
2004年10月上旬。我が家に、待望のビッグニュースが飛び込んでまいりました。
結婚11年目にして、どうやら妊娠したようです。ぎりぎり30代での妊娠は、夫婦してほとんど諦めかけていた、7回目の人工授精でした。
実は、医師からの勧めもあり翌月は「体外受精」に挑戦することになっていました。だから、もう全くと言っていいほど、今回は期待すらしていませんでした。
〜machoponの場合〜
《妊娠発覚前》
@ まずは、普通の生理前と全く同じ。これにつきます。生理予定日の数日前から、腰痛といや〜な感じの腹痛。もう、完全に今月も撃沈!だと思ってました。
A 不思議な肩こり。正直四十肩だと思って、凹みかけてました。右の肩甲骨の辺りから、段々と痛みが広がり、やがて手の方まで広がり腕を上げるのもツライ状態に…。
B 不気味な歯痛。下の前歯、かなりな知覚過敏になりました。
言わずと知れた、妊娠初期には避けては通れない試練。でも実際は、ほとんど症状のない人から入院する人まで、程度や症状は様々なようです。私は、6〜7週目頃から徐々に始まり14〜15週目頃まで続きました。
つわりって、朝がツライと思ってたけど、いろんなパターンがあるみたいです。朝型、一日型、不規則型…そして私は午後から夜がキツイタイプでした。ほんと、朝は元気だったのに夕方には別人みたいでした。
〜machoponの場合〜
@ ムカムカ気持ち悪い。私の場合、どんなに気持ち悪くても、なかなか吐けませんでした。出せたら楽になれるのに…そう思うとほんとキツかったよ〜。結局、実際に吐いたのは5〜6回くらいかな?
A 食べ物の好みが変わる。というか、日に日に食べられる物がなくなっていくんです。昨日は美味しかったものが、今日は突然ダメになるという感じです。あの頃の私には食べ物とは(一部の例外を除いて)「気持ち悪くて全く受け付けないもの」と「食べられるけど、その後必ず気持ち悪くなるもの」の2種類しか存在しませんでした。で、つわりの一番きつかった頃、私の命をつないでいたのは、リンゴ(特に王林という青リンゴ)、トマト、そしてなぜかジャガイモ(中でもポテトサラダは10年分くらい食べた)でした。でも、これって意外とスタンダードみたいです。ちなみに、ジャガイモにはまる妊婦の場合、ほとんどが男の子を出産しているとか…、我が家も当たってました。つわりといえば、柑橘類や梅干を連想しがちですが、実際のところそれらよりもトマトの方が人気みたいです。意外…。
B 匂いに敏感。とにかく、いろんな匂いがダメでした。中でもにんにく、お酒(そのものというより、飲んだ人の呼気)、生ごみ、肉魚のにおい、タバコの煙の匂い、タバコを吸う人の呼気…これらは最悪でした。その頃、macpくんが飲んで帰ったり、にんにくの入った料理を食べて帰ったりするとたまらずマスクをして寝てました。
C 湯気、煙が気持ち悪い。ご飯が炊ける時の湯気や、煮物、果てはお風呂まで、とにかく湯気は気持ち悪かった〜。お風呂に入りながら何度、「気持ち悪い〜」とつぶやいたことか…。また、魚や焼き鳥を焼く煙、うなぎを焼く匂い。いつもなら食欲を誘うはずの煙が気持ち悪いのです。近所の商店街に焼き鳥屋さんがあって、もうそこを通る時は最悪でした。もちろん、焼肉なんてもってのほかです。
D 不思議な肩こり・不気味な歯痛・胃痛。実はこれ、つわりの症状だったのです。先生に聞いたところ、つわりの時は自律神経失調症みたいな症状が出るのだそうです。確かに、つわりがなくなったら、いつの間にか症状も消えてました。それにしても、あの肩こりは不思議でした。午後3時頃になると、毎日決まって同じ場所が凝りはじめ、それを合図に一連のつわり症状が出始め、寝込んでしまう。そんな毎日の繰り返しでした。おかげでお昼過ぎ頃までは元気なので、洗濯や掃除や近所へ買い物くらいはフツーにできましたが、夕食の準備ができず、macpくんに作ってもらったり、惣菜や弁当を買ってきてもらったりして乗り切りました。
私は、不妊治療専門の病院で治療を受けていたので、妊娠が確定(胎嚢、胎芽、心拍が確認された時)すると、必然的に転院しなければなりません。もちろん、先生は紹介状を書いてくれます。で、以前やはり不妊治療でかかった近所の総合病院にしようかとも思いましたが、やっとできた子供だし最初で最後の大イベントになりそうなので、もっと色々調べて決めることにしました。先生からは、「高齢だし、筋腫もあるし大きな病院が安心でしょう。」と言われました。
