暦上の境界線 ◎

 

翌年の花祭りは、ユーリの代になってから、

もっとも華やかな祭りになった。

まぁそれも仕方ないことだ。

なぜなら当代魔王の婚礼という、大きな大きな慶事だからだ。

「とはいっても・・・ぼくにとってはあまり変わり映えはしないがな。」

今日から夫婦だ、グレタの父親だといっても、それは暦の上の境界線で。

ぼくら二人の関係も、ぼくら親子の関係も、日々の生活も、

今までどおりなんら変わりは無いだろう。

先ほど呼び出され、ユーリが出て行ったドアを一瞥し、

二人そろって誂えた式服を翻し、ぼくは窓辺に向かう。

変わり映えしない毎日。

昨日に続く、今日という日。

だけどなぜか、窓辺に差し込む光は、

いつもよりずっと明るく、暖かく感じた。

 

気づけば。

毎年花祭りの日に見たあの悲しい雨はいつの間にか止んでいて。

涙と共に晴れ上がった空には、

見たことも無いくらい美しく力強い虹が見えた。

 

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2007/6/19

雨降って、地固まる・・・と申しますゆえ。

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