チークタイムは二人のために  >6

2曲目の曲に切り替わった途端、ヴォルフラムはグレタの手をとってホールに出た。

そしてそこでみた光景に、俺は脱帽。

ヴォルフラムのダンスは、それはそれは凄かった。

小さな淑女を、優雅に頼もしくリードして、身長差すら凌駕して踊って見せた。

さすがは元プリンス。

グレタの目なんか、ハートが飛び交っているのが見て取れる。

くぅぅ〜このままじゃ『グレタ、ヴォルフと結婚する〜!』なんて言いかねない。

だめだぞっ、グレタ!!

親子は結婚できないんだぞっ!・・・って、俺ってどっちに妬いてるんだか。

 

 

踊り終えたら今度は挨拶の応酬で、迷惑にならないようにダンスの会場からは抜けだすことにする。

普通ならその場で謁見の申し込みとかで、皆に囲まれる羽目になるのだけど、

今回は俺から出向くことにした。

そうやって人々の中を歩く方が俺らしい気がして。

でも、なんだか様子がおかしい。

俺達の一団が近づくと、不思議と貴族たちが、がやがやひそひそと何か噂話をしているのだ。

なんだ?何の話だろう??

かすかに聞こえる、「陛下が・・」とか「閣下が・・」だけではどうにも状況が分からない。

でも彼らの視線の先には、どうやら俺とヴォルフがいるので、

閣下というのはヴォルフのことだろうと判断する。

陛下っていうのは、どう転んでも俺のことだろうから。

でもそれがわかったからといって何一つ解決には至らないのだが・・・。

俺とヴォルフに何かあったっけ??

ヴォルフに助け舟を貰おうと視線を送ったら、凍りついたように表情の固いヴォルフが目に入った。

ぴん、と神経を張り詰めたような、そんな表情のヴォルフ。

まるで、白磁の人形のようにも、見えて。

こんな表情の彼を__________おれは知らない。

そんな表情に圧倒されて、声すらも掛けられずに結局俺は歩き出す。

この謁見が終わったなら、ヴォルフの顔もまともに見られるんじゃないか、何て思いながら。

 

 

 

 

2005/5/28


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