ま、そんなわけで夫婦で色々考えたり調べたりした挙句、広尾の「愛育病院」に決めました。巷では山王病院・聖路加病院と並んで三大ブランド病院という人もいるようですが、想像していたよりアットホームです。NICUもあるし、分娩室は全室LDR(陣痛・分娩・回復が同じ部屋ででき、終始ダンナ様とも過ごせます)です。また、場所柄、高齢出産も多くて何となく安心かな…というのも決め手です。
所要時間は車で40分、電車だと乗り換え2回と歩きで1時間。「遠くて心配じゃない?」と言う人もいましたが、まあ、田舎に行けば通院に車で1時間以上なんてザラだし、病院に確認したところ、通院1時間以内なら問題ないとのことでした。さらに、「病院選びに際しては、本人の考え方によって違うので、中には2時間かけて通ってくる人もいますよ。」とも…。
どこに重きをおくか(利便性、規模、費用、設備などなど)は人それぞれ、何よりもお産は病気じゃないからこそ、納得のできるところを選びたいと思いました。
これも、人によって考え方は様々です。正解はありません。ただ、自分が不妊治療というものを体験してみて、多くのことを学び、また今までと違った面からこのことを考えることにもなりました。macpくんも比較的協力的だったし、彼なりに得た知識や経験もあると思います。少なくとも、私たち夫婦にとってこの体験は、「人生の厚み」という点では、大いにプラスになりました。
世間では「産む側のエゴ」だの「神への冒涜」だのと言う人もいますが、実際は不妊治療について無知であったり、間違った情報で誤解していたりすることで偏見をもつ人が多いようです。色んな考え方があっていいとは思いますが、もっと多くの人に正しい知識と理解を持ってもらいたいと実感しました。
そして、経験して初めて思いました。不妊治療というのは決して不自然ではないと…。女性に排卵があり子宮も機能していて、男性にも受精可能な精子があれば、妊娠することは当たり前。つまり、その当たり前ができないなら、治療をすることの方が自然であり、何が何でも自然妊娠にこだわり続けるほうが、私から見れば不自然です(もちろん価値観の違いですが)。
《私の考える不妊治療の領域》〜あくまでも私論です。〜
夫婦の精子と卵子を使って妻の子宮内で妊娠できることが、絶対条件だと考えます。つまり、第三者の精子や卵子提供を受けたり子宮を借りての妊娠出産は、「生殖医療」という大きな枠の中では同じですが、「不妊治療」ではないと思うのです。もちろん、どうしても子を持ちたいと思う人がいて、そのための技術も存在しているわけですから、犯罪にならない以上、望むことも実際にそのような治療を受けることも個人の自由だし、否定も非難もする立場ではありません。が、しかし通常の不妊治療とは切り離して考えるべきだと思います。
《私の不妊治療体験》
@ 卵管造影検査。初歩的な検査のひとつですが、かなりな苦痛を伴います(でも、これって実は医師の技術によっても差が大きいみたいです)。検査は、造影剤を卵管に注入し卵管が通っているかどうかを調べるものです。で、詰まっている人はかなり痛いそうです。私は2度受けましたが、最初の病院では詰まってもないのに、痛み、ゲロ、意識朦朧&点滴で地獄を見ました。でも、2度目は専門病院なので先生の腕がいいせいか、楽にあっという間に終わりました。ちなみに、この検査をすることで卵管の通りがよくなり、その後5〜6ヶ月ほどは妊娠しやすくなるそうです。
A 精子の検査。文字通り、ご主人の精子を病院または自宅で採取し、異常がないかを調べるものです。ここで何らかの原因が見つかれば、ご主人の治療が始まります。最近は、「男性不妊科」のを持つ病院も増えました。私の通っていた病院でも、週に1日専門医による診療が行われていました。ちなみに、macpくんは運動率が少し低めなものの、治療が必要なほどではなく特に異常なしでした。
B 血液検査。基本的な検査に加え、HIV感染の有無、ホルモン値などについて調べました。私は、異常と言えるほどではありませんが、黄体ホルモンの値がほんの少し低めでした。なので、高温期には「ルトラール」という薬を処方されました。
C 内診。子宮や卵巣に異常がないか調べます。私の場合、ごく小さな子宮筋腫が見つかりましたが、不妊の原因になるようなものではなく、まして、妊娠・出産にも特にに支障がないことがわかりました。
