微妙な19のお題11>今だけは背中を見ててあげるけど、いつかは

 

 

人間も魔族も、動物も。

何一つ隔たり無く接する、ユーリ。

男も、女も、子供も、老人も。

彼の前では、全てが等しくい愛しい命たち。

 

彼が、いろんな人の手を取る。

ぼくは、触れなくっても知っている。

彼の、温かさを。

その手がくれる、幸せを。

そして僕はそれを、背中から見ている。

 

それは、とても優しい光景で。

それはとても、心温まる風景で。

でも、それを彼の背中から見ているぼくが、

酷い戦慄を感じていることを、きっとユーリは知らない。

 

 

ユーリが、誰かの手を取る度。

ユーリが、誰かに微笑みかける度。

ぼく以外の者たちに与える、ユーリの優しい心を感じる度。

ぼくは。

ぼくは。

そのユーリの背中が、幼い頃見た光景に重なって見えるんだ。

 

幼い頃、大好きな母上が、微笑みながら、

知らない男の手をとって、歩いていく、背中を。

幼い頃、大好きな兄達が、銀色の剣を腰に下げ、

ぴんと張った綺麗な姿勢で、歩いていく、背中を。

ぼくを置いて、歩いていく背中。

呼び止めたら、振り向いて微笑んで、でも、誰も足を止めてはくれなかった。

 

 

婚約者という名ばかりの立場にいて、

背中を見ているだけしか出来ない、ぼく。

ユーリは、ぼくが側にいることを、許しているけれど。

ぼくも、離れることなんて考えられないけれど。

でも。

置いていかれたらどうしようって、ずっとずっと不安だってことを、

彼に伝えられたら、いいのに。

たった一つでいい。

証が欲しいのだって、言えたらいいのに。

 

「おいこら、へなちょこ!この浮気もの!!」

だから精一杯。

あなたが、側にいるぼくを忘れないように。

嫉妬という名の、この気持ちをあなたにぶつけている。

ぼくを置いて、背中を向けて去っていってしまわないように。

束縛という名の、証でぼくの側にいつまでもいて欲しいと思っている。  

   

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2005/3/7

お題とは離れてしまったけれど・・・。

ヴォルフが焼もちを焼く姿を見るたびに、「かわいい〜☆」と思う反面、

「この子は何か怖がってるのかな〜?」なんて思ってしまう時があります。

素直で聡い子だから、子供心に「淋しいな、今だけは一緒にいて欲しいな。」って思った時だって、

「でも母上は魔王だから。」とか「兄上たちは国に為に頑張ってるんだから。」って、

一杯我慢してきたんじゃないかな〜なんて想像してみたり。

我儘言えるのは、焼もち焼けるのは、陛下に甘えてるからなんだろうな〜。

つか、「ヴォルフの幼少期」は捏造長編として、書いて見たいなと思う今日この頃です。

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