10万HIT有難うございます★

 

21.今日と明日との狭間(ユヴォほのぼの)

 

毎夜、ぼくはこっそりと目を覚ます。

それはいつも大体決まった時間帯だ。

目覚めたぼくは、傍らで眠るユーリを起こさぬよう、

でもその存在を確かめるように、彼にそっと触れる。

「よかった・・・」

温かいユーリの体。

触れ合うことに慣れた、覚えのあるその体と、

穏やかな寝顔にほっとする。

「これで明日も、お前と一緒に過ごせるんだな。」

ぴぴっぴぴっと、ゆーりの「でじあな」が小さな音を立てた。

それは、今日が昨日に、明日が今日になった瞬間。

「おやすみ、ユーリ。」

その頬にくちづけて、ぼくは掛布に潜り込む。

君と過ごせる今日という日の、朝日が瞼を叩くまで。

 

 

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2007/8/12

デジアナのアラームは、希望の明日を知らせる鐘の音。

 

 

22.皆無(ユヴォ前提、次男と陛下の日常)

 

「昨日ヴォルフがまたすねちゃってさ。」

唇を尖らせて始まった名付け子のぼやきを、

気のいい名付け親は黙って聞くことにした。

「大したことじゃないのにさ。

 おれが町の出店で色んなおまけを貰うのは、

 おれが店員に色目を使っているからだとか、

 この間町の生地屋に行った時にやけに真剣だったのは、

 生地屋の看板娘にご執心だからだとかさぁ・・・」

「おやおや・・・」

「まったく・・・。何回言ったらあいつは

 浮気じゃないって分かってくれるんだろうな。」

本気でくったりしているらしい名づけ子の背中に、

可愛い弟のこととはいえ、

どうにかしてやらねばとコンラートはそう思った。

「やれやれ・・・仕方がない子だ。

 ヴォルフにはおれからもよく言ってきかせておきますよ。」

だけれど、さっきまで片頬を膨らませ、

ご立腹のようだった名付け子は、

コンラートのその言葉に

心底驚いたような顔をしてこう言った。

「え?なんでとめるの?」

「え?ご不快じゃないんですか?」

「だって・・・そういうところもヴォルフの可愛いところじゃん。」

 

 

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2007/8/14

嫌よ嫌よも好きのうち。

惚れたら欠点も愛せるというのは、「皆無」にぴったりですよね。

 

23.相容れないモノ(ユヴォ)

 

ユーリはとっても可愛い、と、ぼくは思う。

だから母上に相談して、ユーリの誕生日に合わせて、

夜着を作らせたのだけど。

「つかっ!これ、マジでありえねーからっっ!」

「なぜだ?お前の好きな青い色にしてもらったのに・・・」

「だ〜か〜ら〜っ!問題は色じゃなくてっ!!」

地団太を踏んで叫ぶユーリ。

その手で広げられた夜着は柔らかく愛らしく揺れているのに。

「・・・まったく!何が気に入らないというんだ、

 お前は!」

「あったりまえだろーがっっ!だいたいなぁっ!

 こ〜んな、フリフリのネグリジェ、

 おれが着れるワケないだろっ!?」

真っ赤な顔でユーリは眦を吊り上げる。

「なぜだ?これは前にお前が気に入ったといっていた、

 ぼくの夜着と同じデザインで・・・」

「ばっ!あれは、お前が着るからいいんじゃないか!

 そのくらい分かれよっ!」

 

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2007/8/16

陛下は三男を臆面なく褒めます。

三男も同じく。

陛下は自分が褒められると怒るけど、

結局自分も三男と同じことしてるんだけどね(笑)

つまりは、周りから見れば、どっちもかわいいよ?ってことで。

 

24.万有引力(ユヴォ前提、村田と三男)

 

「この城にはたくさんの人がいるのに、

 この国にはたくさんの人がいるのに、

 この世界にはもっともっといろんな人がいるのに、

 君は渋谷しか見えていないんだねぇ。」

そういって大賢者は笑うけれど。

「この城にはたくさんの人がいるのに、

 この国にはたくさんの人がいるのに、

 この世界にはもっともっといろんな人がいるのに、

 ぼくがユーリにしか思いを寄せないのは、

ぼくにとって彼が誰よりも大きな存在だからだ。」

大地が林檎を引っ張るように、

ぼくの心はユーリに引っ張られる。

誰よりも大きな、愛しい存在。

だからそれは当然のことなんだ。

 

 

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2007/8/19

この恋は必然なんだ。

 

25.白煙(ロイヤルファミリー的な。)

 

眞魔国は冬。

防寒には気を配って、ヴォルフと二人、

可愛い娘の帰郷を待ちきれず、港まで迎えに出た。

「寒いな。」

「あぁ、本当だな。」

「グレタ、また大きくなっただろうなぁ。」

「そうだろうな。今回はいつもより長く離れていたからな。」

「可愛くなっただろうなぁ。」

「当たり前だ。一体誰の子だと思っている?

