45.永遠の愛-eternal
love-(マニメ最終回以後設定っぽいユヴォ)
創主との戦いを終えて、地球へと帰ったおれ。
もう二度とは会えないと思っていたヴォルフ。
だけど、流れる運命の輪の中で、もう一度出会えた。
「創主のことを考えるとさ、今でもちょっと怖いんだ。」
「なんだ?急に。」
二人背中合わせに、休みなれた魔王ベットの上で座る。
「創主ってさ、人の恨みや妬みが元になっているとしたら、
いつか遠い未来に、また創主はきっと現れてしまう、だろ?」
悲しいけれど、人というのはそういうものだ。
向上心と言われるものと表裏一体で、
妬みや恨みというものも持っている生き物だ。
創主の元となったのは、そんな人間の暗い感情だとしたら、
いつの日かまたあの戦いの日々がやってくるということになる。
創主との戦いは、決して楽なものではなかった。
それをいつか自分に連なる未来の人たちが、
またあんな目に合うかと思うと、酷く心が痛んだ。
「だけど人を恨んだり妬んだりするのもまた、
人の業・・・というか、人を愛するのと同じ様に、
消せないものだろう。」
そんなおれの心の揺らぎを理解しているのか、
ヴォルフは意外に冷静だ。
「それはそうかもしれないけど・・・さ。
いつか遠い未来の人が、
またおれたちみたいな思いをして欲しくないって、
やっぱり考えてしまうよ。」
落ち込んで思わず俯いたおれの背中に、
合わせた相棒の背中が小さく笑って揺れたのを感じた。
「大丈夫だ。」
「なにが?」
「そんなに不安ならば、お前の成した事を、一語一句違わず、
語り継ぐようにすれば言いだけだ。」
まだおれの目の中に、なぜ?の疑問符が出ているのが分かるのだろう、
自身有り気に振り向いた、翠色の瞳がゆっくりと細められて、
ヴォルフはグレタに寝物語を語るように話し出す。
昔々世界は創主というものに蝕まれ、崩壊の一途をたどっていました。
けれどもそれを止めるため一人の男が立ち上がったのです。
彼の名は眞王。彼は自らと同じ力あるものたちを率い、
創主を打ち滅ぼそうと死力を尽くしました。
けれど創主は強大でした。
彼らは決死の覚悟で創主を捕らえ、
この後創主がこの地に仇名すことがないよう、
4つの箱に創主を分け、封印し、世界は平和になりました。
けれどもそれから4000年ののち、箱の封印は解かれ、
創主はまた世界を暗黒に染め上げようとしました。
けれどもまたそれを良しとせず、勇敢に立ち向かった王が居ました。
彼の名はシブヤユーリ。
眞王から数えて27代目の王でした。
王はその優しい気質そのままに、民を、そして世界を想い、
不屈の精神と、皆を救うという強い心で創主に対峙し、
彼らを打ち滅ぼすことが出来たのです。
くすぐったいような言葉で綴られた、
一連の事件の思い出。
一息に語ったヴォルフラムの瞳は変わらず柔らかいままで、
おれをじっと見つめていた。
「大丈夫だ。」
「何が?」
暖かな手がおれの手を包む。
「不可能だと思えるようなことを、お前はやり遂げた。
そしてその事実は後に続くものたちに、
こうしてぼくが語ったように、一つづつ渡されていく。」
続く言葉を想像し、無意識に力が入り、
重ねられた白い指先をきつく握ってしまう。
「もしまた創主が現れて、人々が混乱と暗黒に覆われそうになっても、
ユーリ、お前が残したこの物語の中に人々はきっと、
屈しない勇気と強い心を受け取って、また創主を打ち倒すだろう。
わかるか?ユーリ。
お前の成した事はそれほど価値あることなんだ。
お前は今、この世界を直面する脅威から守り、
そして、これから、100年、
そして1000年先の未来の世界も守っていくんだ。」
「ヴォルフ・・・」
暖かく優しい声が胸に染みて、
抱えていた恐怖が溶けていくような気がした。
鼻の奥をつんと突く、痛み。
その結果が涙としてあふれ出そうとするのを抑えるおれの頬に、
空いた手をやったヴォルフが笑ってこういった。
「まったく!そうかんがえると、
お前は本当に根っからの浮気者だなっ!
これから永遠に世界中の人々に
愛想を振りまくというのだからな。」
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2007/9/30
千年後の世界でも、優しい王様とそれを支える伴侶の、
優しい物語が響きますように。
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