29.指輪(近未来のユヴォ)
指輪って軍人向きじゃないんだよね、
着け慣れてないと、剣を持つとき邪魔なんだって、
と聞いて以来、おれはずっと悩んでいた。
例えばこれが地球式、永遠の愛の形だといえば、
ぼくは好まないのだが・・・と不機嫌そうに
呟きながらも受け取ってくれるんだとおもう。
でも、おれは・・・アレほど憧れだった
『給料三か月分の指輪』を用意できずにいた。
「ユーリ、難しい顔をしてどうした?
何か悩みでもあるのか?」
執務机に頬杖をつき、
新しい書類が運ばれてくるまでの僅かな時間を、
ささやかな休憩と思考の時間に当てていたおれに、
新しい書類の束を手渡しながら、
ヴォルフがそう聞いてきた。
「まぁね、一生に関わる悩み。」
「ふむ。お前の一生に関わる悩みといえば、野球のことか?」
「ひでぇなぁ。おれ、結構家族思いだと思ってるんだけど?」
くすくすと笑って、薄紅色の唇を押さえる白い指先が、
収まった笑いと共に、おれの額に伸ばされて、
こつん、と、つついた。
「兄上ならともかく、こんなところに悩み皺を作っても、
似合わないぞ、ユーリ。」
何なら相談に乗ろう、そういって、
ヴォルフは一客のイスをそばに置いて
そっとおれを見つめる。
その瞳を見ていると、どんなむずかしい問題でもこいつがいれば、
決して道を違えない・・・そう確信できた。
そのヴォルフをおれと結ぶ象徴、指輪。
やっぱり贈るか贈らないか、悩んでしまう。
「ヴォルフ。もし、おれが・・・」
おれはおれの抱えていた思いを話す。
話しながらおれの脳の端は、ごく近い未来のことを予測していた。
悩み事の全容にきっとヴォルフは、一瞬目を丸くして、
呆れたようにため息をつくだろう。
そうして、やっぱりお前の悩みなどその程度だろうなと
鼻で笑いながら、ほんの少し考えてこういうはずだ。
『三ヶ月の間、ぼくのために地球で働こうと考えているなら、
ぼくは指輪など要らないから、その時間をこちらですごして、
二人だけの時間を沢山作って欲しい。』
そしてほんの少し照れたように頬を染めて、
きっとこういう。
『それに、そんなものに頼らなくとも、ぼくとお前の関係は、
この眞魔国・・いや、世界中の知れ渡っているから、
指輪などなくとも、何の問題も無いだろう!』
そんで、照れ隠しはこう。
加えてきっとこういうんだ。
『まぁ、お前は浮気ものだからな。お前を繋ぎとめるには、
そういう装身具も悪くは無いがな!』
「・・・なんだか、もう結果が出た気がするけど。」
「・・・?どうした、ユーリ?言いかけて止めるのは、
なんだか気持ちが悪い。」
「あぁ・・・うん、それがな・・・」
おれの予想が当たるのか、否かは、
この数十秒後に分かること。
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2007/8/29
マニメでも想像力豊かだった陛下に、
その才能を十分発揮していただきました(笑)
この二人が結果指輪をするかどうかは、
皆さんにお任せいたします〜。
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