渇いた砂が水を吸い込むように ◎


でも結局。

寸前までは、愛してる、と、そう言える気さえしていたのに。

目覚めた彼に言えた事はなぜ泣いているか?という質問だけだった。

尋ねられた「ぼくを好きか?」という問いには、

照れが邪魔して何もいえなかった。

「友としてでもいいから好きか?」という質問には、

内心では『もうそんな好きじゃ収まらないんだよ』と思いつつ、

まっすぐ見上げてくる翠色の瞳をまともに見ることが出来なくて、

思わず目を逸らしてしまった。

それは決して彼を愛していないからでなくて、

自分の抱えている想いを持て余していただけなんだ。

だって・・・それはいままで正しいと思ってきた倫理観を、

大きく覆すものだったから。

だから__________ごめんな。

 

「好きだよ、ヴォルフ。他の誰よりも。」

眠ったままのヴォルフの手をきつく握って。

「お前が必要なんだ。だから・・・戻ってきて。」

心を凍らせてしまった彼に届けと、祈りを込めて。

「目を覚ましてくれよ。今度こそ・・・愛してるっていいたいよ。」

 

溢れ出した涙を、彼の白い指先で拭う。

 

空に、風に、還りたいと思うほど、

乾いてしまった彼の心に、一滴。

勇気が無くて明け渡すことが出来なかった想いを、

涙の雫に変えて。

 

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2007/2/10

尻切れトンボな感じですが、一応終わりです。
タイトルどおり、「乾いた砂が水を吸い込むように」陛下の愛を、
三男が受け取ってくれるのを願いつつ・・・・。

 

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