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ゆらり、揺れる想い ◎
「なぁ、しーぶやっ!最近ご執心のあの子元気?!」
「わっ!?村田!なにっ?いきなり!」
飛び上がり驚く、ユーリの顔。
ひそひそと耳元で大賢者が何かを呟いたらしい。
いきなり頬を染めて、弁解するユーリ。
思わずむっとして、怒鳴りつけようと息を大きく吸ったが、
それは不発に終わってしまう。
最近はいつもそうだ。
以前のように一体何のことだと問い詰めることができたなら、
どんなに楽だろうか?
「おまえなぁ・・ヴォルフに聞かれでもしたらどうしてくれるんだよ?」
あいつの焼もちは本当に凄いんだからなと続くその言葉に
踏み出しかけた足は止まってしまう。
理由は簡単だ。
不貞を問い詰めてもいつも答えは同じ。
聞くだけ無駄なのだ。
ユーリの心は変わることは無い。
彼は・・・ぼくを好きにはならない。
ぼくが男である限りは。
これ以上は近づくことは許されない。
それはもう・・きまっていること。
ぼくは・・・こんなに、愛してるのに。
ぼくは二人に気取られぬよう、その場を後にした。
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