D タイミング法。特にこれといった原因が見つからない場合、まずはここからスタートします。といっても、身構えるほどの治療ではありません。健康保険も適用されます。基礎体温表や、排卵日近くの内診による卵胞チェックにより、排卵日をキャッチして「今日、夫婦生活をしてください」とか「○○日ごろ、チャンスを持ってください」などと、医師から指示されるだけです。最初は、こっ恥ずかしいけど数ヶ月続くと、そんな会話も慣れっこにになりました。そうそう、私の場合低温期が長く排卵まで時間がかかりすぎるので、生理周期を整えるためにかなり初期の頃から、「クロミッド」という排卵誘発剤を処方されました。排卵誘発剤=多胎とか奇形児なんて発想する人もいますが、1錠×5日間というスタンダードな服用では、そのような心配はほとんどありません。但し、頸管粘液が減少して妊娠しずらくなったり、頭痛・吐き気など人によって副作用が出ることもあるので、医師の指示に従う必要があります。私の場合、服用期間中は頭痛に悩まされましたが、生理周期が人並みの29日になりました。これって、35日〜40日周期の私にとっては、単純に妊娠のチャンスが増えることになるのです。
E フーナー(ヒューナー)テスト。これ、かなり抵抗があるんですよね…。でも、大切な検査です。医師から「夫婦生活をしてください」と指示された翌日または当日に、精子がきちんと子宮管で生きているかを調べるものです。この検査で精子が見つからない場合、女性側に精子を受け付けない「抗体」がある可能性があります。でも、その時のコンディションやタイミングによっても結果は変わってくるので、数回検査する必要があります。
F 人工授精。ここからは、自費になります。病院によってまちまちですが、8千円〜2万円くらいが相場のようです。精子を処理したあと(これにより、やや運動率がアップします)子宮の中に直接注入する方法です。子宮頚管を通らなくてすむので、頚管粘液の少ない人や、精子の数や運動率がやや低くても、妊娠しやすくなります。とはいえ、成功率は10%程度です。過度の期待は禁物…。また、「人工」とついているので、「不自然」とか「人工的」というイメージで抵抗のある人も多いようですが、百聞は一見にしかず、言葉のイメージよりもかなり自然に近い治療法で、かなり以前から行われていたようです。ちなみに、AIHとは「配偶者間の人工授精」で、AIDとは「(第三者の精子提供による)非配偶者間の人工授精」のことです。AIHについては特に問題はないのですが、AIDについては多くの問題を含んでおり、病院によって行うところと行わないところとあるようです。
G HMG。ヒュメゴンという排卵誘発の注射です。俗に、「排卵誘発剤を使うと多胎になる」と言われるのは、この注射を使った場合です。クロミッドなどの内服薬の場合は、脳に働きかけて排卵そのものを確実に起こすことが主作用です。つまり、1日1錠×5日というスタンダードな服用の場合、通常排卵される卵子は1つなので、多胎、しかも四つ子や五つ子などは、まず考えられません。HMGの場合は、排卵される卵子そのものの数を増やすので、妊娠の確率も上がる代わりに、多胎になりやすいというデメリットもあります。ただし、これも医師が治療に応じて、量を調節するので、そうそう簡単に三つ子以上にはなりません。その後、確実に排卵させるためにHCGという注射を組み合わせることも多いようですが、私はしませんでした。
H 体外受精。顕微授精。私たちは医師の勧めもあり体外受精に向けて準備を始めようとしていましたが、結局7回目のAIHで妊娠したので、実際には経験しませんでした。どちらも、精子と卵子を取り出して体外で受精させ、受精卵がある程度分割した段階で胚を移植するものです。特に顕微授精は、細い針のようなもので卵子の中に直接一匹の精子を注入して受精させます。なので、受精の確率は数段にアップしますが、高度な技術と高額な費用がかかります。体外受精・顕微授精は、かなり頻繁に通院が必要であり、また女性にとってはかなりの苦痛を伴う治療なので、毎月行うことはできないようです。東京都でも、年間2回までで1回につき10万円を限度に助成金が出ることになったようです。でも、所得制限があり確か「世帯年収で650万円以下(税込みだと800万ちょっとくらいかな?)」だったと思います。ん〜、治療費用捻出のために共働きしている夫婦にとっては、納得いかないですよね…。我が家も幸か不幸か、macpくんの年収が軽く制限を超えてるので、当然もらえません。ってか、そもそもその年収の夫婦が体外受精や顕微授精を行うには、かなり無理があるのでは…?と疑問に思ったりします。
以上が、私の経験(または、予定していた)治療と検査です。最初にも述べましたが、不妊治療については少しずつ理解されつつあるものの、まだまだ偏見や無知が多いのが現状です。もちろん、正しく理解したうえで否定されるのは、個人の考え方の自由です。でも言葉のイメージだけで、「不妊治療」=「自然に反する行為」とか「神への冒涜」(そもそもそんなに信心深いのかって思うけど)、などと言われるのは気分が悪いですね。で、最後にこれだけは書き添えておきます。「生殖医療」がこれだけ発達した現在でも、医学の力で行えるのは「受精卵を子宮に戻すところまで」です。つまり、人工授精だろうが体外受精だろうが、第三者からの卵子や精子提供や代理母であっても、受精卵が子宮の中に正常に着床して妊娠が成立するのは、人間の手ではどうにもできないのです。それこそ、神のみぞ知る…なのです。そう思えば、何をもって「自然」というのか、その考え方そのものを考え直してみてもいいのではないでしょうか。
