10万HIT有難うございます★

 

81.王様(ユヴォ・三男の決意)

 

 守られる価値を見出せないユーリは、

 政に関すると、いつもどこか俯瞰で見ている。

 その身一つで、心一つで、

 沢山の民を、導いている事実があるのに。

 「王の悲しさは王にしか分からない。

  それを変わるすべはないのだから・・・。」

 だからぼくはいつも側にいよう。

 きみの帰れるただ一つの場所になって。

 

 

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2008/1/14

 相棒の決意。

 

82.生徒会室(ユヴォ?)

 

 「渋谷と生徒会室って一番縁が無い気がしてたんだけどなぁ・・・・」

 高校も3年になり、大学に向けての決戦のため、

 誰もが引き受けたがらなかった資料の整理を、

 半ば押し付けられる形で引き受けたおれに、

 同じように仕事を押し付けられた同級生がそんなことを言った。

 「まぁな。自分でもそう思うけど・・・。」

 答えを返しつつ、おれの手は自然に、

 無造作に積み上げられた書類のやまを、

 用途別に、期限別に分けていた。

 この方が効率よく仕事が進むのだと、

 そういって笑ったきらきら煌めく翠の瞳を脳裏に浮かべながら。

 

 

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2008/2/17

 魔王業も板についてきました

 

83.空白

 「例えば、お前に会わなかったとしたら?」

 そんな謎かけを持ち出したユーリに、

 ため息を一つ。

 「・・・・だったらこちらも聞こう。

   お前に出会わなければ今のぼくはどうだったろう?」

 

 落ちる空白。

 

 「・・・・わかんねー。」

 「ぼくも同じだ。」

 

 結局、過ぎていってしまった時を振り返っても、

 続く未来を見つけられないのは、

 今、まさに、ぼくらが未来を歩いている証拠。

 

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2008/3/29

 卒入園や新生活を始める、区切りの皆様に、お祝いをこめて。

 

84.なかったことにして(ユヴォ)

 

 夏休みの宿題に追われながら、

 頭を抱えて書き込んでは消して、

 また書き込んでは消して、ため息交じりで、

 消しカスの山を作る渋谷。

 その渋谷が、頭の削れた消しゴムを眺めて、

 ポツリポツリと呟いた。

 「過去が消せる消しゴムがあればいいなって、

  思うときがあるよ。」

 「そんな消しゴムが合ったら、君はどう使うんだい?渋谷。」

 う〜っと唸って、眞魔国での色んな事件を思い返している。

 消したいこと消したいことをと頭をひねる渋谷。

 「でも・・それはまぁ、そんだけ悩んでも出ないんだったらさ、  

 終わりよければ・・・じゃないの?」

 「まぁ、そうだな。うん、まぁどれも一応解決してるか。

  あ!」

 一つだけ思い当たった、と渋谷は呟く。

 「ヴォルフのこと、弾みでひっぱたいた、

  あの日を消したいな。」

 その言葉に、僕は思わず目を見開いた。

 「後悔、してるの?」

 「うん・・・まぁ、半分だけ。」

 僕から見ればその偶然は、渋谷とフォンビーレフェルト卿、

 それと眞魔国にとって良い方に転んでいると思っていた。

 驚きで一瞬声を失った僕に渋谷は続けた。

 「あのきっかけのおかげで、今があるってよく分かってる。

  でもさ、ヴォルフのこと、本当に好きになった今、

  あんな形の求婚になってしまったのって

  やっぱりなんだか悔しいんだ。」

 だから・・・できたら半分だけ、消せたらいいのにと。

 真顔の渋谷に僕は言う。

 「馬鹿だなぁ〜、渋谷。君たちに必要なのはこっちだろ?」

 渋谷の、使用感の薄いペンケースを漁って、僕はペンを取り出した。

 「マジック?」

 頭をひねった渋谷をつついて、

 僕はほんの少し意地わるく笑っていった。

 『君らはさ、消せないペンで未来を書けばいいんだよ。』

  

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 2008/4/9

いまは消せるボールペンがあるらしいですが。

 

85.(ユヴォ)

 

 ふわり、と。

 空から舞うそれは。

 いくつになっても、心躍らされるもので。

 

 「まったく!いくつになっても、ユーリは子供だな!」

 口ではそんな事を言っていても、

 彼の瞳の奥を見れば分かる。

 本当はおれなんかより、

 ずっと雪に心に躍らされているってことが。

 「・・・ほんと、いつまでも子供なおれだからさ。

  お前も同じ気持ちで居なきゃ、

  付き合いきれないだろ。だから・・・」

 さぁいこう、と。

 そっと手を差し出せば。

 「ま、まぁ、婚約者のお前が望むことを

  無碍にはできないからなっ!」

 相変わらず可愛くない一言を吐き出してから、

 おれの手を掴んだ。

  

