◎ 籠の中の鳥
城の中の王さま ◎
「閣下の意識が戻られません。
まるで・・・このまま浅い夢の中にでも存在していたいとでもいいたげに。」
ギーゼラのその言葉に、びくりとおれの肩は揺れた。
現実の世界が痛くて悲しくて、逃げ出したかったのだろう。
そうまで思いつめさせたのは間違いなくおれだった。
最近の彼はなんだかおかしかった。
それはちょうどおれがヴォルフへの想いを自覚して、
彼への態度が妙にそっけなくなってしまったころから。
おれのヴォルフへの想いは、村田にはいち早く知れてしまって、
日々からかわれるものだから、
ヴォルフにばれないようあの手この手で隠してた。
そしてその度におれはヴォルフに対して微妙な罪悪感を感じ、
また彼の変化も知ることになる。
彼の変化・・・それはおれが彼以外のものと親しく話しても、
以前のように「この浮気もの!」と罵ることがなくなったことだ。
今日は特になんだか変で、
ヴォルフは罵ることもなく酷く悲しそうな目でおれを見た。
おれはその目がおれの気持ちなんて見透かして、
それでも往生際悪くあがくおれに向けられているような気がして、
さっさと風呂にでも入って気分を晴らそうと思っただけなのに。
風呂から上がって見たのは、泣き腫らした赤い瞼のヴォルフ。
しかもおれの服を縋る様に抱きしめながら眠る顔。
どきり、と胸が跳ねた。
目が離せずに、一晩中眺めてた。
もし今ヴォルフが目覚めたら、この瞳が開いたら
『愛してる』って言える気がして。
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