微妙な19のお題 19>永遠にも似た、このひとときに

 

 

「も〜!こんな寒いのにウロウロしてんなよっ、ヴォルフ!」

「うるさい!!寝酒を少し取りに行っていただけだ!!」

「あ〜もう!!こんなに冷えてるっ!!!もう、寝るぞ!」

 

見慣れたピンクのネグリジェのヴォルフを手招きして、魔王ベッドに誘う。

冷たいベッドに身を寄せ合って、暖を取り合った。

「寒い・・・やはり少し寝酒を・・。」

「傷に響くだろ・・・。ほら、手、貸して。」

武人だという事を忘れてしまいそうな細さの指。

はぁと、吐息を掛け、そっと手を揉み解してやる。

「冷たいな〜・・・ちっともあったまらない。」

「いい、そのうち温まるだろう。」

俺の手の中からするりと逃げた、ヴォルフの掌。

「駄目。ちゃんと暖めないと、抱きつかれた時俺が寒い。」

もう一度ヴォルフの手をとって。

だけどその手を二人の間に挟んで、おれはヴォルフの体ごと抱きしめた。

「お、おい!ユーリっっ!!」

「こっちの方が手っ取り早い。」

慣れない行為に、抱きしめたヴォルフの体が照れの為に熱くなるのが分かった。

そしてそんな反応を見せるヴォルフに、おれがまた熱くなる。

「急に・・・温まってきたな。」

「おまえだって、顔真っ赤じゃん。」

「ユーリも人のことは言えない!」

拗ねたふりを見せるヴォルフを腕の中に抱いて、

素直に近づいている、この、二人の距離を自然に思う自分に気付く。

真っ赤な頬を膨らませつつ、上目遣いに睨んでくるヴォルフの、その頬にふいに手が走った。

 

「ユーリ?」



あの日。

この右手が、君の頬を打った。

 

 

そしてあの日の君の頬も、

今日のような真っ赤に染まっていた。

 

 

でも、今ならこう思える。

ただ、偶然かもしれなかったあの瞬間。

選んでいたのが君でよかった、と。

 

今、そう強く感じている。

 



 

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2005/8/19

はい!19のお題はコレで完結です★

「微妙な」と銘打ってあるお題ですので、ラストもあくまでも微妙な、感じに(笑)

でも、初めに比べれば随分関係が変わっているような気も・・・しませんか??(投げかけるな)

お気づきかもしれませんが、このお話はまた「1話」目にリンクしています。

完結してからまた一巡りすると今度は思い出話のような・・・そんな雰囲気になってると良いな〜。

 

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