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51.気の狂いそうな平凡な日常(君思う、陛下)

 

 何事もなく過ぎていく日々。

 朝起きて、お袋の用意した朝ごはんを食べ。

 時間ギリギリ、チャリを飛ばして、学校に向かい。

 授業という名の第二の睡眠時間に突入。

 その合間に早めに減った腹を、持たされた弁当で満たし、

 昼からに備えて、パンを買いに行く。

 そしてまた、昼寝に突入だ。

 一日を終えて、あとすることといえば、

 野球のための体作りに、ロードワークに行くくらい。

 体を動かした後はまた腹が減るから、

 おふくろの作った夕食をほおばり、

 野球中継を見て、帰って来た兄貴に、

 「たまには勉強をしろ!」と頭をぽかりと小突かれて、

 部屋に戻って、眠りに付く。

 

 ごく、当たり前の、毎日・・・なのに。

 16年以上も、繰り返してきた日々・・・なのに。

 

 「それがこんなに単調な毎日の繰り返しだったなんて、

  初めて知ったよ。」

 

 

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 2007/10/12

 日常だったものが、もう一つ出来て、

 そのどちらも大切だとしたら、

 片方だけの生活ってとっても単調で、つまんない日々ですよね。

 

 

52.そのままの君(似たものユヴォ)

 

 城下をうろつくのが好きなユーリは、

 よく連れを連れて町に出る。

 今まではコンラートやヨザックが相手として多かったが、

 最近ではぼくをよく誘ってくれるようになって嬉しい。

 

 そしてその日も、二人で城下に出かけた。

 

 町は活気があって、賑わっていた。

 出店の中からは、呼び込みの声が響く。

 変装もせず、二人で並んで歩くぼくらに、

 一人の若い女が駆け寄ってきた。

 「ユーリ陛下!ヴォルフラム閣下!」

 「ん?」

 頬をほんの少し染めてやってきたその女の腕の中には、

 柔らかそうな布で包まれた小さな塊が合った。

 「陛下、閣下、視察の途中に申し訳ありません。

  あのっ、この子にどうぞ、祝福を頂けませんか?」

 覗き込めばその塊は、もぞもぞと動いて布の中から

 小さな手をひょっこりと出した。

 「わぁ!赤ちゃんだ!かわいいなぁ〜。」

 子供好きのユーリのこと。

 まるくきらきら光る子供の瞳に、微笑むユーリと、

 それを覗き込むぼくが映っていた。

 「祝福かぁ。でも、そういうのっておれより  

  村田の方の仕事だと思うんだけど。」

 そう言いつつも満更でもない顔で、

 柔らかそうな子供の頬を指先でつついている。

「こういうのは気持ちの問題だ。

 それにお前は尊い双黒だからな。

その光明にあやかりたく・・・いたっ・・っ!」

 伸ばした小さな手が、ぼくの髪をつかむ。

 とっさに外そうとするが、それは存外強い力でなかなか外れない。

 焦るぼくとは裏腹に、赤ん坊はなぜかとても楽しそうに、

 ぶんぶんと腕を振り回す。

 「あ〜・・あ〜・・・」

 「いた・・っ・・・いたい・・っ!」

 「わわっ!ヴォルフ、大丈夫か?!

