『ふぁぁ・・帰ってきてからの記憶無いや。あのまま寝てたのかな?』

目を開けるとそこには淡い光が溢れていた。

疲れ果てて、結局朝まで眠っていたのだろう。

周りが良く見えない。

あまりにも光が強すぎて。

 

眩しい・・・。

手を翳して、日を避けようとするがあまり意味がなかった。

仕方がないのでここが何処なのか確認しようとする。

とりあえず手を伸ばしてみると、すべすべした壁にぶち当たった。

両手で壁に力を入れると、ぱり、と小さな音を立てて裂ける。

そのまま力を入れて壁を壊すと、一瞬更に焼けるような激しい光に照らされて、

俺はそのまま外に出た。

 

『あれ・・?ここどこだ?』

出て来てみると新鮮な空気と異常な空腹感。

まだ目がチカチカしているので周りの状況は分からないけれど、

大方昨日疲れて眠ってしまって、日が高くなるまで惰眠を貪ったのだろう。

やっぱり慣れないことをすると疲労感も倍増だと、心の中で呟いた。

ようやく目の前を飛び交う星が消えて瞳が慣れると、

辺りをきょろきょろ見回してみた。

え〜っと・・・。

さっきまで確かに俺は、血盟城の王様ベッドの上にいたと思うんだけど。

いつの間に俺のベッドの天蓋は、緑輝く葉っぱになってしまったんだろう。

しかも異常に大きな大きな葉っぱだ。

その葉の先に、とても大きな朝露の雫が一つ垂れていて、

それをなんとなく覗き込んだ。

『ぎぇぇぇぇえぇっっっ!!???あ、あおむし!?』

雫の曲線に映し出された間延びした姿に愕然とする。

そこにあったのは、どっからどうみても昆虫の幼虫、

しかもまたこれがでかい青虫の姿。

覗き込んだ俺と同じく、雫の向こう側から覗き込んでいたのだろう。

しかもこっちが驚くと、青虫も同じくビックリした顔をしている。

・・・というか、青虫の表情が分かるってどういうこと?

混乱しすぎて思わず一人、ボケ突っ込み。

でもここは眞魔国だから変わった生き物も多いのだろうと思い直す。

現にクマハチの幼虫は俺やヴォルフなんかより数倍デカかったのだから。

雫を挟んで向こう側にいるものと思われる青虫を確認しようと、

ゆっくり反対側を覗き込む。

『あれ?いない・・・。』

青虫にしては逃げ足速いんだな、と思いながら

ふとまた視線を戻した雫に映っていたのは、

やっぱり青虫!!!!!!!!!!!!!!!

って・・・まさか・・・。

『えーーーーーーーっっ!?青虫って、俺が青虫になってるんじゃんっ!!?』

体を捻ったり飛び跳ねたりすれば、

同じく雫に映った青虫の体も捻ったり飛び跳ねたりしている。

な、なにがどうなってるんだ!!!??

初めてスタツアした時だって確かに訳わかんなかったけど、

一晩のうちに青虫に生まれ変わっちゃう方が訳わかんないぞ!?

『だ、誰か、俺を落ち着かせてくれー!!!!』

頭を抱えて悶絶しているつもりだったが、

雫には体を立ち上げてぐねぐねとダンスを踊る青虫が一匹映っていた。

 

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