◎ 渇いた砂が水を吸い込むように ◎
でも結局。
寸前までは、愛してる、と、そう言える気さえしていたのに。
目覚めた彼に言えた事はなぜ泣いているか?という質問だけだった。
尋ねられた「ぼくを好きか?」という問いには、
照れが邪魔して何もいえなかった。
「友としてでもいいから好きか?」という質問には、
内心では『もうそんな好きじゃ収まらないんだよ』と思いつつ、
まっすぐ見上げてくる翠色の瞳をまともに見ることが出来なくて、
思わず目を逸らしてしまった。
それは決して彼を愛していないからでなくて、
自分の抱えている想いを持て余していただけなんだ。
だって・・・それはいままで正しいと思ってきた倫理観を、
大きく覆すものだったから。
だから__________ごめんな。
「好きだよ、ヴォルフ。他の誰よりも。」
眠ったままのヴォルフの手をきつく握って。
「お前が必要なんだ。だから・・・戻ってきて。」
心を凍らせてしまった彼に届けと、祈りを込めて。
「目を覚ましてくれよ。今度こそ・・・愛してるっていいたいよ。」
溢れ出した涙を、彼の白い指先で拭う。
空に、風に、還りたいと思うほど、
乾いてしまった彼の心に、一滴。
勇気が無くて明け渡すことが出来なかった想いを、
涙の雫に変えて。
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