聞かされた事実を否定も肯定も出来ずに、ただ目の前の現実に呆然としながら、
おれはどうにかヴォルフラムを無事に起こせる手段が無いかを懸命に探した。
執務すらほっぽりだして、書庫に通ったり、問題の町へ行ったり、最後には眞王廟へ祈りにまで行った。
それでも、何ひとつ手がかりはなくて。
くたくたになってヴォルフの眠るベットへと転がり込む数日が続いた。
ベットに眠る彼は以前のように寝言を言ったり、悪魔の寝相でおれに圧し掛かってくることは無い。
「だけど・・・ちゃんと、生きてる。」
ヴォルフの左胸に手を当てれば、静かに小さく、命の音が響いている。
それが止まる事なんて、どうして考えられる?
考えたくない事が頭をよぎるから、おれはヴォルフの温もりを感じながら必死に眠りへと落ちていった。
ヴォルフラムの状況は、彼に母親であるツェリさまに、
そしていまやヴォルフともすっかり親子であるグレタにも伝えられ、二人も血盟城に帰ってきてくれた。
目覚めさせる事ができるのはおれだけだが、彼の生死を任されるのは荷が重すぎたから。
集まったヴォルフラムに縁の深いものたちで、これからの事が話し合われる。
「結局、呪いを本当の意味で解く方法はなにも分からなかった。」
そう言って俯くおれの頭上から、ツェリさまの声が降ってくる。
「陛下は、どうされたいの?」
弾かれたように顔を上げたおれを、ツェリ様が真っ直ぐに見つめてそう言った。
「お、おれは・・・」
「ヴォルフはわたくしの可愛い息子。陛下はその子が選んだ唯一の人ですもの。ご意見を聞きたいわ。」
「おれは・・、」
愛しい人の死を目の前に、貴方ならどうしますか?
このまま目覚めさせる? それとも眠らせたまま?
運命の全てはあなたの「選択」の中に。
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