 ぼくとお前の子だぞ?愛らしくならないわけがない!」

その物言いに思わず突っ込みを入れたくなってしまって、

隣に立つ金髪の天使の顔を見てみれば、

ヴォルフは白い耳の先を赤く染めて、はぁと白い息を吐き出した。

「ヴォルフ・・・」

「なんだ?」

「お前、耳赤いよ?」

突っ込みを入れたかったことも忘れ、

目の前の赤く染まった耳にどうにも触れたくて、

おれは右手の皮の手袋を外し、そっとヴォルフの耳と、

そうしてもののついでとばかりにその頬にも触れた。

「ほっぺたも・・・冷たいなぁ。」

「当たり前だ。お前だって・・・」

そういうと今度はヴォルフラムがおれと同じく片手の手袋を外し、

その指先でおれの鼻の頭をつつく。

「ユーリは、鼻先が真っ赤だぞ?そして、とてもつめたい。

 でも・・・」

そういって肩をすくめ、頬においたおれの手を自分の手で、

そのまま頬に押し詰めて、悪戯っぽく笑っていった。

「手の平は、とても温かいな。」

 

その表情に。

ばくんっ、と、激しくおれの心臓が跳ねて。

吹き上がるように頬に上った温度に、一瞬白煙を見た気がした。

 

 

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2007/8/21

時期外れになっちゃいましたけど。

陛下が瞬間湯沸かし器になっちゃうくらい、魅力的な三男。

 

 

26.流れる糸(ユヴォで三男と部下)

 

「ヴォルフラム閣下、肩に何か・・・」

部下の指先に摘まれた、黒い糸。

「なんだこれは?」

捨ててしまう前になんだか気になって見てみればそれは・・

「陛下の御髪、のようですね。」

途端に頬に、かぁっと血が上った。

これはもしや、さっき木陰でこっそり口づけた時に?

「もったいないですが、このまま捨ててもよろしいですか?」

「・・・・あぁ。」

部下の指先から風に乗って流れる、黒い糸。

それは、君とぼくが一番側にいる証。

 

 

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2007/8/23

側にいる実感。

 

 

27.きみのてのひらにキス(ユヴォで愛し陛下)

 

やきゅう、とやらの練習でぼろぼろに痛んだユーリの掌。

その傷の一つ一つが彼の努力の証に他ならないから、

それを嫌だと思うことは無いけれど、

でもその傷の数だけ、彼がぼくを置いて、

やきゅうにかまけている証なのだと思えばなんだか悔しくて。

「ぼくを忘れるな。」

眠る彼の掌の傷、一つ一つに。

くちづけて、ぼくを刻む。

 

 

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2007/8/25

きみがすきだから。

ぼくをすきになって。

 

28.強い手と長い睫(ユヴォで愛し三男)

 

『やっとつかまえた・・・』

そういって笑った彼の顔を忘れない。

あの手の暖かさと、背中から受けた光に負けないように、

睫の上の散った金の光を。

 

 

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2007/8/27

陛下の精神的な『命綱』は三男。

 

 

29.指輪(近未来のユヴォ)

 

指輪って軍人向きじゃないんだよね、

着け慣れてないと、剣を持つとき邪魔なんだって、

と聞いて以来、おれはずっと悩んでいた。

例えばこれが地球式、永遠の愛の形だといえば、

ぼくは好まないのだが・・・と不機嫌そうに

呟きながらも受け取ってくれるんだとおもう。

でも、おれは・・・アレほど憧れだった

『給料三か月分の指輪』を用意できずにいた。

 

「ユーリ、難しい顔をしてどうした?