 

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2008/4/12

 三男操縦の美味くなった陛下。

 最新のマニメのコメントの方が微妙だ・・・。

 

86.殴り合いの喧嘩(ユヴォ)

 

 すべてはここから始まった。  

 あの日あの時おれがカッとせず、もっと冷静でいられたら。

 いや、もしもヴォルフがグウェンみたいに冷静だったなら。

 おれたちはあの日、偶然に繋いだ『婚約者』というこの関係を

 手にすることはなかっただろう。

 そうしてそれに続く日々も同じく手にすることは無かったのだ。

 「そう考えると、悪くないな。」

 目の前にいる婚約者の金髪を見ながら、

 自分の短気を初めて良かったと思えた瞬間。

 

 

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2008/4/19

 偶然が必然に変わる瞬間。

 これ随分前に書いていたのに、マニメ第3期第3話の後に

  これを上げることになるとは。

  ちょっと感慨深いものがありますね。

 

87.親不孝(多分ユヴォ)

 

 娘が欲しいといった母に。

 将来おれに可愛いお嫁さんが来ると良いのにと願う母に。

 きらきら〜で可愛いものが大好きな母に。

 おれはお袋が夢見てるもの、全部手に入れてるんだって、

 すっごい親孝行者だろって、そう胸を張っていえない。

 二人のことをお袋に告げれば、

 見せて見せてってきっというんだ。

 「ゆーちゃんの娘ってことは私の孫でしょ?

  グレタちゃんに会いたいわ!  

 そしてね、可愛いお洋服着せて、一緒にお出かけするの!」

 飛び跳ねてお袋は嬉しそうに笑うだろう。

 「ゆーちゃんの結婚相手って、天使みたいなんですって?

  きらきら〜でふわふわ〜で

  白い羽なんかついてそうな子なんでしょ?」

 まだ見ぬヴォルフを思ってきっとそういうんだろう。

 でも、おれは二人をこちらに連れてくることも、

 お袋をあちらに招待することも出来ないから。

 

 

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2008/4/24

 声を大にして自慢したいのにな。

   

 

88.長距離電話(想う陛下)

 

 「お〜い、これ、聞こえてるかぁ〜?」

 眞魔国への道を一番開いてくれた噴水に指先を浸して呟く。

 「おれあと一週間で、期末試験終わるから。

  そしたらそっちに行くからな〜!」

 想いを込めて見つめれば、水面に弾く光が、

 君の瞳に見えて。

 水中から抜きさった指先から、雫が水面に落ちて。

 またきらりと光が跳ねた。

 

 

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2008/4/29

 眞魔国では三男がきっと、馬上で青空を見つめていることでしょう。

89.ココア(のんびりユヴォ)

 

 「大分板についてきたな。」

 窓の外に掛かる月が傾く頃になっても、

 蝋燭の炎の元、終わらない仕事を続けていたおれに、

 ヴォルフが差し出した、温かな湯気を保ったカップを、

 おれは笑って受け取った。

 白い湯気が含む、甘い香りを胸に一杯吸い込んで、

 おれは一口それを含む。

 「ありがと、ヴォルフ。  

 あぁ〜・・・ココア、甘くて美味いな〜。」

 「疲れたときには甘いもの、は、お前の口癖だろう?」

 自分も一口、口に含んでヴォルフも笑った。

 「さぁ、もうひと頑張りだ〜!」

  

 温かな飲み物と優しい一時で得た力は、

 何よりの活力。

 

 

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2008/5/3

 さぁ、もうひと頑張りだ。

 ユーリより私のほうが・・・ですけど。

 

90.古い映画館(寂しい陛下)

 

 「渋谷、最近ここに通い詰めって聞いたんだけどどうしたの?」

 「ん?いや〜・・・・別に。」

 カタカタと、単調な音を響かせて。

 回る映写機からは、画質も音質も悪い、古い映画が流れ出す。

 音声は途切れ、画像も飛ぶ、古い古い映画館。

 揺れながら映るセピアの画像の中に、君を、見つけて。

 「あ〜・・・なるほど・・・この子、  

 フォンビーレフェルト卿にそっくりか。」

 「ま、ね。」

 「あれぇ〜?否定しないんだ。」

 耳に届いた村田の声など聞こえぬ振りをして、

 規則的な音に合わせて揺れる画像の中の、

 偽者の『君』の中に、君の面影を探した。

 

 

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2008/5/9

探すとも無しに探してしまう、君の面影。

 
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