「ヴォルフ、ヴォルフ!!起きろよ!」
「う〜・・頭が、痛い。」
そりゃぁ、あんだけ飲んでれば二日酔いは当たり前だろう。
いつもだったらゆっくり休ませてやるところだけど、今日はそうもいかない。
「ヴォルフ、起きろってば!プレゼントやるって言っといたろう?」
「まだ夜明け前じゃないか・・・。プレゼントなら後からでも・・」
「ダメ!お前にだけあげるって約束だっただろ。夜明け前じゃないと意味が無いんだってば!」
もぞもぞと掛け布に逃げ込もうとする体を無理やり引っ張り出し、
半ば強引に服を脱がして着替えさせる。
昨日はそのままで眠ったせいで、服もくしゅくしゅになってしまっていたから、
とりあえずクローゼットからシャツやらおれのランニング用のジャージやらを出してきて、
防寒にだけは注意して着せてやった。
もちろんコートも、しっかり前を止めてやって。
瞳は閉じたままで俺に手を引かれて歩くヴォルフラムを連れて、まだ薄暗い血盟城を歩く。
早く。
朝日が昇る前に。
「ヴォルフ、もうすぐだからしっかり歩いてくれよ!」
「う〜・・・」
「ほら!!」
ようやく着いた中庭に、二人立ち尽くす。
頬に当る真冬の澄み切った空気に、ヴォルフラムが眉根を寄せながら瞳を開きかけた。
ヴォルフの瞳が開くのと同じくらいのスピードで、朝日が昇る。
「・・・!?う、わぁ・・・」
目を見開いて驚くヴォルフの眼前には、
キラキラの陽光が、真っ白な地面の上を跳ね回る。
見渡せばあたりは、純白の雪景色。
昨日までと全く違う顔をした、庭の姿がそこにはあった。
「ユー、リ?これは?」
「これはヴォルフに。おれからのクリスマスプレゼント。」
世界中に降る雪に、真っ赤な可愛いリボンを掛けて、
誰にも告げずに、そっとそっと密やかに、君にだけ贈ろう。
雪にも負けぬ、真っ白な、曇りの無いぼくの君への想いを。
あたりを見回し、雪の積もった木の葉に触れるヴォルフが、
吐息を吐くたび、白い小さな靄が浮かんでは消えた。
「気に入った?ヴォルフ。」
「あぁ・・とても。」
「それはよかった。頑張ったかいがあったよ。」
「それにしても、驚いたな。こんなに美しい贈り物は初めてだ。」
きっともうすぐ皆が起きてくる。
そしてモミの木の下に堆く積まれたプレゼントを開けて喜ぶのだろう。
でも、このおれからヴォルフへのプレゼントは日が高く上れば、消えてしまうプレゼント。
それでも。
決して手元には残りえない、形の無い贈り物が、心の中に何かを残す。
「イブの夜は二人きりにはなれなかったけど、クリスマスの朝は一緒に過ごせたな。」
そして。
振り向いたヴォルフの笑顔は、君からおれへの贈り物。
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