 何か悩みでもあるのか?」

執務机に頬杖をつき、

新しい書類が運ばれてくるまでの僅かな時間を、

ささやかな休憩と思考の時間に当てていたおれに、

新しい書類の束を手渡しながら、

ヴォルフがそう聞いてきた。

「まぁね、一生に関わる悩み。」

「ふむ。お前の一生に関わる悩みといえば、野球のことか?」

「ひでぇなぁ。おれ、結構家族思いだと思ってるんだけど?」

くすくすと笑って、薄紅色の唇を押さえる白い指先が、

収まった笑いと共に、おれの額に伸ばされて、

こつん、と、つついた。

「兄上ならともかく、こんなところに悩み皺を作っても、

 似合わないぞ、ユーリ。」

何なら相談に乗ろう、そういって、

ヴォルフは一客のイスをそばに置いて

そっとおれを見つめる。

その瞳を見ていると、どんなむずかしい問題でもこいつがいれば、

決して道を違えない・・・そう確信できた。

そのヴォルフをおれと結ぶ象徴、指輪。

やっぱり贈るか贈らないか、悩んでしまう。

「ヴォルフ。もし、おれが・・・」

おれはおれの抱えていた思いを話す。

話しながらおれの脳の端は、ごく近い未来のことを予測していた。

悩み事の全容にきっとヴォルフは、一瞬目を丸くして、

呆れたようにため息をつくだろう。

そうして、やっぱりお前の悩みなどその程度だろうなと

鼻で笑いながら、ほんの少し考えてこういうはずだ。

『三ヶ月の間、ぼくのために地球で働こうと考えているなら、

 ぼくは指輪など要らないから、その時間をこちらですごして、

 二人だけの時間を沢山作って欲しい。』

そしてほんの少し照れたように頬を染めて、

きっとこういう。

『それに、そんなものに頼らなくとも、ぼくとお前の関係は、

 この眞魔国・・いや、世界中の知れ渡っているから、

 指輪などなくとも、何の問題も無いだろう!』

そんで、照れ隠しはこう。

加えてきっとこういうんだ。

『まぁ、お前は浮気ものだからな。お前を繋ぎとめるには、

 そういう装身具も悪くは無いがな!』

「・・・なんだか、もう結果が出た気がするけど。」

「・・・?どうした、ユーリ?言いかけて止めるのは、

なんだか気持ちが悪い。」

「あぁ・・・うん、それがな・・・」

おれの予想が当たるのか、否かは、

この数十秒後に分かること。

 

 

 

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 2007/8/29

マニメでも想像力豊かだった陛下に、

その才能を十分発揮していただきました(笑)

この二人が結果指輪をするかどうかは、

皆さんにお任せいたします〜。

 

30.携帯電話(あったかロイヤルファミリー)

 

ぷるるるる・・・と。

柔らかな音色と共に枕の横で震えだした、

すべらかな青い機種。

二つ折りのそれを、かぱっと開けば、

その表示画面に、笑顔のグレタと、

彼女を挟んで微笑む二人の父親の姿。

「あ〜・・もう、起きる時間だよ!ユーリ!ヴォルフ!!」

「ん〜・・・んぁ、おはよ。グレタ。」

「ぅう〜ん・・・あと・・・少しだけ・・・」

「だめー!ヴォルフ、二度寝はだめーー!

 今日はグレタと一緒に遊んでくれる約束でしょ?」

娘の可愛い膨れ面に、何とか起きだそうと、

もがいているらしいヴォルフラムを、

ユーリとグレタは二人で見下ろしながら笑う。

そして良く似たいたずらっ子の笑顔で、こんなことを言う。

「もぅっ!起きなきゃ、この青い目覚まし鳥貰っちゃうよ〜?」

「ふっ・・ぐっ・・それは・・・」

妙なる音楽を奏でる、青い、目覚まし鳥。

それは以前ユーリが使っていた「けいたい」というもので、

先日のヴォルフラムの誕生日に、

「でんき」が無くても魔道で動くように改造された、

特別の目覚まし鳥。

寝起きの悪いヴォルフへ。

これでいつか一緒に目覚めて、一緒にランニング行こうな、と。

ユーリから、ヴォルフへの、贈り物。

「すまない・・グレタ・・・これは・・・」

ようやく重い体を持ち上げたヴォルフラムの白い首に

手を回し抱きつきながら、グレタは笑う。

「うそだよ〜!グレタはヴォルフの大事な目覚まし鳥を貰うより、

 ヴォルフが起きて遊んでくれるのが嬉しいの!」

そんな温かな言葉に、眠気を散らした婚約者を見て、

ユーリもまた笑っていった。

「やっぱり、携帯のアラームより

娘のモーニングコールが覿面だな!」

 

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 2007/8/31

待ち受け画面に、ほのぼの写真。

ロイヤルファミリーの休日の始まり。

 

 

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