微妙な19のお題 04 >> 誰にもいえない、こんなことは。そう、あなたにも
「今日は重要な書簡を届けに行って来る。」
グウェンダルから直接言い渡された『おつかい』を、
誇らしげに俺に報告しながら出かけていったヴォルフラム。
彼の実家・・・というか、本拠地であるビーレフェルト地方は、
王城から早馬を使っても片道2日は掛かる。
ということは、これから約4日間は「へなちょこ!」だの「尻軽!」だの、
罵声を浴びせられながらヴォルフラムに追いかけられなくて済むという計算だ。
念願の一人部屋生活が一時でも手に入る喜びに、
ヴォルフラムが葦毛の馬で門を出るのを見送った後、
思わず万歳三唱をしてしまった。
そして、その日の夜。
王様風呂に、手足を伸ばして、やれやれどっこいしょ〜とのんびり浸かり。
王様ベットに、どっかりと大の字で、眠る。
あぁ、これこそおれの望んでいた、平和な日々!!
そして朝。
ベットから蹴り出されることもなく、目覚めた清清しい朝。
いつもどおり、コンラッドと朝のランニングを終えて部屋へ帰る。
「ただいま〜、ヴォルフ!もうそろそろ起き・・あ、そっか。」
気付かぬうちに日課になってしまっていたらしい。
誰もいないベットにおもわず、話し掛けてしまう。
「昨日出かけたばっかりだったっけ。」
今頃はまだ、ビーレフェルトに行く途中の道だろう。
「この数日間を満喫しなきゃな。」
そう思って、食事をとって、執務に出て。
息抜きに城の中を歩きながら、ちょこっとずつ感じ始めた違和感。
「ほら、ヴォルフ!新しい絵がさぁ・・、あ。」
「ほら、見てみろよ、ヴォルフ!コッヒーが・・あ。」
「あ〜あ、腹減った。今日の飯はなんだろうな〜?な、ヴォル・・あ。」
・・・結局、常に一緒にいたからどうしても呼んじゃうんだろうな。
我ながら、恥ずかしい。
「あ〜・・もう!飯食って、風呂入ったら、ささっと、寝ちゃおうっと。」
な〜んか調子が出なくって、全て支度を終えて、ベットに飛び込んだのに、
結局・・・眠れない。
「あ〜・・・っっ!!!なんだよっ!もぅ!!!」
このベットってこんなに広かったっけ?
この掛け布ってこんなに冷たかったっけ?
この部屋ってこんなに静かだったっけ?
この場所ってこんなに淋しかった??
頭の中を過ぎる、たくさんのハテナ。
いつもと違うのは、どこなんだろう。
何がそんなに、不安なんだ!?おれ!!
頭を抱えて、転がりまわって、ハタと気付いた、新事実。
「あぁぁ〜〜〜〜〜〜っ!?・・・マジかよ?」
たった一つ、昨日と違う今日。
その原因は・・・きっと、ヴォルフ。
このベットが広く感じなかったのは、
ハニーブロンドの君がいつも側にいたからで。
この掛け布が温かかったのは、
潜り込んできた白磁の肌がとても温かかったからで。
この部屋に音が満ちていたのは、
柔らかな唇から不似合いな寝息がいつも零れていたからで。
この場所を、淋しいなんて感じなかったのは。
いつだってエメラルドの瞳がおれを優しく見つめていたからで。
「えぇぇぇぇっ〜〜〜〜〜〜っ!?・・・嘘だろ?」
こんなにも、君が、おれの生活に溶け込んでる。
気付かないうちに、こんなにも。
こんなにも、君を、欲しているおれがいる。
誰にもいえない、こんなことは。そう、あなたにも。
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