけにたくさんの人たちが駅に集まってくると思ったら、停車時間に、列車でやってきた行商の人たちが市を開くからだった。もちろん、30年前の日本でも見たことがない、鉄道と生活の原風景。これがあるから、海外ローカル鉄はやめられないのだろう。C2はいったん編成から切り離され、行く手に備えて、給水に向かう。

5.3 奇力浜
給水と点検を終えたC2は、再びカブース付きの客車編成に連結され、奥地へと向かう。列車が出て行くと行商の市は終わり、人々も三々五々散っていく。
5.3 奇力浜
2時間後、列車が山から帰ってきた。線路脇の小屋から人が出てきたと思ったら、停止位置を指示する駅員だった。
5.3 奇力浜
旅客列車は基本的に隔日の運転と聞くが、中国も5月初めは休日が続き、たまたま運転日に重なったのはいかにもラッキー。
5.3 庫爾浜
右上のシチサン写真を撮ろうと構えていると、列車から降りた人が自転車に乗り、C2より先行してこちらに向かってきた。いつもなら、「まいったなあ、自転車とかぶっちゃって…」だが、ここでは、フレーミングを変えて、フォーカス・イン!年配の人だったらもっとよかったのに…とは、叶わぬたわ言。

5.3 庫爾浜
ハルピン行きの夜行に乗るべく、加格達奇に戻る。機務段には、無煙化の初期を担ったDLが静態保存されていた。SL末期というより、いつしか、もうそういう時代なのだ。トワイライトゾーン系の倉庫は、中国ではよく見られる光景。踏切のおばさん(失礼!)も、今なお現役だ。
5.4 加格達奇
中国東北部ではおなじみ、トマトと卵の炒め物。なぜか、東京ではめったに出会わない。加格達奇のレストランでは、女の子に「日本人が店に来たのは初めて」と驚かれた。
ハルピンへ戻る、夜行列車の朝。左2枚は、ハルピンの一つ手前の停車駅の風景を、軟臥の車窓から。ハルピン駅に着くと、さすがに人々の表情にも都会の雰囲気が漂っている。再見!
5.5
3日目、途中駅までの工事列車が、甘河での最後のショットとなった。
アーチ橋手前の築堤を、C2が空車を引いて、のどかに登ってゆく。
わずかな期間だったが、この森林鉄道の最後の日々の、素晴らしい風景の数々に触れることができた。

5.4 甘河−伊斯渾