<< 罪と罰 >>
例えば、それは広く、白く、降り積もった雪の大地に最初の一足を踏み込むような。
綺麗なデコレーションケーキの真ん中を、切らずにフォークでつつくような。
出来上がった名画に墨をぶちまけるような。
それは、興奮と快感と・・・・・ほんの少しの罪悪感。
いつだって始まりは些細な出来事だ。
おれのことを「尻軽」や「浮気者」と罵っていた頃の強さはもうない。
おれを見上げる翠色の瞳はその色を暗く深く、変えている。
・・・それがまた、おれの心をくすぐる事に彼は気付いていないのか。
「う・・ぐっっ、、、んっ・・、、、っ!!」
挿入したままで、ヴォルフラムの白い喉元を締め上げる。
快楽に昂揚していた頬が奇妙なくらいに赤黒く変色し、呼気を求めて震える唇。
酸素が足りない事を誇示するように、激しく痙攣する体。
それがまたおれの快楽の中枢を揺さぶる。
「はあっ・・っ!だ、れが、尻軽だって?」
「う・・ぐっ・・ふ・・っ・・っっ・・!」
一瞬手を緩めれば今度は溢れるほどの入ってくる空気に、
まるで溺れるかのように噎せ返る。
「ごふっ・・ふ・・ぅ・・っ、ごほっ・・」
「尻軽なのはお前だろ?ヴォルフ?色んなやつに色目使ってさ・・。
この、淫乱・・っ!」
ばしりと頬を打つ度にどうにかその手から逃れようと眼前を腕で覆い、
身を捩るヴォルフにさらにおれの獣の心は躍り上がる。
逃げられはしないのだ。
秘部は熱い楔を打ち込まれているし、
なによりもう・・・・心が、囚われている。
「ほらっ・・っ!黙ってないでっ、なんとかっ、言えよっっ!!」
蜂蜜色の髪をつかみ、叩きつける腰の動きを上げれば、
悲鳴のような嬌声の隙間から、許しを請う小さな呻きが聞こえた。
それでも彼を嬲る手は止めず、絶頂へと無理やりに引きずりあげてやった。
『そろそろ・・・だろうな。』
引きつった体と、荒く響く呼気。
限界を訴える肉体と精神の狭間にかつては誰よりも強く輝いていた瞳が揺れる。
「ヴォルフ・・・」
呼びかけに快楽とは明らかに違う動きで、びくりと彼の肩が震えた。
「怖がらせて・・ごめん。でも、おれは本当にお前が好きで、
お前を誰にも渡したくないだけなんだ。」
できるだけ優しく抱きしめて、頬に口付けを落とせば、震える唇が答えてくれる。
「ほんと・・う、に?」
「あぁ。それともヴォルフは・・・もう、おれを信じてくれないのか?」
その言葉にふるふると首が横に振られ、その弾みで翠の瞳から、一滴涙が零れる。
「ゆー・・り、す、きっ・・だ・・・っっ・・・・」
その言葉に答えるようにおれは薄く笑う。
そしてヴォルフの透き通る涙が、また白いシーツの海に飲まれる前に、
おれはまたヴォルフの白い咽喉元に手を伸ばした。
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