◎ ふわりと舞う ◎
ぼくはそのまま寝てしまったらしい。
腕の中にはユーリの服がくしゃくしゃになって抱き込まれていた。
「何泣いてたの?」
「ユー・・・リ?」
目の周りが酷く腫れぼったく、妙な引きつりを感じた。
「最近、お前様子がおかしいぞ?」
「どこが・・だ?」
腫れた目をこすりながらユーリを見上げた。
「どこっていわれると・・まぁ、困るけど。」
「ユーリ・・・」
「なに?」
「ひとつだけ・・・いいか?」
「?」
「ぼくのことは・・・好きか?」
「え?なに・・いきなり?」
「・・・・友としてでもいい。好きか?」
「え、っと・・・」
見つめるぼくの瞳から、外された漆黒の瞳。
もういい、分かった。
それがお前の気持ちなんだな。
切ないとか悲しいとか、そんな気持ちすらぷつりと切れて、
ぼくの心は真っ白になる。
「ユーリ。」
「ぇ・・あぁ、な、なに?」
「お前の服、貰うぞ。」
腕の中でしわくちゃになってしまった服を広げ、肩に羽織る。
気づけば朝が近いのか、朝焼けの光がわずかに射す窓辺に
ゆっくりと歩み寄り、窓を開けた。
清涼な朝の空気。
新しい、一日の始まりの香り。
「ヴォルフ?」
気遣わしげに声をかけてきたユーリにぼくは笑う。
「さようなら。」
大好きな君にあげよう。
『新しい』日々の始まりを。
ぼくのいない、自由な日々の始まりを。
とん、と。
爪先で地面を蹴って、ふわりと舞う。
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