微妙な19のお題 15>好きじゃない、なんて言っても
本当は、コンラートのこと、好きなんだろ?
そう問えば。
「嫌いだ!だいっ嫌いだっ」
耳まで真っ赤になりながら、ヴォルフラムが答える。
・・・じゃ、なんで赤くなってんの?何て問えば、眦を吊り上げて、
「うるさ〜いっ!!大体お前は・・・」
と、お説教攻撃。
人間の事をそう悪いもんじゃないと思い始めているくせに、
「低俗で野蛮な種族めっ!!・・・まぁ、グレタは別だが。」
と、相変らずのこの態度。
街中散策だって気に入ってるくせに、
「全く!下々の者と軽軽しく関わるとは・・・」
と、ぶーぶー文句を言っている。
わがままぷーの愛称を欲しい侭にしている割りには、
なかなか素直に気持ちを吐き出さない、君。
だけど、おれに対してだけは、いつだって偽りのない君。
「バカか、お前は!それは当たり前の事だろうっ!」
傷に塩を塗るような発言が、おれの崩れそうになる根性を叩き上げる。
「本当にそれでいいのか?お前の本心なんだな?」
優しく諭す声が、熱くなったおれの心を静める。
今は誰よりも、この背中を預けていられる、君。
「何度も言っているが・・・ぼくは本当にお前を愛しているんだ。」
心の奥底まで映す様な透き通った瞳を、まっすぐに向けて。
真実がほしいと呟く、君。
応えてやりたい、その気持ちに。
素直じゃない君が、おれにだけくれる、真っ直ぐな想い。
全く。
これで男じゃなければ、おれだってこんなに苦しむ事はなかったのに。
おれが真剣に悩んでいる時に、少し離れたところで立ち話に興じている
ヴォルフとムラケンが視界に入る。
「渋谷って実は・・・」
「え?!・・・そ、そうなのか?」
「そうだよ〜!知らなかったの?フォンビーレフェルト卿。」
ムラケンにからかわれているのに、ヴォルフときたら真顔だし!
「だ、大丈夫だぞ!そんな事くらいで、お前を見捨てたりしないからなっ!」
おい!大丈夫だとか言いつつも、目が涙目だぞっ!
一体何を吹き込まれたんだ!???
「ヴォルフ!またお前、ムラケンに何か吹き込まれたろ!?」
「やだな〜、渋谷。ちょっとした冗談だよ。」
「なにっ!?では、今のは嘘か!?大賢者っ!!!」
三つ巴で大騒ぎ。
それは最近では「眞魔国のよくある風景」の一つだ。
「全く毎回毎回・・。吹き込む奴も吹き込む奴だけど、騙される奴も騙される奴っ!」
「なにぉ〜っ!?ぼくは真剣に心配してやってるのにっっ!!」
お馴染みの言い合いを割って入るように、ヴォルフを後ろから抱きすくめて、笑うムラケン。
「いいじゃない〜。早くも可愛い婚約者を獲得した渋谷にささやかな嫌がらせくらい・・・。」
その光景に__________一瞬、心が凍った。
だけど、間髪いれずにヴォルフがムラケンを振り解き、
こともあろうに剣の柄に手をかけて、鼻息荒く突っかかっている。
「ふっざけるなっっ!ぼくはユーリの婚約者だぞ!婚約者の目の前でなんてことをっ!」
「まぁまぁ、フォンビーレフェルト卿!落ち着いて〜!!!」
「ふ、ふん!おれたち男どーしだしっ!おれは別になんとも思わないしっ!!!」
「ユーリ・・・」
でも心の中ではホッとしてた。
絶対にヴォルフはムラケンを振り解くんだって、分かってるから。
ヴォルフはいつだっておれを好きでいてくれる。
たとえ俺が「好きじゃない」なんて言っても。
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