食料事情が悪かった時代、寄生虫による健康被害を起こす人が多かったのですが、生活レベルの向上で激減しました。
しかし、日本人は昔から生食の習慣があり、昨今のグルメ嗜好で何でも生食とする風潮から、寄生虫に感染する機会が増えてきました。
また、輸入食品の増加、海外旅行により他国から持ち込まれるケースも増えてきています。
魚介類の寄生虫にはどんなものがあるのかを簡単に紹介します。
体に吸盤を備え、消化管をもっている。
【予防法】
特に川魚の生食、加熱不十分なものは食べない。
手指や調理器具を介し、感染することも多いので注意する。
■肝吸虫(Clonorchis sinensis)
淡水魚と一部の気水魚の摂取によって感染。
【病害性】
成虫は、胆管枝に寄生し、絶えず機械的刺激を与える。
粘膜の剥離増殖が起こり、胆管周囲炎、拡張肥厚に伴い、胆汁の貯留とうっ滞を起こし、
浮腫、黄疸、腹水を併発、慢性期には本症の特徴である肝硬変を現す。【寄生魚介類】
コイ、フナ、ワカサギ、ウグイ、オイカワ
■ウェステルマン肺吸虫(Paragonimus westermani)
ヒト、イヌ、ネコなどの肺に寄生。
日本では山間地域の水の清い温暖な地域で流行したが、近年減少。【病害性】
@胸肺部肺吸虫症
感染1ヶ月後→胸部痛、胸部違和感、心悸亢進→咳、喀痰。
A異所寄生(肺以外の臓器に迷入)
・脳肺吸虫症、脊髄肺吸虫症
てんかん、麻痺、けいれん
・肺部肺吸虫症【寄生魚介類】
モクズガニ、サワガニ、ザリガニ
■宮崎肺吸虫(Paragonimus miyazakii)
本来は野生の獣類(イタチ、テン)の寄生虫だがヒトに寄生することもある。(好適宿主ではない)。
日本のみに分布。【病害性】
自然気胸、胸水貯留、胸痛、呼吸困難、気管支炎、胸膜痛、咳、微熱。【寄生魚介類】
サワガニのみ
■横川吸虫(Metagonimus yokogawai)
寄生部位は鱗片が最も多い。
終宿主はヒト、イヌ、ネコ、ネズミ【病害性】
少数寄生では無症、多数寄生で消化器障害(下痢、腹痛)【寄生魚介類】
アユ、シラウオなどの淡水魚。
■有害異形吸虫(Heterophyes heterophyes nocens)
終宿主は、ほ乳類・鳥類
腸管内に寄生(小腸中部の粘膜に吸着発育)
九州、瀬戸内沿岸地域、千葉房総付近に分布【病害性】
少数寄生では無症、多数寄生で消化器障害(下痢、腹痛)【寄生魚介類】
ボラ、メナダ、ハゼ、シマイサキなどの汽水魚
■棘口吸虫類(Echinostomatidae)
日本では5種がヒトに寄生。(1種は全国に分布、4種は東海以西に分布)
【病害性】
下痢、腹痛等、症状は軽い【寄生魚介類】
タニシ、シジミ、ドジョウ、アユ、タナゴなど
体は扁平、成虫は多数の片節からなる。
成虫は全てセキツイ動物の腸管内に寄生。
■広節裂頭条虫(Diphyllobothrium latum)
通称さなだむし、日本全国に分布
ケミジンコ(第1中間宿主)→サケマス類(第2中間宿主)→ヒト
成虫で3〜10m【病害性】
軽度の消化器障害(下痢、腹痛)のみ。
長く連なった片節が肛門から排出されるときの不快感。
北海道が最も発症者が多い【寄生魚介類】
サケ、マス類【予防法】
生食するときは冷凍してから食べる。
■マンソン裂頭条虫(Diphyllobothrium erinacei)
成虫はイヌ、ネコ、キツネに寄生。
ヒトには幼虫が寄生することが多い。【病害性】
・人体マンソン孤虫症
移動性で無痛の腫瘤がみられる。寄生部位により症状が多岐。
・まれに人体内で成虫となり障害を受ける。【寄生魚介類】
両生類(カエル)、は虫類(ヘビ)【予防法】
ゲテモノ料理の生食はしない。生水を飲まない。
体節区分がなく、円筒形で糸状。
■アニサキス、テラノーバ(Anisakis,Terranova)
最近では最も罹患率が高い寄生虫。
北海道、東北で多く発症。【生活史】
海産ほ乳類の胃に頭端部を突き刺し寄生。
→虫卵は糞便と共に排出され、海水中で第1、2期幼虫となる。
→オキアミ類に補食される。(第1中間宿主)
→魚介類に補食され第3期幼虫となる。(第2中間宿主)
→海産ほ乳類に補食され成虫となる。(終宿主)【病害性】
ヒトには第3期幼虫で寄生。
刺身と一緒に幼虫を摂取、ほとんどは便とともに排出されるが
まれにヒトの胃腸壁に侵入し、激痛を伴う急性腹痛を引き起こす。
発症は食後30分〜12時間に多い。胃内視鏡により虫をつまみだす。
他の病気を疑われ開腹されるケースもあるので、本症が疑われる場合
医師に食事内容をきちんと説明することが大事。【寄生魚介類】
アニサキス
サバ、ニシン、スルメイカ、アンコウ、タラ、サケ、マス、サンマなど
テラノーバ
タラ、オヒョウ、イカ、メヌケ、ホッケ、イワシ、アンコウなど【予防法】
・アニサキス寄生魚を知る。
・生食するときは魚をよく見て調理。
・煮たり焼いたりするときは中心まで加熱。
・−20℃24時間以上の冷凍で死滅。
・よくかむこと
■広東住血線虫(Angiostrongylus cantonensis)
ネズミが終宿主、ヒトには第3期幼虫の寄生。 沖縄に多く分布。
【病害性】
脳脊髄に移行し、脳膜に損傷を与え激頭痛を現す。
時には、知覚異常、嘔吐、麻痺なども起きる。【寄生魚介類】
マイマイ類、ウシガエル、ナメクジなど【予防法】
一般に食用とされていないものは食べない。(特に海外では要注意)
生野菜は良く洗ってから食べる。
−15℃以下では半日で死滅。
■有棘顎口虫(Gnathostoma spiningerum)
イヌ、ネコが終宿主。
日本では戦中戦後の食料難のとき、川魚を摂取して、感染者続出。
関東以西に多く分布。【病害性】
消化管で脱嚢した幼虫は胃壁を突き抜けて腹腔に移行、
肝臓にとどまった後、皮下に出没。皮下を移動しミミズ腫れ様の症状を現す。
発症部位はほぼ全身。
最悪の場合、内臓に寄生し、腫瘍をつくったり、悩や脊髄、眼球に侵入し
発声障害、呼吸困難、てんかん、失明。
治療は外科的切除を行うが、容易ではない。【寄生魚介類】
ライギョ、ドジョウ