魚介類の寄生虫

食料事情が悪かった時代、寄生虫による健康被害を起こす人が多かったのですが、生活レベルの向上で激減しました。
しかし、日本人は昔から生食の習慣があり、昨今のグルメ嗜好で何でも生食とする風潮から、寄生虫に感染する機会が増えてきました。
また、輸入食品の増加、海外旅行により他国から持ち込まれるケースも増えてきています。
魚介類の寄生虫にはどんなものがあるのかを簡単に紹介します。


吸虫類

体に吸盤を備え、消化管をもっている。

【予防法】
特に川魚の生食、加熱不十分なものは食べない。
手指や調理器具を介し、感染することも多いので注意する。


肝吸虫(Clonorchis sinensis)

淡水魚と一部の気水魚の摂取によって感染。

【病害性】
成虫は、胆管枝に寄生し、絶えず機械的刺激を与える。
粘膜の剥離増殖が起こり、胆管周囲炎、拡張肥厚に伴い、胆汁の貯留とうっ滞を起こし、
浮腫、黄疸、腹水を併発、慢性期には本症の特徴である肝硬変を現す。

【寄生魚介類】
コイ、フナ、ワカサギ、ウグイ、オイカワ


ウェステルマン肺吸虫(Paragonimus westermani)

ヒト、イヌ、ネコなどの肺に寄生。
日本では山間地域の水の清い温暖な地域で流行したが、近年減少。

【病害性】
@胸肺部肺吸虫症
  感染1ヶ月後→胸部痛、胸部違和感、心悸亢進→咳、喀痰。
A異所寄生(肺以外の臓器に迷入)
 ・脳肺吸虫症、脊髄肺吸虫症
   てんかん、麻痺、けいれん
 ・肺部肺吸虫症

【寄生魚介類】
モクズガニ、サワガニ、ザリガニ


宮崎肺吸虫(Paragonimus miyazakii)

本来は野生の獣類(イタチ、テン)の寄生虫だがヒトに寄生することもある。(好適宿主ではない)。
日本のみに分布。

【病害性】
自然気胸、胸水貯留、胸痛、呼吸困難、気管支炎、胸膜痛、咳、微熱。

【寄生魚介類】
サワガニのみ


横川吸虫(Metagonimus yokogawai)

寄生部位は鱗片が最も多い。
終宿主はヒト、イヌ、ネコ、ネズミ

【病害性】
少数寄生では無症、多数寄生で消化器障害(下痢、腹痛)

【寄生魚介類】
アユ、シラウオなどの淡水魚。


有害異形吸虫(Heterophyes heterophyes nocens)

終宿主は、ほ乳類・鳥類
腸管内に寄生(小腸中部の粘膜に吸着発育)
九州、瀬戸内沿岸地域、千葉房総付近に分布

【病害性】
少数寄生では無症、多数寄生で消化器障害(下痢、腹痛)

【寄生魚介類】
ボラ、メナダ、ハゼ、シマイサキなどの汽水魚


棘口吸虫類(Echinostomatidae)

日本では5種がヒトに寄生。(1種は全国に分布、4種は東海以西に分布)

【病害性】
下痢、腹痛等、症状は軽い

【寄生魚介類】
タニシ、シジミ、ドジョウ、アユ、タナゴなど



条虫類

体は扁平、成虫は多数の片節からなる。
成虫は全てセキツイ動物の腸管内に寄生。


広節裂頭条虫(Diphyllobothrium latum)

通称さなだむし、日本全国に分布
ケミジンコ(第1中間宿主)→サケマス類(第2中間宿主)→ヒト
成虫で3〜10m

【病害性】
軽度の消化器障害(下痢、腹痛)のみ。
長く連なった片節が肛門から排出されるときの不快感。
北海道が最も発症者が多い

【寄生魚介類】
サケ、マス類

【予防法】
生食するときは冷凍してから食べる。


マンソン裂頭条虫(Diphyllobothrium erinacei)

成虫はイヌ、ネコ、キツネに寄生。
ヒトには幼虫が寄生することが多い。

【病害性】
・人体マンソン孤虫症
  移動性で無痛の腫瘤がみられる。寄生部位により症状が多岐。
・まれに人体内で成虫となり障害を受ける。

【寄生魚介類】
両生類(カエル)、は虫類(ヘビ)

【予防法】
ゲテモノ料理の生食はしない。生水を飲まない。



線虫類

体節区分がなく、円筒形で糸状。


アニサキス、テラノーバ(Anisakis,Terranova)

最近では最も罹患率が高い寄生虫。
北海道、東北で多く発症。

【生活史】
海産ほ乳類の胃に頭端部を突き刺し寄生。
→虫卵は糞便と共に排出され、海水中で第1、2期幼虫となる。
→オキアミ類に補食される。(第1中間宿主)
→魚介類に補食され第3期幼虫となる。(第2中間宿主)
→海産ほ乳類に補食され成虫となる。(終宿主)

【病害性】
ヒトには第3期幼虫で寄生。
刺身と一緒に幼虫を摂取、ほとんどは便とともに排出されるが
まれにヒトの胃腸壁に侵入し、激痛を伴う急性腹痛を引き起こす。
発症は食後30分〜12時間に多い。

胃内視鏡により虫をつまみだす。
他の病気を疑われ開腹されるケースもあるので、本症が疑われる場合
医師に食事内容をきちんと説明することが大事。

【寄生魚介類】
アニサキス
 
サバ、ニシン、スルメイカ、アンコウ、タラ、サケ、マス、サンマなど
テラノーバ
 タラ、オヒョウ、イカ、メヌケ、ホッケ、イワシ、アンコウなど

【予防法】
・アニサキス寄生魚を知る。
・生食するときは魚をよく見て調理。
・煮たり焼いたりするときは中心まで加熱。
・−20℃24時間以上の冷凍で死滅。
・よくかむこと


広東住血線虫(Angiostrongylus cantonensis)

ネズミが終宿主、ヒトには第3期幼虫の寄生。 沖縄に多く分布。
【病害性】
脳脊髄に移行し、脳膜に損傷を与え激頭痛を現す。
時には、知覚異常、嘔吐、麻痺なども起きる。

【寄生魚介類】
マイマイ類、ウシガエル、ナメクジなど

【予防法】
一般に食用とされていないものは食べない。(特に海外では要注意)
生野菜は良く洗ってから食べる。
−15℃以下では半日で死滅。


有棘顎口虫(Gnathostoma spiningerum)

イヌ、ネコが終宿主。
日本では戦中戦後の食料難のとき、川魚を摂取して、感染者続出。
関東以西に多く分布。

【病害性】
消化管で脱嚢した幼虫は胃壁を突き抜けて腹腔に移行、
肝臓にとどまった後、皮下に出没。皮下を移動しミミズ腫れ様の症状を現す。
発症部位はほぼ全身。
最悪の場合、内臓に寄生し、腫瘍をつくったり、悩や脊髄、眼球に侵入し
発声障害、呼吸困難、てんかん、失明。
治療は外科的切除を行うが、容易ではない。

【寄生魚介類】
ライギョ、ドジョウ