微妙な19のお題(18)>あなたという人が、自分だけのものになればいいのに



ヴォルフラムの傷が癒えてきて、本人は仕事に戻るといって聞かない。

だけどおれから見れば、まだまだ要介護人で、

あまり動きまわらないでほしいんだけど。

今日もほら!

書類を持って何やらウロウロしようとしている。


「ヴォルフ、どこいくんだよ?」

「今日は兄上のところに書簡を頂きに・・・」

「そんなん、別の奴に頼めよ。」

「頼んでぼくは何をするんだ?今のところ別段執務らしい執務も取れないのに・・・。」

「お前はここにいるの!」

思わず強い口調になってしまったが、躊躇わず椅子を引き、無理やりにヴォルフを座らせる。

「ユーリ、ぼくは・・」

言いたい事は分かっている。

これはおれの我儘だ。

それでも・・・

「ヴォルフは!」

「え?」

「ヴォルフは、おれの、護衛、しててよ。」

王様として失格だけど、おれはヴォルフに泣き言を言った。

お前だけは傷付けたくないんだと、醜く汚く、そんな言葉まで吐いた。

それはきっと臣下としてもヴォルフには、叱られる言葉だったと思う。

だけど、ヴォルフは、何も言わなかった。

 

ねぇ、それは、婚約者としてのヴォルフには、

おれの思いが伝わったって、ことなのかな?

 

婚約者?

 

おれは自然と、その言葉を使ってる。

 

認めないなんて、口ではそう、吐き出しながら。

 

とんとんと、ドアがノックされて兵士が入ってきた。

「ヴォルフラム閣下、申し訳ありませんが・・・」

「あぁ、今行く。」

「待って!おれもいくから!」

「えぇっ!?ま、魔王陛下!?」

「馬鹿!一臣下の仕事に魔王がついて来る慣例などないっっ!」

「一臣下ならね!ヴォルフは違うだろ。それに今は要介護人だし。」

 

ヴォルフの顔は見ない。

そのまま彼を引きずって、仕事に出てしまったから。

 

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2005/7/21

17のユーリバージョンです。かなり意識してますね、ユーリ(笑)

後一話で、二人はどうなるやら・・・。

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