微妙な19のお題 17 > 溢れ出てくるのはどろどろとした醜い感情

傷が癒えて、ようやく動けるようになったから、城を散策したり、

兄上の執務室に足を運んだりする程度に活動していたら。

酷くユーリが口煩くなった気がする。

「ヴォルフ、どこいくんだよ?」

「今日は兄上のところに書簡を頂きに・・・」

「そんなん、別の奴に頼めよ。」

「頼んでぼくは何をするんだ?今のところ別段執務らしい執務も取れないのに・・・。」

「お前はここにいるの!」

凄い形相で椅子を引き、無理やりにぼくを座らせる。

「ユーリ、ぼくは・・」

「ヴォルフは!」

「え?」

「ヴォルフは、おれの、護衛、しててよ。」

消え入りそうな声。

こんなユーリ、見た事がない。

「ユーリ?」

覗き込んで名前を呼べば、顔を逸らされた上、ユーリの腕の中に抱きすくめられてしまう。

きつく抱きとめる腕が僅かに震えているのを、確かに感じた。

「ユー、リ?」

「他の奴が、任務だからって戦いに行って、帰ってきて・・・怪我したりしてる姿。

それを申し訳ないと思いつつ、おれはどこか冷静に、見てた。」

ユーリの独白を、ユーリの鼓動と共に聞く。

「なのに、あの時、お前が・・!お前が血みどろで倒れてるの、見たら、スゲー、こ、怖くて・・」

抱きしめる腕の力が増す。


「なんで、あの日手を離したんだろうって。なんでお前を送り出しちゃったんだろう、って。」

『後悔したんだ・・・』

 

ユーリらしくない。

でも、らしいってなんだろう??

溢れ出す言葉には、どろどろとした、醜い感情が。

 

だけどそれは、何より暖かい、愛の言葉。


 



 

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2005/6/10

お題16としっかり繋がっている今回の話。

時間軸の点でいえば、1〜19までしっかり繋がっているんですが(笑)

果たして二人がこれからどうなっていくのか・・・書いてる本人にも良くわかんないです(苦笑)

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