不妊治療〜妊娠発覚&つわりまで
これもまた、世間では賛否両論ある検査です。医師や病院のスタンスによって、対応が大きく違うようです。
ちなみに愛育病院では、年齢・国籍・初産婦・経産婦などなどに関わらず、全員に羊水検査の説明をしています。もちろん、受けなさいとも受けるべきではないとも言われません。ただ、「ご夫婦それぞれの置かれている状況や、考え方は千差万別です。何が正しくて何が間違っているのか、ということは人によって違います。周りの意見に惑わされることなく、ご夫婦でじっくり相談して決めてくださいね。」と言われました。(そのことだけをとっても、私はいい病院を選んだなって思いました。)
病院によっては、あからさまにいやな顔をする医師がいたり、妊婦さんから訊かない限り説明しない病院もあるようです。また、「検査の結果が陽性の場合は殺すのか?」と非難する人も多くいます。理想論を振りかざし、非難することは簡単です。でも、現実に育てるのは夫婦です。だからこそ責任もあると思うのです。特に、不妊治療までして妊娠した子供…、「だからこそ何があっても受け入れる」という考え方もありますが、「だからこそなおさら、私たちの責任は重い」という考え方もあります。私達は後者の考え方から、検査を受けることにしました。
日本の福祉政策は進んできて、障害者の進学や社会進出も昔に比べればしやすくなったかもしれません。しかしながら、その多くは身体障害者であり、知的障害者や精神障害者にとってはなかなか社会進出が難しそうです。高齢で出産する私達は、間違いなく子供残して亡くなります。そうなると、子供にとっても不幸だし、身近な人達にも迷惑をかける結果になるかもしれない…、そう思いました。
もちろん、羊水検査でわかるのは、染色体の異常だけです。その他の異常や、生まれてみて初めてわかる異常、後天的な異常だってあることは充分承知です。
検査そのものは、それほど難しいものではありません。医師がモニターで胎児の位置を確認しながら、傷つけないように穿刺して羊水を抜きます。痛みはそれほどでもありませんが、長い針をブスっと垂直に刺されるので、かなり衝撃的でした。その後、羊水はアメリカに送られ検査に回されます。
検査後は2時間安静。その後、異常がなければ帰宅し、3日間抗生物質とウテメリンという張り止めの薬を服用して様子をみます。まれに、感染症などで流産を起こす危険があるためです。その確率は300分の1程度と言われています。それに対して、染色体異常がある確率は年齢と共に上昇し、35歳で300分の1といわれています。つまり、34歳以下だと陽性の確率よりも流産の確率の方が高くなってしまうことなどから、一般に35歳以上の妊婦さんが受けることが多くなるのです。
結果は通常法だと2週間、FISH法だと1週間で出ます。たまたま、年末に受けたため年末年始の休診日と重なるので、私達はFISH法をお願いして、年内にスッキリすることにしました。費用は、通常法で12万円、FISH法で14万円でした。これを高いと見るか安いと見るか…それも考え方の相違ですね。
しかし、決意して受けた検査も、待っている間は2人で随分悩みました。最初は、陽性なら今回は縁がなかったと諦めようと思っていたのですが、もしも、染色体異常でも比較的軽いダウン症でしかも合併症がないなら、私たちの努力次第で子供の可能性を伸ばせるんじゃないか…、超音波に映る元気なわが子を見てしまうと、とても殺せない…そんな思いに駆られました。幸いなことに、結果は異常なし。大きな大きなハードルをやっと一つ乗り越えた、そんな気分でした。
結果を聞きに言ったとき、医師から「あなたと同じ年の妊婦さんが、その方は外国の方なんですけどね、つい最近陽性の結果が出てしまったんです。でも、ダウン症だったけど幸い合併症もないし、今の医学だとそこそこ長生きもできるので生みます、という選択をしたんですよ。以前は、陽性の場合ほぼ100%中絶だったけれど、最近は色々な考え方があって、生む選択をする人も増えてきましたよ。」という話を聞きました。確かに、流産の危険などもあるので、受けたほうがいいとはいわないけれど、「安心するため」だけでなく、結果に関わらず「心の準備をするため」に検査を受ける、という考え方もありなのかもしれません。