  でもなんか分かるなぁ〜、

  ヴォルフの髪、触りたくなるのって。」

 ユーリが小さな手を解いていくと、

 その手が今度はユーリの指を掴む。

 そしてまたしばらく、ちっちゃいなぁ、

 可愛いなぁと、繰り返したユーリが、

 子供とその母親に祝福の言葉を添えると、

 母親はとても嬉しそうに、

 そして何度も何度も礼を述べて去って行った。

 引っ張られた髪を撫で付けながら、

 ユーリに目をやれば。

 赤ん坊に触れた手を、なにかを思い出すように

 開いたり閉じたりしていた。

 子供が好きなユーリ。

 赤ん坊に触れている間、とても嬉しそうな顔をしていたっけ。

 そう思い返してしまうと、ふいに申し訳ない気持ちが溢れてしまう。

 ぼくとの結婚をユーリが決めた今、

 ぼくらの血を受け継ぐ子を、この手に抱くことはないだろう。

 どこかで子でも生して来れば話は別だが、あのユーリの性格上、

 ユーリと血のつながった子供を抱くことは、ほぼ、ない。

 ユーリはそういうやつだから。

 「ヴォルフ、ごめん・・・」

 「ユーリ、すまな・・・え?」

 思いのままに侘びを口にしようとしたぼくより一瞬早く、

 ユーリがぼくに声をかけた。

 「ユーリ・・・。なにを・・あやまってるんだ?」

 「ん?あぁ・・・赤ちゃん見てたらさ・・・」

 ぼくを見上げたユーリの瞳は、ほんの少し寂しそうで。

 「おまえ、おれと結婚するってきめたろ。そうしたら、さ。

  お前と血のつながった子供、

  抱くことってないんだなぁって思ってさ。」

 お前に似た子なら、きっときらきらの金髪に、

 宝石みたいな瞳を揺らして、花が綻ぶ様に笑うんだろうなぁ・・・

 そういうと、また自分の手の平に視線を戻してしまう。

 「ユーリ・・・」

 今度はやけに笑いがこみ上げる。

 同じものを思いに持って、ぼくらはここに居るのだと、

 そんな風に思えたから。

 「馬鹿だな、お前は。」

 「ヴォルフ・・・。」

 「ぼくはおまえと共に歩くと決めた今を

  後悔したことなど無いぞ。

  子のことなら、おまえと結婚することで

  グレタを得ることが出来る。それに・・・」

 

 ______ぼくは、いまのユーリを愛しているから。

 

 

 

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2007/10/14

 「でも、もしお前似の娘が生まれたら、

  どんな子だろ?って考えちゃうなぁ。やっぱり。」 

 「ぼく似の娘か・・・。ぼくは母上にそっくりだからな。

  ぼくに似ているというだけでいいのなら、

  母上の幼少の頃の絵姿を見せていただくと、

  少しは想像できるかもな。」

 「そうか!城に帰ったら探してみようっと!」

 「とはいっても、ユーリ、お前の子供は見てみたいな。」

 「え〜、おれ?おれは、どっちかって言うとおふくろ似だから・・」

 「では、今度地球にいったら、

  ジェニファー母上の幼少のみぎりの絵姿を見せていただこう!」

 「は?お袋の子供の頃の写真?!そんなの、おれもみたことねぇよ!」

 ・・・・なんて、話してたら楽しいなぁ。

 

 

53.残酷な夢(晩年ユヴォ)

 

 信じてた。

 何もかもを。

 世界が平和になったなら、

 ぼくらも幸せになれるのだと。

 

 「ユーリ・・・」

 名前を呼べばいつもきみが側で微笑んで、

 子供っぽいいたずらや悪巧みを耳打ちしてくる。

 その内容に、笑ったり呆れたりしながら、

 それでもぼくも側にいた。

 いつも、いつまでも、側に。

  

 「・・・夢、か。」

 脳裏に浮かぶのは、きみと共に歩いた、

 80余年の中で一番幸せだったあの頃のことばかり。

 だのに、瞳を開けてみるのは、いつだって悲しい現実。

 きみは側にいなくて、

 ぼくはいまでもここにいる。

 きみと共に歩いた、80余年の思い出と共に。

  

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2007/10/16

 ふと寂しくなると、思い出の中に逃げたくなりませんか?

 

54.ピーターパンシンドローム(ユヴォ)

 

 「おれ、初めてお前を見たとき、  

 本気で天使が舞い降りてきたんだって

 そう思ったんだぜ?」

 間違いの婚約から、数え切れない壁を乗り越え、

 共に日々を歩いて、ぼくらが名実共に『婚約者』となったのは、

 つい最近のこと。

 ユーリの少し骨ばってきた大きな手のひらがぼくの髪を撫ぜる。

 「瞳がきらきらしていて、宝石みたいだって何度も思ったし、

  男同士だ〜って否定してても、  

 きっと無意識に欲してたんだろうなぁ。」

 その嬉しげな視線と声音、それと優しい手の平に、

 ぼくは微笑み返すけど、

 その実、ほんの少しの恐怖を胸の奥に見つけた。

 ____本当は・・・ぼくは怖い。

 ぼくを好きだというユーリ。

 出会った頃とは真逆といっていいほど、

 はっきりした言葉や態度・・・恥ずかしいほどの賛辞の連続を、

 事も無げにぶつけてくるから、

 嬉しい反面、かなり照れてしまうのだが。

 「もし、ぼくが、大人になって、  

 『天使のような』姿ではなくなってしまったら?」

 正直、ウルリーケが羨ましい。

 ぼくが年を取り、少しづつ青年のそれに近づいていって、

 もし、ユーリの好きな「天使」の姿から離れてしまったら、

 その時は・・・・。

 

 また、男同士と頑なに口にしていた、

 あの頃に戻ってしまうのではないかと。

 ぼくはまた、ユーリを失うのではないかと。

 

