窓を厭わしく思う ◎

「ヴォルフ・・っ?!」

『さようなら』と。

彼はそう言って笑って。

窓辺を蹴った。

直前手に取ったおれの上着を肩にかけて。

窓の外に飛び出す彼を見て、おれは一瞬呆けた。

それはまるで、黒い翼を広げた天使の様にも見えたから____。

でも、彼は天使なんかじゃない。

だから空なんて飛べるはずなんか無くて。

「ヴォルフッッーーーーッ!!!!!」

彼を追いかけて、窓辺に走りよる。

黒い上着の下に、蜂蜜色の髪が流れる。

半分上を向いた見慣れた面差しが、未だ笑っているように見えて、

酷く動揺した。

なぜ彼はこんなことを?

なぜ彼は笑っているのだろう?

朝もやが当たりに広がり、新しい一日の始まりを告げる。

その朝日差す窓すら、厭わしくなる、今。

*******************************
2006/12/6

トリオ3の続きのユーリ編です。

きちんと落ちるところに落ちれば・・・・いいな(笑)

.