ふわりと舞う ◎

 

ぼくはそのまま寝てしまったらしい。

腕の中にはユーリの服がくしゃくしゃになって抱き込まれていた。

「何泣いてたの?」

「ユー・・・リ?」

目の周りが酷く腫れぼったく、妙な引きつりを感じた。

「最近、お前様子がおかしいぞ?」

「どこが・・だ?」

腫れた目をこすりながらユーリを見上げた。

「どこっていわれると・・まぁ、困るけど。」

「ユーリ・・・」

「なに?」

「ひとつだけ・・・いいか?」

「?」

「ぼくのことは・・・好きか?」

「え?なに・・いきなり?」

「・・・・友としてでもいい。好きか?」

「え、っと・・・」

見つめるぼくの瞳から、外された漆黒の瞳。

もういい、分かった。

それがお前の気持ちなんだな。

切ないとか悲しいとか、そんな気持ちすらぷつりと切れて、

ぼくの心は真っ白になる。

「ユーリ。」

「ぇ・・あぁ、な、なに?」

「お前の服、貰うぞ。」

腕の中でしわくちゃになってしまった服を広げ、肩に羽織る。

気づけば朝が近いのか、朝焼けの光がわずかに射す窓辺に

ゆっくりと歩み寄り、窓を開けた。

清涼な朝の空気。

新しい、一日の始まりの香り。

「ヴォルフ?」

気遣わしげに声をかけてきたユーリにぼくは笑う。

「さようなら。」

大好きな君にあげよう。

『新しい』日々の始まりを。

ぼくのいない、自由な日々の始まりを。

とん、と。

爪先で地面を蹴って、ふわりと舞う。

 

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2006/11/26
実はこっそり続きます。
ユーリ編に。
それで少しお話の謎が解けるはず、です。

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