** 三男が町にやってくる! **
「えぇ!?眞王が直々に呼んでるって??」
執務中だったおれの元に眞王廟から伝達が入ったのはお昼頃。
『必ずヴォルフラムを一緒につれてくること』というなんとも奇怪な伝達に、
頭を捻ったおれだったが、眞王の命ならばとおれもヴォルフも仕事を置いて速攻で廟へ行かされる事になった。
静まり返った眞王廟に足を踏み入れる。
謁見の間に通されて、そこに立つ言賜巫女がゆるゆると頭を下げた。
「突然の御召し、申し訳ございません。」
「いや、それは大丈夫。だけど急にどうしたの?ウルリーケ。」
「まず・・・このたびはご婚礼の儀無事に相整いました事を、お喜び申し上げます。」
「あ、あぁ、はい。ご丁寧に、どうも。」
おれも同じく頭を下げる。
ヴォルフは『王がぺこぺこするな!』とばかりに小さく鼻を鳴らしたが、
さすがに眞王陛下の魂が眠るという場所だけにそれ以上は何も言わなかった。
「ユーリ陛下とその伴侶であらせられますヴォルフラム殿下におかれましては、
新たに踏み出した日々に新鮮な喜びを感じておられることでしょう。」
「いや〜・・・まぁ、肩書きは変わったけど。でも関係としては、
いつも一緒にいて、助けたり助けられたり・・・おれたちはずっとこんな感じだったし・・。」
そう答えるとウルリーケは僅かに頬を赤らめて『本当にお幸せそうなご様子で。』と付け加えてから、
また先ほどと同じような真顔になった。
「そこで、お二人に眞王陛下御自ら、お祝いをさしあげたいとのこと。
つきましては、今、この瞬間、眞王陛下よりのお言葉を申し上げます。」
「え?お祝い?言葉?」
「『第27代の婚礼、めでたく思う。ついては祝いを兼ねて、常々二人の心の憂いになっていたものを、
これを機に取り払う機会を与えよう。期間は月の一巡り。存分に思いを果たしてくるがよい。』」
「・・・は、話が飲み込めないんですが?」
「眞王陛下よりヴォルフラム殿下を連れての地球帰還のお許しを得ました。」
「へ・・?」
「ユーリ陛下のご実家へ、ヴォルフラム殿下と共に帰還せよと。」
「・・・いつ?」
「いますぐに、ですわ。」
ウルリーケがにこやかに微笑むと同時に、数人の巫女たちに取りかこまれたおれたちは、
『移動の際に離れ離れにならないように』と手をつないだ格好のまま、
赤い絹の布で二人の手首を固定された。
「まっ、まて!話が読めな・・っ!」
『運命の赤い糸・・みたいだな。』
慌てふためくヴォルフと対照的におれが暢気にそんなことを脳裏に浮かべた時。
「陛下、殿下、お二人とも、どうか良い旅を。そしてご無事にお戻りくださいませ。」
ウルリーケが差し招く其の先には、眞王の居わす滝。
巫女たちに引きずられながら、叩き込まれた滝の中では勝手知ったるスターツアーズ。
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