探し回って、思いつくところは俺の寝室くらいになった。
「ヴォルフっ、いるっっ!?・・・あっ!」
「しっ!・・・静かに、グレタが起きる。」
ベッドの端に腰を下ろして、グレタの可愛い寝顔を見ていたらしいヴォルフラムに、
静かにたしなめられて、思わずごめんと呟いた。
「・・ヴォルフ、あの、」
「今日は、初めて大掛かりな催しだったからな、ユーリも疲れたろう?」
眠っているグレタのくるくるした髪を、その白い指先で梳いていたヴォルフラムは
その手を止めてそっと立ち上がった。
「明日は勉強も休みにするとギュンターも言っていた。思う存分、休めるぞ。」
そういいながら部屋を出ようとするヴォルフをとっさに止めた。
「あ!ちょっと!!ヴォルフ!!!」
「なんだ?」
「お前、何処行くんだよ。お前ももう休むんだろ?」
何故止められているのかがわからないといった表情でヴォルフラムは言った。
「あぁ。そのつもりだが・・」
「じゃぁ、何でこの部屋を出てくんだよ?いつもどおりこの部屋で休めばいいじゃないか。」
いつもなら、入るなと言っても『婚約者だから』の一言で押し切って、意地でも居座るくせに。
「・・・もう、ベッドではグレタも休んでいる。いくら広いとはいえ、三人では・・・」
目もあわせずに小声で話すヴォルフラムの態度が、静かに俺を責めているようで凄く辛い。
そんなんだったらいつもみたいに、『この尻軽!へなちょこ!大体お前は・・・』と
説教に入ってくれたほうがずっとましだ。
「なんだよ、なんで目もあわせないんだよ?」
だんだんと気持ちを押さえきれなくなって、声音にも喧嘩の色が見え隠れする。
「別段そんなつもりはないが・・・」
それでもやはり冷静な口調で返すヴォルフに俺の中の謂れのない怒りが爆発した。
「やっぱり、怒ってるんだろ!はっきり言えよっ!!」
その言葉に眉をピクリ、と跳ね上げてヴォルフラムは冷たい声音で言い放った。
「・・・ユーリの常識知らずには慣れている。ぼくは気にしていない。
むしろ、気にしているのはユーリのほうだろう?」
確信を突かれて、むっとした。
俺は無言で、ヴォルフの腕を掴み、夜の血盟城内へと引きずり出した。
|