2曲目の曲に切り替わった途端、ヴォルフラムはグレタの手をとってホールに出た。
そしてそこでみた光景に、俺は脱帽。
ヴォルフラムのダンスは、それはそれは凄かった。
小さな淑女を、優雅に頼もしくリードして、身長差すら凌駕して踊って見せた。
さすがは元プリンス。
グレタの目なんか、ハートが飛び交っているのが見て取れる。
くぅぅ〜このままじゃ『グレタ、ヴォルフと結婚する〜!』なんて言いかねない。
だめだぞっ、グレタ!!
親子は結婚できないんだぞっ!・・・って、俺ってどっちに妬いてるんだか。
踊り終えたら今度は挨拶の応酬で、迷惑にならないようにダンスの会場からは抜けだすことにする。
普通ならその場で謁見の申し込みとかで、皆に囲まれる羽目になるのだけど、
今回は俺から出向くことにした。
そうやって人々の中を歩く方が俺らしい気がして。
でも、なんだか様子がおかしい。
俺達の一団が近づくと、不思議と貴族たちが、がやがやひそひそと何か噂話をしているのだ。
なんだ?何の話だろう??
かすかに聞こえる、「陛下が・・」とか「閣下が・・」だけではどうにも状況が分からない。
でも彼らの視線の先には、どうやら俺とヴォルフがいるので、
閣下というのはヴォルフのことだろうと判断する。
陛下っていうのは、どう転んでも俺のことだろうから。
でもそれがわかったからといって何一つ解決には至らないのだが・・・。
俺とヴォルフに何かあったっけ??
ヴォルフに助け舟を貰おうと視線を送ったら、凍りついたように表情の固いヴォルフが目に入った。
ぴん、と神経を張り詰めたような、そんな表情のヴォルフ。
まるで、白磁の人形のようにも、見えて。
こんな表情の彼を__________おれは知らない。
そんな表情に圧倒されて、声すらも掛けられずに結局俺は歩き出す。
この謁見が終わったなら、ヴォルフの顔もまともに見られるんじゃないか、何て思いながら。
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