籠の中の鳥 城の中の王さま ◎

「閣下の意識が戻られません。

まるで・・・このまま浅い夢の中にでも存在していたいとでもいいたげに。」

ギーゼラのその言葉に、びくりとおれの肩は揺れた。

現実の世界が痛くて悲しくて、逃げ出したかったのだろう。

そうまで思いつめさせたのは間違いなくおれだった。

最近の彼はなんだかおかしかった。

それはちょうどおれがヴォルフへの想いを自覚して、

彼への態度が妙にそっけなくなってしまったころから。

おれのヴォルフへの想いは、村田にはいち早く知れてしまって、

日々からかわれるものだから、

ヴォルフにばれないようあの手この手で隠してた。

そしてその度におれはヴォルフに対して微妙な罪悪感を感じ、

また彼の変化も知ることになる。

彼の変化・・・それはおれが彼以外のものと親しく話しても、

以前のように「この浮気もの!」と罵ることがなくなったことだ。

今日は特になんだか変で、

ヴォルフは罵ることもなく酷く悲しそうな目でおれを見た。

おれはその目がおれの気持ちなんて見透かして、

それでも往生際悪くあがくおれに向けられているような気がして、

さっさと風呂にでも入って気分を晴らそうと思っただけなのに。

風呂から上がって見たのは、泣き腫らした赤い瞼のヴォルフ。

しかもおれの服を縋る様に抱きしめながら眠る顔。

どきり、と胸が跳ねた。

目が離せずに、一晩中眺めてた。

もし今ヴォルフが目覚めたら、この瞳が開いたら

『愛してる』って言える気がして。

 

2006/12/25

クリスマスなのに暗くってごめんなさい・・・

本当はこれをUPしたかったんじゃないんだぁ・・・ぐずぐず・・・

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