 あぁ・・・・ぼくは魔族でよかった。

 そして、ユーリが混血でよかった。

 だって。

 その生まれの差は、ぼくの老い行く姿をユーリから隠してくれる。

 

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2007/10/19

「時計の針」とは逆の視点で書いてみました。

長所は短所、短所は長所。

同じ問題でも、見方を変えればこうなる。

 

 

55.人形(さみしんぼ三男)

 

 ぽかんと目を見開いて。

 長年反抗期だった弟は、ソファーに座っていた。

 ユーリが昨日、突然地球に戻ったためだろう。

 彼の不在の寂しさを埋めてくれる愛娘の帰郷も、

 まだ一月ばかり先になる。

 軍の仕事も大きな山を越え、ようやくあいた一時。

 本当なら弟は、愛する人とのささやかな休日を

 しずかに過ごす予定だったのに。

 ぷつりと切れた、幸せな時間。

 手に握られた空っぽの陛下の上着が、

 物悲しさを増していく。

 時の中に取り残された、弟は。

 まるで腕のいい人形師が丹精込めて作った、

 美しい人形のように、

 整った眉目をぴくりとも動かさず、座っていて。

 それはとても美しいのに、何かとても物足りなくて。

 「俺に噛み付いてくれていいから、怒ったり、拗ねたり、

  そんなヴォルフのほうがいいな。」

 部屋に入って、彼の頭をひと撫ですれば、

 きっと希望の姿を見ることが出来るだろう。

 だけど。

 「やっぱり、陛下にもヴォルフにも、笑っていてほしいって、

  そう思うのは俺の我侭かな?」

 

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2007/10/24

 勝手に送り返されてしまう陛下だと、

 結局こういう思いをさせちゃうんですよね。

 もしかしたらこの話で冷静っぽい次男も、

 へたれてるのかもしれませんが。

 

 

56.ハルシオン(三男と愛娘)

 

 眠たがりのぼくにしては珍しく、眠れない夜。

 寝酒も運んでもらって、ほんの少し口に含んだけど、

 一向に眠気は訪れない。

 理由は分かってる。

 ユーリが急に帰ってしまったから。

 「まったく・・・帰りの挨拶も出来ないというのは、

  何度体験しても切ないな。」

 別れの挨拶の無い別れは、戦いの日々を思い出させて。

 もう二度と、会えないのではないかと、

 思わずそう考えてしまうから。

 ため息をひとつ。

 そしてそれを隠すように、酒をもう一口。

 グラスを傾けて、空になった硝子の底を見る。

 もう一杯だけ飲もうかと瓶を手繰った。

 と、そのとき躊躇いがちに扉を叩く音がして、

 ちいさなちいさな声で自分を呼ぶ声が聞こえた。

 「グレタ?」

 グラスも瓶もチェストにおいて、

 足早にドアへ近づき、来客を招き入れる。

 「ヴォルフ、あのね、グレタねっ・・・そのっ・・・」

 抱きしめた枕のレースと自分とお揃いの夜着の裾が揺れる。

 聞かなくてもすべてが分かる気がした。

 彼女の悩みもきっと自分と同じだろうから。

 「おいで。話を聞こう。ただしベットの中で。」

 ぱっと明るく晴れた娘のその顔に、胸の奥が暖かくなる。

 抱きしめて眠れば、体もきっと。

 二人で一緒に、きっと。

 

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2007/10/27

 人肌って結構眠れます。

 

57.裸婦の肖像(ユヴォで下心陛下)

 

 「お前の仕事が終わらないから、

  趣味を充実させていたぞ!」

 そういいながらふんぞり返る婚約者の服からは、

 ほんのりとクマハチ絵の具の悪臭がした。

 「絵、描いてたんだ。」

 「あぁ。ちょうど母上が帰って来られてな。

  新しい絵のモデルになってもらったんだが・・・」

 「絵のモデルねぇ。ツェリ様なら似合うだろうなぁ。」

 「ぼくはお前を描くのも気に入りなんだがな。

  まぁ、母上だから久しぶりに裸婦で描かせて

  頂くお願いもしやすかったが・・・」

 「裸婦・・・は、はだか??!」

 『裸婦』というその言葉に思わず食いついたおれは

 欲望丸出しでヴォルフラムに詰め寄った。

 「え?え?マジで?描きあがってるの???

  ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと見せてよ〜。」

 「そのきらきらした笑顔が気に喰わないが・・・。

  まぁいいだろう。久々にいい出来なんだ。」

 嬉しそうに手を引くヴォルフラムに連れられて、

 おれもわくわくしながら部屋に向かう。

 頭の中一杯のちょっぴりピンクな妄想に気を取られて。

 だからおれはすっかり忘れてたんだ。

 おれの婚約者の画力が、

 この世のものとは思えないくらい、

 芸術的すぎだったということを。

  

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2007/10/29

 芸術とエロは違いますよ、陛下。

 

58.セックスと純潔(事後ユヴォ・・・12禁??)

 

 大人の方だけ、どぞ★

 

 

 初めて繋いだ、心と体。

 今までの人生で積み重ねた沢山の常識は、

 彼をつながる相手ではないと、そう判断してきたけど。

 捧げられる忠誠。

 浴びるほどに与えられる愛情。

 気づかないうちに離れられないくらい依存して、

 これが恋を超えた、もっと深くて切れないものだと思ったとき、

 自然と体を繋げていた。

 「男同士、だったんだけど。」

 凄く満たされた気持ちで、横で眠るヴォルフの顔を眺める。

 疲れきって、いつもの寝言すら出ないその姿に、

 無理させたなぁとか、申し訳ないなぁとか、

 そういう気持ちと一緒に、

 ただただ愛しさが湧き上がってくる。

 「おれの我侭一杯押し付けてごめんな。

  でも・・これからもよろしく、ヴォルフ。」

 布団の隙間から見える白い頬に、口付けを一つ。

 昨日より、もっと好きになったきみに。

  

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2007/10/31

 愛の無いHには反対!・・だそうですから。

 

 

59.唇から愛(恋の芽生えとユヴォ)

 

 身内だけの小さな晩餐会で、

 調子に乗って酒を飲んだヴォルフが、

 酔った弾みでおれにキスしてきた。

 当の本人はかなり泥酔状態だったせいで、

 おれに口づけたまま爆睡し、

 挙句翌日は何も覚えていないという体たらくだ。

 「ちくしょ〜!ヴォルフめっ!

  ・・・ぜってーありえないっておもってたのに。」

 男同士の恋愛なんて無理だってそう思っていたのに。

 なのに。

 目をつぶると思い出すんだ。

 柔らかな唇。

 近づいてきた無防備な顔。

 睫に纏う、光の粒。

 酒の香りの中に混じる、甘い香り。

 「あぁぁぁぁぁぁぁ〜〜っっ!

  もうっ!もーーーーっ!!!!」

 『想像するなっ!したら駄目だっっ!!!

  わかるだろっ!?渋谷有利!!!!!』

 がしがしと頭をかきながらそう自分に言い聞かせる。

 でも逃れようとすればするほど、

 濃くなる彼の残像にさすがのおれも根を上げた。

 「でも・・・キスして気持ちが固まるって・・・

  あり、なのかなぁ?」

  

 

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2007/11/2

 ありでもいいですよ。

 

60.長い夜(初々しいユヴォ)

 

 「あ、あ、あ、あ、あのさぁーー、ヴォルフ?」

 「??なんだ?」

 裏返る声で名前を呼ばれたヴォルフは、

 怪訝そうに振り返った。

 「は、は、は、はなっ、話があるんだ!今、いいかな?」

 「あぁ・・・構わないが・・・。」

 ユーリの様子がおかしい。

 それはよく分かるのだけれど、それ以上に進まない話に、

 ただ小首をかしげて先を待つだけだ。

 だけれどユーリの顔は真剣そのもので、

 打ち切って寝てしまうのは申し訳ない

 「そ、それっ、それがさぁっ!」

 「・・・・言いたいことがあるならはっきり言え!

  このへなちょこ!!!」

 睡魔も共に振り切ろうとするヴォルフラムのその言葉に、

 ほんの少したじろぎながらも、

 それでも今を逃すまいとユーリは言葉を繋ごうとする。

  

 そうして。

 朝焼けの少し前、ようやく告げられた、その想いに。

  

 「・・・・ほ、本当・・か?」

 「ホント・・だよ。今まで、言えなかったけど。」

 「嘘じゃないんだな?」

 「嘘言ってどうするんだよ。」

 「というか、ぼくは寝てはないな!?  

 起きて、ちゃんと聞いて・・・。

 ・・・これは夢じゃないんだな??!」

 「起きてるよ!!てか、一世一代のプロポーズを、

  夢の一部にしないでくれよ!頼むからっ!」

 

 結局その日の朝日が空のてっぺんに昇るまで。

 押し問答は続く。

 

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2007/11/4

一番長い夜は、一生で一番素敵な日。

 

 
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